終末の序曲~7
久しぶりの投稿です。長く空いてしまってすみませんでした。
俺は、油断したせいでやられてしまった。その上その時のいろいろな感情の全てをぶつけるような感じで水雪にひどい言葉をかけてしまった。確かに水雪は強い。だがいくらなんでも水雪があの状況を打開できるはずがない。相手は30人近い。それに三年間この学校で鍛え続けてきた者達だ。あんな状況で、あんな言葉をかけてしまうなんて・・・帰ってきたらあやまらなければ・・・すまん・・・
しかし、水雪のやつが帰ってこない。端だと真ん中のほうが地面の凹凸で見えない。あの状況では逃げ回るのさえ大変なはずだ。もしかしたらホントに避けるのが得意なのか?・・・・さっき水雪の妹が応援したから張り切ってるのかもしれない。
ビーーーーーー!!
ああ、流石に無理だったか・・・
勝者は 一年組 勝者は 一年組
「マジかよ・・・」
「ホントか!ドッキリじゃないよな!」
「キエエエエエエエエエ」
はは、嘘だろ・・・でも、今のって・・・
「あいつ、やりやがった。水雪のやつ、やりやがった・・・」
やったんだ、水雪のやつ・・・
皆で話しているとこちらに向かって歩いてくる影があった。
頭を掻くようにして、ちょっと照れくさそうな顔で
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俺たちの転歩が重なって勝負が決まった。俺の刀は振り切った体勢で、卯月はふた振りの刀を上下に交差するようにして、お互いに背を向けるようにして五メートルほど離れた場所にいる。お互いに武器の性質上手応えがないので結果がわからない。転歩は無心で行うので発動中はどうなるかは自分でも分からない。だが、俺は自分の勝利を確信していた。
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転歩を発動する本当に一瞬前、加速した思考の中で俺は卯月の動きを見ていた。卯月のあの構えから繰り出される技は「葬虎月殺」下から繰り出される斬撃から0、001秒の差で上から刀が振り下ろされ、巨大な魔物なら頭部を上下から両断し、対人戦なら一撃目と二撃目の本当にわずかな差と転歩による圧倒的な突進力によってほぼ避けることは不可能、弾くこともできないと言う魔殺二天流の転歩を五式以上使える者だけが使える魔殺二天流の奥義である。確かこの技は卯月が最も得意としている技だ。前にみたときの卯月の転歩の限界は七式、師匠を既に越えているが、十式を使えないと皆伝の試験は行えないのでまだ輝閃とは呼ばれていないが・・・
対して俺はの放つ技は「滅閃」転歩を九式使える者でなければ使えない技で、それ以下のものは教わることさえできない。しかし、この技そのものは単純な技で、おもいっきり振りかぶった体勢から転歩しながら横薙ぎに振る。ただそれだけの技だ、なぜこんな技が九式以上でなければ使えないのか、それは単純な理由だ。速さである。八式は一瞬で20メートル移動できるが、九式は一瞬で30メートル移動できる。この10メートルの差が重要らしい。この技は九式以上の者にしか伝えられておらず、おそらくこの技なら・・・・
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合戦終了のブザーが鳴り、勝利したチームが発表される。
勝者 一年組 勝者 一年組
ブザーが鳴り、発表されたすぐ後にお互いは構えをといた。クルッとこちらを向いた卯月が聞いてくる。
「なんだったんだい?今の技は、」
「滅閃です。九式以上の技ですよ。」
「僕に九式まで?・・・・」
卯月がやや嬉しそうな顔をしている。そんなに嬉しいことでもないだろうに・・・・弟弟子に負けたんだから・・・・
「十式ですよ。」
「え?」
「十式ですよ。」
「じゃ、じゃあ・・・僕は十式を・・・?」
「ええ、兄さんの技は速いので確実に勝つためにはこれが一番だったので・・・」
「十式は距離どれくらいだっけ?」
やや唖然とした顔で卯月が聞いてくる。
「一歩で最大50メートルです。」
「さすがだね、まあ、僕もいつかは君に届いて見せるさ。今日はありがとう。「魔殺二天流免許皆伝」殿。」
やっぱり悔しかったのか何気なく秘密を暴露してきた。
「それ、言わないでくださいよ」
「はは、間違って口がすっべちゃうかも。」
