終末の序曲~6
今までよんで下さった方申し訳ありません。一つ前の話しを改稿しました。話しの内容が変わるほど変えてしまったので読みなをして頂けると幸いです。
あの日からひと月がたった。今日、俺達の運命?がきまる。
5万回の腕立てか・・・勝利の高揚か・・・
「まだだ、まだ終わるわけにはいかない・・・」
「お兄ちゃんはそんなことで終わらないと思うけど・・・」
香菜がちょっと心配そうな顔をしている
「ここで死んだら・・・俺は、俺は・・・」
「お兄ちゃんが戻ってこない・・・」
その日、俺は少し壊れていた・・・
「どうしよう・・・」
ついに凶悪な笑みを浮かべ、奇妙な笑い声を出し始めた俺を見て流石に妹が焦る。
「そうだ!・・・お兄ちゃん、相談があるんだけど・・・」
「クフフフ・・・ん?どうした?」
「実は最近、好きな人が「何イ!今すぐそいつを出せ!肉塊にしてやる!」
妹の彼氏よ・・・・・・まずは俺を倒して妹を勝ち取るんだな
「グロイよ、お兄ちゃん・・・」
「とにかくすぐ出すんだ!今ならまだ肉塊で済む!!」
そいつ・・・・・・覚悟もなく妹の彼氏になったって言うのなら・・・・許さん
「いないから大丈夫だよ、冗談だから・・・」
「あ、ああ、そうか・・・・」
「ようやく戻ってきた・・・」
ハッ、俺は今まで何を・・・なんか二重で壊れた感が・・・
今は家で朝食をとっている。起きてからの記憶がない・・・いつの間に朝食を?・・・
「本当、二人は仲が良いわねえ。」
義母さんがさっきの光景を見ていた・・・本当に俺は何をしていたんだ?・・
「もう、そんなことないよ。」
香菜が照れたように話す。
「お兄ちゃんもふざけてないで早く朝ごはん食べたら?」
「あ、ああ・・・?」
いつの間にか時間がなくなっていたので急いでご飯をたべる。楽しい時間ほど経つのがはやいと言う。せいぜいそんなことだろう・・・やや納得できないのを無理矢理納得させ、ご飯を食べるのに集中することで悩むことから逃げる。
「もう行くよ、お兄ちゃん。」
「すまん、ちょっと待ってくれ・・・」
急いで用意する。そしていつものように・・・
「「いってきます!」」
学校に向かった。
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今日は合同訓練の日なので、妹とは別れ、一番大きい訓練室1に向かう。訓練室には既に何人か先客がいた、その中に見覚えのあるやつがいたので近づく。
「おはよう立石。」
「ガタガタガタガタガタガタガタガタ」
「・・・・・・・」
緊張でロボットのようになっていた。
「大丈夫か?・・・」
ロボットみたいにゆっくり首だけこっちを向き。
「おはよう」
と、言う姿はなかなか怖い。
「お前が動かなくなったら他のやつもなっちまうだろうが。しっかりしろ。」
「この状況で余計に緊張を煽ぐようなこというかぁ、フツー」
どうやらミスッたらしい・・・でも立石が元に戻ったからいいや・・・
「あ、おはようございます。師匠。」
こいつはこの一ヶ月で完全に弟子になってしまった。今では立石と一緒に教えている。俺から教わることなんかないと思うんだが・・・ ・・・
ちなみに白波は「白天流激流」と言うところの門下生だった。だった・・・俺のところに来るときに抜けてきたらしい。俺の元師匠から連絡が来て白波を元に戻るように説得しろ、ときたほどで、実はかなりの実力者だった。
「おはよう。」
「おはよう。ホントにお前ら緊張してないな・・・」
「師匠がいますから!」
そんな期待いっぱいの目でみられても・・・
段々いっぱい集まって来ている。今のところ一年だけか・・・
「あれ、三年生じゃないですか?」
白波が見ている方向をみると三年生らしき人影が見えた。その中で一際人の視線を浴びている人がいる。おそらくあれが・・・
「あの真ん中で歩いている人が今年の三年生で最強って呼ばれている人です。師匠と同じ魔殺二天流の使い手らしいですよ。」
白波が説明してくれた。魔殺二天流の使い手か・・・知り合いか・・・?
