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ラストワールド  作者: 落葉颯花
終末の序曲~始まってしまった『終わり』
9/20

終末の序曲~9 追想

暫く追想編が続きます。

その男とは・・・ある戦場で俺は出会った。

今から三年ほど前のことだ。

俺が、まだ日光・・・いまや滅びた都市の防衛戦で初めて出会った。



俺達は栃木県の日光と呼ばれるところで生まれた。俺も妹もそこで育った。そこで両親を失ったし、郡山さん達に出会ったにのもここだ。日光都市は日本の都市でも最前線と呼ばれており、日本でも一か二を争うほど大規模戦闘が起きている。新種の魔物もここで発見されることが多く、非常に危険な場所であった。だがそれゆえに強い魔術兵士も多く、日光から排出される魔術兵士は各地で凄まじい戦果を挙げていた。その最もたる所以は幼少期からの英才教育である。ここ、日光では小さい頃に実戦を経験させることを推奨しており、多くの子供達が戦場を経験していた。その結果、小学生と言う幼さで大人の魔術兵士を圧倒できるような化け物が幾人も生まれ、そのような者達は幼くして戦場に駆り出されていた。子供を戦場に出すことに反対意見も出ていたが、この日光では出し惜しみをするほどの余裕がなく、結局、小さな子供達が戦場に駆り出されていた。他人事のように話しているが、俺と妹もその一人である。


その日の防衛戦は明らかにこちらが劣勢であった。日光の最終防衛線のテントで俺達は情報を聞いていたのだが第一、第二の防衛線が僅か30分で壊滅。第三も半壊、と言う情報だった。いつもなら第一だけでも一時間。いい時なんかは第一だけで十分なんて時もある。しかし、今回はたったの三十分で第三まで攻め入られ、そこも半壊、最終防衛線である第四までは第三防衛線しか残っていない。ここまで酷い状況になったのは初らしい。


「お兄ちゃん・・・」

「大丈夫だ、この日光が滅びても俺はお前を守りきるから。」

「何言ってんのお兄ちゃん、今日はい~っぱい魔物がくるんでしょ?」

「ああ、多分な」


狂ったように香菜が笑う。


「じゃあ、ぜ~んぶ皆殺しにしなきゃ。全部、ぜーんぶだよ、嬲り殺しにしてグチャグチャにして・・・」

「もうやめろ。お兄ちゃんはそんな香菜を見ていたくない。」

「あ・・・ああ・・・・・・ごめんなさい・・・・・ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


いきなり香菜が泣き始めた。


「もういい・・・」

「ごめ、んなさい・・・・」


妹の嗚咽を聞きながら思う。

いつ頃からだろうか・・・妹がこうなってしまったのは・・



****************************



なんとか香菜をなだめ、香菜を持ち場にもどらせる。


「お前さんは大変だなあ・・・まだこんな子供なのに・・」

「ははは、まあ、家族を守るのに必死だったらこうなりますよ。」

「そんなもんかね、まあ、お互いがんばろうや、こんな戦いで死なないようにな。」

「ええ、自分も・・・」


この人とは何度も一緒の防衛線で戦っている。他にもよく見かける人はいるが、この人は自分のことを子供だからといって下に見ず、しっかりと戦士と見てくれるので非常に話しやすい。


