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第1話
「あー、めんどくせ。3年間も通うのかよ」
本気でそう思った。
声には出さなかったけれど。
4月6日、県立中野農業高等学校。
1年E組の教室は、静まりかえっていた。
僕は、公立高等学校入学試験の前期選抜で目指していたY高校には受からなかった。
後期での倍率も高く、僕の成績では受かるか受からないかのライン。
経済的な事情から、私立へ行くわけにはいかず、結局安パイの中野農業高校へ急きょ志願変更した。
「早く働きてぇ....」
教室には緊張した面持ちの生徒たち、38名。
散々待たされたあげく、入ってきた先生は強面のオジサンだった。
「あー、このクラスを受け持つ川本です。これから入学式ですがー」
案外、適当そうだ。
スーツが全く似合っていない。
体育科の教師か?
「いいか、出席番号順4列で並べ。その後はー」
とにかく、このあとは入学式らしい。
僕はおとなしくしていることにした。
いや、そう言うと語弊がある。
おとなしくするしかなかった。
中学校では い じ め ら れ て い た か ら。