パッと見てなぜそいつが最強と呼ばれているかわかった。
「お、おい!どこいくんだよ!宣戦布告とかすんじゃねえぞ!」
後ろで立石が呼び止める声がしたが無視する。俺がそんなことすると思っているのか・・・?
「さすがです。師匠!」
何を勘違いしているんだ・・・?
俺が近づくと相手も気づいたようだ。周りを制して前に出る。
「久しぶりだね、祐理。」
「久しぶりです。兄さん。」
周りがざわつく。正確に血が繋がっているわけではなく、兄弟子と弟弟子の関係と言うだけだが・・・
「兄さんはこの学校だったんですね・・・」
「ああ、祐理もこの学校だったんだな。」
「それでは、また。」
「ああ・・・」
兄さんはまだ名残惜しそうにしていたが、そのままその場を去った。
「そろそろ打ち合わせが始まるから行こうぜ」
皆何か聞きたそうな顔をしていたが、適当にごまかしてその場はにげた・・・
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現在使用されている魔法は、大まかに五つに分かれており、それは「五大魔法」と呼ばれている。一つは「火」魔法、その場に火を発生させたり、火を操ったり、熱を発生させたりできる。二つ目は「水」魔法、水を何もないところに作りだしたり、水を操ったり、発生させた場所の温度を下げたりすることができる。三つ目は「風」魔法、風を操ったりすることができる。四つ目は「土」魔法、何もないところにいきなり土を作りだしたり、岩や石、土を自由に操ることができる。さらに「風」は「拡散」の概念を操る。だが風魔法は「拡散」の概念を使用して風を操っているので実際に風そのものを操っているわけではない。「土」は「集中」の概念を操ることができる。これにより引力のようなものを発生させたりできる。五つ目は「強化」魔法、これは皆さんも知っていると思うので説明は省く。この他にも「融合魔法」と言う魔法も存在するが、これはまだあまり解明されていない・・・
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今回の合戦では「五大魔法」が使用可能だ、(分からない方は上をご覧ください。)前回のように強化魔法だけではない。(ただし威力の高い魔法が検知された場合は先生が止めにはいる。)ようは遠距離戦がありと言うことだ。服も魔法に反応してペイントのような跡がつくものだ。これも相手に魔法を当てればいいので威力の高い魔法はいらない。
全員が決まった位置に着き。合戦が始まろうとしている。ある人は緊張で固まり。またある人は変なテンションになっている。またあ「キェェェェェェェェ」あいつは今日も壊れるのか・・・壊れるけどあいつ頑張ってるんだよな・・・俺も今日はちょっと負けられない。理由は少し前にさかのぼる・・・あれは合戦の説明を先生がしていたときだ・・・
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「今回の・・・」
俺は説明をほぼ聞き流していた。その説明は何度も聞いたし、自分でも勝つためにいろいろ調べたからだ、しかし・・・
「で、今回皆に伝えていなかったことがある。」
ん?
「今回の合戦は中学生三年生が見学することとなった、せいぜい、中学生の前で恥をさらさないように頑張りたまえ。」
やたら古風な喋り方をする先生だったが、それは今はどうでもいい、中3だって?・・・
皆が裏にある壁ガラス張りの観覧席を見ているのでそれに乗じて裏をみる。観覧席をじっとみていると妹を発見した。
そう、このせいで俺は張り切っちゃったのだ・・・
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全員が緊張や、高揚に包まれるなか、機械的な音声が響く。
『合戦開始 十秒前 九 八 七 六』
さて、俺も準備を始めなければ・・・
『三 ニ 一 合戦 開始』
ついに、合戦が始まった。