ブーーーーーーーーーー


「んん?あんだあ?」

「第三防衛線が突破されました。至急、戦闘準備されたし至急・・・・」

「おいおいまじかよ・・・・」


どうやら第三が突破されたらしい。第三が突破されるほどとは・・・・


「もう話しなんかしてる場合じゃなさそうだな。じゃあな、生き残れよ」

「はい」


さて・・・・・・ん?あれは逃げのびた奴か?・・・

ふらふらと歩き、虚ろな瞳をして・・・・・

おかしい。何かが違う。

俺の中で警鐘が鳴る。

一旦決めると俺の行動は速かった。


「おお、大丈夫だったのか!」


何も気づかず、そいつに駆け寄る中年の男性

俺はその間に割って入るように転歩で移動。

              ・・・・・

逃げ延びてきたらしい人の首を刈り取った。


「な!何をす」


中年男性が言い切る前に俺は刈り取られて首から上が無い胴体の首がくっついていた場所に腕を突っ込みなにかを取り出す。


「こ、これは・・・・」


俺の手には最近見つかったばかりの新種の魔物。死体に寄生し、その死体を操ると言う危険な魔物が握られていた。


「そ、それは・・・」


皆の顔が引き締まる。だが、それは一瞬だった。すぐにどよめきが広がる。


「あれは・・・」

「そんな・・・」

「はは、もう・・もう俺達は終わりだ・・・・」


皆の見ている方向が気になり、俺は振り返る。そこには・・・・


海が広がっていた。


さっきまで見えていた地面は全く見えない。


そこらじゅうで蠢く何か。


そう・・・・・そこには地面が見えなくなるほどの魔物が溢れかえっていた。



***********************



「遠距離部隊!攻撃開始!同時に収束魔法!装填開始!」


遠距離部隊による攻撃が開始される。

大きな火炎が飛び、また大きな氷塊が飛ぶ。あるところでは竜巻が巻き起こり、またあるところでは石の砲弾が飛ぶ。日光の軍勢による遠距離攻撃が開始された。


「各員、収束魔法の衝撃に備えてください。各員・・・」


収束魔法と言うのはあまり解明されていない融合魔法の一つだ。大勢の魔術兵士の魔力を一点に集め、その強大な魔力を魔導兵器で無理矢理魔法に変換すると言うものだ。ただこの魔法はかなり強力だが弱点がいくつもある。例えば・・・・


「収束魔法!射てーー!」


天空に大きな魔法陣が浮かび上がる。

そこから光の柱とでも言えそうなほど太い光条が放たれ、その光条が切り払うように敵陣を走る。敵陣のど真ん中を走り、数秒差で爆発が起きる。まるで波のように広がる光によって破壊が撒き散らされる。だがそれは敵だけではない。爆発がこちらまで広がり、十分に備えられなかった者は・・・


「うわああああああああああ!!」


俺の視界の端に誰かが飛んでゆく姿が見える。さっきまで話していた人だ。あまり余裕はないがなんとか目で追う。その者は飛んでいった先にある都市を守る防衛壁にぶつかる。その人は・・・


衝撃で肉塊に変わる。


本当に一瞬で。


間違い無く生きてはいない。


あんたじゃないか・・・・・・・生き残ろうなんて言ったのは・・・


そう、収束魔法の弱点の一つ。それは威力が高すぎると言う点だ。今ので死んでしまった人が一人や二人ならまだいいだろう。だが・・・


衝撃が収まり、後ろを振り向く。


そこには惨劇が広がっていた。


地面にはいくつも転がる肉塊。


振りまかれた血によって赤く染まった防衛壁。


おそらく人同士が激突した惨状。


こんな状況ではどちらにダメージを与えたのか分かったものではない。その上・・・


「魔力枯渇によって倒れた人の脈拍をはかってください。もしかしたらまだ生きているかもしれません!」


魔力は人の生命力と同期している。もし・・・完全に魔力を失った場合・・・


「こっちはもう死んでる!そいつは・・・・・もうだめだ。最後の言葉だけでも聞いてやれ!んでこっちは・・・」

・・

死ぬ。


収束魔法は、発動するための機械に自動的に魔力を吸い取られる。その人間がもう限界だと思っても止まらず、吸われ続ける。そして最終的には死ぬ。収束魔法の機械は皆平等に吸い取るわけではなく、より魔質の高そうな者を優先的に吸い取る。それゆえに収束魔法によって死んでしまう者は弱い魔法兵士より強い魔法兵士の方が多い。


「収束魔法兵器内に高魔力反応!総員!直ちに退避!退避―」


収束魔法兵器は試作段階だと聞いたことがある。おそらく完成もしていないのに使用したせいだろう。収束魔法兵器はまだ魔力変換効率が悪く、発射されなかった魔力が内部で暴走、爆発したのであろう。この収束魔法兵器の使用を推奨したやつはここまでしっかり予想できていたんだろうか?もし予想できていたなら一度合って見たいものだ、自分のせいで味方がたくさん死んだ時はなんと思ったのか?と、まあ、そんなことを考えている場合ではない。敵はどうなったのだろうか?