「勘弁してくださいよ・・・・」
状況が気になってこちらに向かってきている三年生から逃げるようにして俺は一年のもとへ向かった。
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やっぱり私の判断は間違っていなかった。今胴上げをされている人を見つめながら考える。いつも自分の実力のことになるとのらりくらりと逃げてしまうが私の師匠は強い。前に皆伝の試験を見たときになんとなく私の触覚?に反応し、この人のそばにいたいと思った。それ以来ずっとあの人のことが頭から離れなかった。そんなときだった。入学したばかりの学校で見つけてしまったのは。本人は気付いていないだろうが、何気なく転びそうになった人をヒョイっと受け止めるときの足捌きがあまりに美しかったので見入ってしまったのだ。その人の顔が気になり、顔を見たらあの思い人だったのだ。あれだけの足捌きを何気なく行うその凄まじさに我を忘れてしまったほどで、その後自分の行った行動は後から考えると本当に恥ずかしい・・・
彼女のことを周りから見ると紅潮した顔で水雪を見つめる恋する少女にしかみえなかった・・・
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合戦が終わり、生徒達が集められた。
「え~、今回は予想外の一年組の勝利です。おめでとう!!」
「「「「「「オーー!!」」」」」
「え~、静かに、静かに!今回の一年組は腕立て伏せなしです。その代わり」
その代わりってなんだ・・・まさか腹筋とか・・・・
「今日の夜にパーティーがあります。」
おお、そうなのか・・・ってそれどっちが勝ってもあったんじゃないか?・・・
「参加は強制です。親族を呼びたい者は連れてきてかまいません。服装は制服、今日の七時半から。新校舎の多目的室で行います。しっかり家で体を休めること。使いたい者はこのあと訓練室を使って訓練をしても構いません。以上、解散!」
ふう、終わりか・・・妹と一緒に行こう・・・
皆が思い思いの場所に散って行く。俺は質問攻めに会うのが嫌なのでさっさとロッカーに向かおうとしたところで捕まった。振り向くと三年生が何人も立っていた。転歩で逃げようかな・・・・
「ねえ、君さ、卯月君の弟弟子だよね。」
「はい、そうです。」
「君は卯月君に手加減されて勝ったの?」
どうやら俺が勝ったのが信じられないらしい・・・それでもこの聞き方は失礼だと思うが・・・
こういうときは適当にごまかしておこう・・・
「さあ、兄さんが手を抜いているかどうかは僕にも?・・・」
「弟弟子なんでしょ?わかるんじゃないの?」
追求までしてくるか・・・あんたは卯月のことを思って聞いているんだろうがそれは俺だけじゃなく卯月にまでかなり失礼なことをしてるんだぞ?いい加減気づけよ。もしかしてこいつの裏にいるやつらは全員卯月を信仰してるようなやつらか?だとしたら最悪な状況だ。
「いや~さすがに一年も見ていなかったら兄さんが強くなりすぎちゃって分かんないですよ~」
「そ、そうよね!卯月君は強いものね」
「そうですよね~」
こうやっておけばもう絡まれることはないだろう・・・それに卯月が強いのは確かだ、俺みたいな変なやつを除けばありえないほど強いだろう。俺は荷物を持ってその場を去った。
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扉を開けたら目の前に涙目の妹がいました。
どうしますか?
1、無視して立ち去る。
2、優しい言葉を掛ける。
3、お姫様だっこをいきなりして「妹バンザーイ!」と言いながら駆け回る。
4、口説く。
1は絶対却下。2は良さげだが逆に大泣きされそう。3は・・・やったら妹も俺も大変なことになるな。・・・4は・・・何で?・・・・
俺があたふたしていると妹のほうが先に口を開いた。
「おめでとうっ!!お兄ちゃん!!」
そのまま抱きつかれた。・・・お兄ちゃんって呼ばないんじゃなかったっけ?
そのときの妹の笑顔はあまりにも輝いていて、美しくて、俺のような人間が触れていいのかと、怖くなってしまった。俺と言う人間の本質を知ったとしても、変わらず妹は俺を愛してくれるだろうか・・・
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