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合戦が始まった。近距離型の人が走りだし、遠距離型の魔法が飛び交う。実際の戦争のような光景になる。その中三年の十強と呼ばれる者達は後方で控えていた、三年生達が言い出したことで、十強なしでも入ったばかりの一年なんて・・・と下にみていた、それは十強も変わらず、自分達の勝利を・・・自分達が出なくても・・・確信していた。しかし、一人だけ、周りにも見えるほど不安を抱えている人物がいた。その者は十強でも最強と呼ばれる。名を卯月海斗と言う者だった。水雪祐理の兄弟子である。
「海斗、どうしたの?」
十強を代表して寡黙な少女・・霧島静香がきく。
「いや・・・」
「なあ、もしかしてお前の弟弟子のことか?」
いつも陽気な、千葉拓也が思いあたったことを聞く。
「ああ、よくわかったね。そうなんだ・・・」
「なーに大丈夫さ、なんだかんだ言われてもウチの三年は強え、お前の弟弟子つってたけど弱そうだし、俺達の勝利は間違いないさ」
「弱そう?フフッ・・・そうか・・弱そうだったか・・・そうだな、勝てるかもな・・・」
「え、あ、おう、そうさ、勝てるさ?」
いつもとは少し違う自分の様子を見てみんな困惑しているようだ・・・
「悪いね、ちょっと弟弟子がまた強くなったと思うと少し不安でね」
自分が乱してはならない、リーダーなのだから・・・
ふと戦場の方を見る、もしあいつが本気で来ているなら・・・・まあ、あいつは目立つのが嫌いだから来ないと思うが、すると、誰かがこちらに歩いてきていた。祐理かと思い、一瞬身構えたが、仲間だった。
「あれ、もうやられたのか?」
「ああ、なんかいきなり後ろから斬られてな、でも後ろを見たらだっれもいなくてな~」
「ああ、俺も俺も~」
「もしかして遠距離型で強いやつでもいんのかな~」
何人も同じようにやられたやつが帰ってきた。まあ、そんなことはよくあることだ。しかし、人数が多すぎる。考えていると、ふと思いつく。
「なるほど、そっちもそっちでやる気、と言うことか・・・」
自分がいつもは絶対浮かべないような笑みを浮かべたことで、今度こそ全員が戸惑ったが、最早どうでもよかった・・・
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「ふう・・・・」
俺はまた一人倒し、場所を移動する。俺は、みんなからの提案で遊撃、と言うことになっていた。立石もそうだ。俺は今、敵陣の真っ只中にいた、ただし、気配を消して。気配を消すとは言っても、生命力と同期している魔力を完全に隠しているだけだが・・・俺は開始と同時に気配を消して、壁伝いに走り、誰も気づかない内に何人か後ろから襲撃し、少しづつ相手の頭数を減らしている。これであまり目立たないはずだ・・・多分妹も見失っている筈・・・この第一訓練室は下が地面になっていて、波打つように大きな凹凸がある。ところどころに堀として使えそうなくぼみもある。それゆえに合戦場として選ばれたのだが・・・
「さて、次いくか・・・」
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合戦が始まってから二時間半がたった、妹として兄を見届けようとしたのだが気配を消しているのかまったく見つけられなかった。今の一年組の戦況は最悪だった。まだ十名ほど残っているようだが、三年はその倍、いや、三倍はいるだろう・・・そんな人数しかいないのに兄が見つけられない、本当、どこにいるんだろうか?逆に三年の方をみたら、見覚えのある人がいた、確かあの人は兄の兄弟子だったはずだ。じっと見ていたらいきなりその人が消え、また現れたときには刀を振り切った体勢で止まっていた。すると一年組の5、6人が失格判定を受ける。あ、一年組が・・・もう4人しか・・・あ、やられてる、もう一人しか残ってない・・・お兄ちゃんは?・・・ん?なぜか三年の人の頭数が減ってる・・・もしかしてお兄ちゃん?・・・あ、最後の一人が・・・あ、もう一人・・・
「先生、すみません、・・・」
ふと思いついたことを行動に移すために席をたった。
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周りのやつがやられて俺一人になった、クソッ水雪はどこにいるんだ・・・
ん?なんであそこにいる三年が?