強化魔法で視力を強化し、敵陣を見る。

そこには破壊の痕跡以外は何も残ってはいなかった。


まあ、これだけの被害を出したのだ。流石に・・・・

見えている先に何かが蠢いているのが分かる。まさかと思い視界を更に強化すると・・・


こちらに進軍して来る魔物の集団がいた。


先ほどより数は少なさそうだがその分強そうな魔物がうじゃうじゃいる。


「はあ・・・こりゃキツイな・・・」

「だよなー」


横を見ると同い年ぐらいの白髪の少年が立っていた。体から僅かに漏れ出す魔力だけでもかなりの実力者と分かる。


「本当にあれはきつそうですよね・・・」


こちらは黒髪黒目で髪をポニーテールにしている少年だか少女だかよくわからない容姿の少年が立っていた。喋り方からして多分男だろう。


「今の状況で勝てると思うか?」

「う~ん。全員の士気が上がればまあ五分五分ってところじゃないですか?」

「そう?俺は強いのが何人か集まればいけるんじゃないかと思うけどなあ・・・」


ガ、ガガガガガガガ、ガタン


後ろで防衛壁が開いた音がした。おそらく負傷兵達を運び込むためだろう。本来ならこの指示は正解である。だが今の状況では・・・



失敗であろう。あれだけの衝撃を食らったあとで戦えと言うほうが酷いと言うものだ。何人かが都市内部にはいった時点で他の人が防衛壁の中に入って行く。こうなっては指令もしょうがなく作戦を変えるはずだ・・・・おそらく・・・


「これより籠城戦に移行します。これより籠城戦に移行します。外にいる方は都市内部に・・・」


予想通りだ。指令もかなり混乱しているようだ。だがこの作戦を実行してしまうと・・・


「全滅するな・・・」



「壊滅しますね・・・」

                

ポニーテールの人(後から聞いたら蒼真 碧と言う名前らしい)


「終わるだろうな・・・」


白髪のやつ(こちらも聞いたが工藤 朝日)


「・・・・・・詰み・・・・・・」


ムキムキで斬馬刀のような剣を持った人(武田 岳斗)


「終わりだろうね~」


小柄で飄々とした態度の黒髪黒目(軽部 蒼夜)


「終わりであるな!うむ!」


背が小さい変な口調のやつ(稲沢 大貴)


「なんで俺達の自己紹介シーンがカットされたんだ?」


めんどくさいから


「「「「「おい!」」」」」


ごめんなさい・・・

香菜がこちらに向かって走ってきた。

「お兄ちゃ~ん、私もやる!」


「ダメだ、お前は入ってろ」

「え~、何で?」

「どうやっても敵は都市内部に入ってくる。俺は外をやるから中を頼む。中に一人でも信用できる奴が欲しいんだ。」


途中までは不満そうな顔をしていたが、信用、の辺りで嬉しそうな顔に変わった。


「うん!分かった!」


ほぼ全員が中にはいってしまったが、なぜか六人だけ残った。おそらくこの作戦は間違い無く失敗するとわかっていて、そこそこ自分の実力に自信がある者達だろう。

ところでなぜこの作戦が失敗するのか?その理由は単純、持久戦になることが目に見えているからだ。人間も魔物も体力は有限だが、圧倒的にあちらのほうが持久戦は有利だ。しかもこちらは増援を呼べないがあちらは呼び放題なのだ。持久戦は不利過ぎる。しかし俺達がここに残ってしまうと命令違反でこっ酷く怒られてしまう。なんか適当な理由を作ろう・・・