「周りを気にしてる場合かい?」
「あ・・・」
もう、服にペイントがついていた・・・・・・すまん後は頼むぞ・・・
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最後の立石がやられた、やべえ・・・助けようとして前に出たせいで一番目立つところにでてしまった・・・
「なあ、水雪。」
「ん?」
「俺の分も、皆の分も背負ってるってこと、忘れんなよ・・・」
「・・・・」
俺の肩を叩き、歩いていく立石。俺はそれを少し見送り、前を見る。すまない、立石・・・俺は、俺は・・・・お前達をいまから・・・・
「なんだあ、一人だけまだ残っていやがった。」
別に負けたっていいじゃないか、この状況で勝ったりなんかしたら目立つし。本気になる必要なんかないだろう・・・
「ヘッ、流石に諦めたか・・・」
相手が近づいてくる。適当にやって負けよう・・・
俺が構えようとしたときだった・・・
キーーーーーーン
甲高い音が響く。なんかの放送かもしれない。皆が上をみる。しかし、そこから放たれた言葉は放送などではなく・・・・
「お兄ちゃん頑張れーーー!!」
応援だった。皆はそれを聞いて唖然としていたが、次第に笑いだした。
「おい、お前の妹か?兄思いの良い妹だな」
言いながら三年の数名は大声を挙げて笑う。
「ええ、そうですね、本当に、本当に良い妹を持ちました。」
静かに笑いながら話す。心境はまるで悪い夢から覚めたようだった。スッと前を見、相手を見据える。
「兄が妹にカッコ悪い姿を見せる訳にはいきませんよね・・・」
「ハハッ、そうだよなあ、ま、せいぜいあがけや。」
喋りながら近づいてくる。周りの三年達はいまだに笑っている。やや遠いところにいる卯月だけは不味い、といった顔をしていたが。ある程度近づき、前にいる三年が振りかぶる。その瞬間・・・
ビュッ
目の前にいる三年が失格判定をうけた。そうとも、妹に応援されたのだ、絶対に負けられない。妹がはずかしさを押して「お兄ちゃん」と呼んでくれたのだ。これで負けたら俺は妹の期待と羞恥心を裏切ったことになる。
「え?」
驚きに動けない三年を無視し、前に歩き出す。確実に勝たなくてはいけない。そうとも、絶対だ。
「全員で囲め!!陣形を組むんだ!!」
遠くから卯月が指示を飛ばす。すると、あっという間に囲まれてしまった。さすがは三年生、陣形を作るのが早い。流石に十強は陣形に入っていないようだが・・・
「そんなにやることか?確かに今のは凄かったけど・・・」
十強の一人が卯月に話しかけている。そうだ、俺からも言っておこう。
「兄さーん、俺にこんないりませんよ。」
「祐理、今の状況を打開する自信があるからそんな余裕なんだろ?おとなしく実力を見せたらどうだ?」
まあ、おとなしく負ける気はない。26人か・・・
「やれ!」
卯月の指示が飛ぶ。言い終わるか否かのタイミングで横にいた銃使いらしき人が魔法銃を連射する。その反対側には流れ弾に当たらないように避けている。
「う、嘘だろ!」
俺は体をフラフラと前後に揺らすことで魔法の弾を避ける。流石に予想外だったのか声を挙げていたが三年の反応は速かった。裏で何かが動く気配、相手が近くなったのを確認、右手の刀を逆手に持ち替える。後ろで驚く声、後ろから飛んできた攻撃を避けるようにして通り抜ける相手の持っている槍を手首を極めるように奪い取る。そのまま奪い取った槍を強化魔法で強化した左手で投げる。投げた方で悲鳴があがる。今ので三人・・・
「お、おい・・・まじかよ・・・」
「さすがは海斗の弟弟子・・・」
周りがざわつく。ん?俺の周りを魔力が覆っている。魔法で決める気か・・・俺が思考し ・・
た直後に俺がいた場所に魔力を帯びた竜巻が起きる。俺はある方法で敵が密集していてその先に敵がいない場所に移動する。
「い、今のって・・・」
「ああ、海斗と同じ転歩・・・」
転歩と言うのは魔殺二天流の技である。ノーモーションで瞬間移動のような移
・・ ・・
動をする技である。この技は無心で、しかも一歩で行う。この技を使えるようになるのはひと握りの者だけで、魔殺二天流を習っているほとんどの者が使えない。この技には階級が存在し、一式から十式まで存在している。式が上がるごとに、距離と連続で使える回数が増える。ちなみに今俺が使った転歩は四式、最大移動距離は5メートルほどだ。
「は、速え・・・」
今の移動と同時に密集していた奴を三人斬った。あと20人・・・今度は俺から突っ込むか・・・
「転歩六式」
敵中に突っ込む。突っ込むときに二人斬る。驚いて動けないうちに一人斬る。思ったより立ち直りが早い。卯月のせいだな・・・。17人
「逃げ場を無くせ!」
さすがは兄さんだ、転歩使いの対応の仕方が分かってる。だが・・・
「うわ!」
「ちくしょー!」
近距離で囲んだら剣が振りづらいだろうに・・・残りは十人。あとは十強だけか・・・・
「へへ、なかなかやるな。だが俺達はどうか、なっ!!」
短剣での鋭い突き。武器は・・・短剣二本。避けていると魔法弾が飛んでくる。直線ではなく曲がって。誘導弾か・・・魔法弾が当たる直前まで攻撃が続き、当たる直前で後ろに短剣使いの男が飛ぶ。その瞬間に俺は右足で後ろに行く体を抑え、刀を振る。
「うおっ、まじか!」
短剣使いを斬りながら魔法弾も全て迎撃する。誰かが後ろに回ったな。卯月か・・・・・・
卯月の横薙ぎを上に跳んで避けながら敵を見回す。弓使いがこちらに矢を向けていた。飛んできた矢を手で掴み取り、弓使いに投げつける。弓使いの胸に当たり、失格判定。これで二人か・・・やや後方に跳んだので卯月の後ろに着地、しようとして断念。明らかに魔法が仕掛けられている。刀を離し、宙でそれを蹴って転歩。魔法を仕掛けた人の前に着地し、あらかじめ持っておいたもう一本の刀で斬りつける。その人が一番裏にいたので背後から二人ほど斬りつける。これで5人。すると俺の前に卯月が転歩を使って現れる。勢いそのままに突いてきた卯月の刀を流すようにしてよける。その状態で先ほど倒したやつから奪ったナイフを投げて一人仕留める。あと四人。
「相変わらずやるね。」
「それほどでもないですよ。」
卯月と鍔迫り合いの状態の中軽口を叩く。そのまま卯月がやや体重をかけたところで後方に転歩。体勢をやや崩しているうちに転歩で卯月の横をすり抜け、十強の一人の前に移動する。前にいるひとりを袈裟懸けに斬り、もう一人の唐竹割りを受けて返す。返しながら奥にいる一人の胸に刀を触れさせる。これで・・・
「後は僕だけか・・・」
「ええ、後は兄さんだけです。」
「さすがだな、本当に昔からまったく変わっていない。妹が絡むとすぐこうだ。」
「ま、妹に応援されたら流石にね。」
「妹への溺愛は健在だね。」
「ええ、それはもう。」
「ハハッ、そうかい、じゃ、やろうか。」
お互いが刀を構える。俺は相変わらず一刀流だが、卯月は刀を二本構え、二刀流の構えをとる。本気か・・・
本来魔殺二天流は、二天の名が表すように二刀流の流派だ。もちろん一刀流も教えているが、主となっているのは二刀流だ。だから俺も二刀流を扱える。まあ、俺は二刀流よりも一刀流の方が得意なので基本的に二刀流は使わないが。
「本気ですか。兄さんはそれをもう他の三年に見せてるんですか?」
「いや?」
「いいんですか?見せちゃって。」
・・・
「いいんだよ、祐理だってそんなに力見せちゃっていいのかい?まあ、その持ち方では実力の半分もだしていないだろうけど」
まあ、俺はこれ以上目立ちたくないから手を抜くために持ち方を少々変えているが。あっちは勝つために隠している技を出し、本気で来るらしい。
「そんなことないですよ?」
「どうかな」
お互いに軽口を叩いているが何気なくゆっくりと構えを変え続けている。話しながらもお互いの技を探りあっているのだ。やがて、そのゆっくりとした動きは止まり、お互いの構えがきまる。卯月の構えは「天地双撃」の構え。やや腰を落とし、右手の刀を下、左手の刀を上に構え、お互いの刀で突くような構えだ。卯月には珍しい攻撃的な構えだ。対して俺の構えは「大振撃」の構え。右手の刀を後ろに突くように後ろにまわし、刃を下に向けている。こちらも攻撃的な構えだ。
「珍しいね、それでいいのかい?それとも構えまで手を抜いているのかい?」
「まさか、これは訳ありです。一撃で決めますよ。」
二人は絶対的な緊張下の中でも会話をしている。決して二人に余裕がある訳ではない。お互いが緊張下でも話せるような訓練を受けてきているからである。この状況が生まれたのはお互いが同じ師から習ったことを表している。
「そうか、じゃあ、これで終わりにしよう。」
お互いが刀を握り締める。二人の緊張が一気に高まる。
ズドォ!!
お互いの転歩がかさなる。
ビーーーーーー!!
試合終了のブザーが鳴った
次から投稿がどんどんおくれます。すみません。