「お~い!そこの人達!早く入ってきな!死ぬよ!」


五人がやべえ・・・といった顔をする。だが・・・


「危なくなったら戻ります!籠城戦の準備時間のための囮をします!」


思いっきり嘘だ。敵を殲滅する気満々だ。その姿を見てこちらに呼びかけてくれた人は何か感じ取るものがあったのかこちらに敬礼をして去っていった。あの人を騙したかと思うとちょっと気が引ける。俺の内心を知ってか知らずか朝日が話しかけてくる。


「ナイスだ!えっと・・・」

「水雪祐理だ」

「ありがとう、俺は工藤朝日。よろしくな」

「ああ」


朝日が残った奴らを見回して、語りかける。


「さて・・・皆どうするのがいいと思う?」

「「「「突っ込む(みます)」」」」


・・・・・・・え?・・・・・・・・・・・・



**********************



突撃とか言っておいてしっかり作戦を立てているのは変だろうか?

いや、変じゃないと思う・・・・多分・・・・



最初に朝日の遠距離魔法で数を減らすことになった。


「いくぞ。俺の前にでるなよ?」


全員から了承をえたところで魔法の詠唱が始まる。


「ふう・・・」


朝日の両手が上がる。


『光の根源たる大いなる星  全てを消し去る偉大なる星

 貴方は至上        貴方は至高

 されど我は太陽たる貴方を我が手中に治めん』


敵の頭上に大きな火球が形成される。


「焼き払え!コロナゲイザー!」


その火球が爆発した。その爆発に巻き込まれた敵は触れた瞬間に炭となり、消えていく。

かなり苦戦するような相手が一瞬で消し炭になっていく。そのまま爆風がこちらまで・・・


「っておい!」

「言ったろ!」


『大いなる大地 全ての生命の母

 天貫く・・・・』

「面倒くさい!バベルアース!」


本当に天を貫くほど大きな土の壁が出来上がる。その壁によって爆発が塞がれる。


「熱ッ・・・お前なんで無詠唱で出来んのにわざわざ詠唱でやってんだよ!」


防ぎきれない熱が俺達を襲っている。こいつが詠唱なんかするからだ。


「格好いいから(キラーン)」

「いや・・・そんな目で言われても・・・」


本来詠唱と言うのは必要が無い。だが、言葉に魔力を乗せて発動したほうが圧倒的に楽な上に、言葉と自分のイメージの両方で魔法を発動した場合は言葉による補助が入るので魔法が発動しやすくなる、と言う利点があるので詠唱を使う人は多い。


「そういえば僕の好きな本の主人公はポケットに手を突っ込んだままで無詠唱でガンガン魔法使ってましたね」

「よしっ、これからそうしよう!」


・・・・・・・・・・・・まあ・・・ナイスだ碧・・・・・・・・


「さっきのでほとんどの魔物は倒しちゃったんじゃないかな?~」

「いや・・・無理だと思うよ?さっきの上級魔法だから。」

「「「はあ?!」」」


いやいや・・・さっきの威力はどう考えても超級に匹敵すると思うぞ?


魔法にはランクが存在していて、単純に最下級魔法、下級、中級、上級、超級、神級、禁忌とレベルが上がっていく。レベル的には

最下級・・・日常生活程度

下級・・・・実戦で使えるレベル 一対一程度

中級・・・・一対数十

上級・・・・一対数百

超級・・・・戦略級 一対数万~数億(収束魔法はここ)

神級・・・・あまり解明されていないが、戦闘に関してなら最早数は関係がなくなってくる。

禁忌・・・・ほぼ解明されていない。代償があることだけは解明されている。


と言った感じになる。さっきの魔法は上級を超えていると思うのだが・・・


「いや、威力だけは上級の中でも格別なんだけどな?実はあの魔法は弱点があってな?」


バベルアースが崩れ、敵の姿が見える。


「実はあの魔法・・・魔法障壁に極端に弱いんだ・・・」


敵の周りを紫色の透明な障壁が覆っていた。


出てくるキャラクターの名前に知り合いの名前を少しモジッて使っているのですが、たまに知り合いに会うと呼び方を間違えそうになります。

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