終末の序曲~5 試合3
今回は長いです。
ブザーが鳴り、勝者の名前がスピーカーで知らされる。
『勝者、水雪 勝者、水雪』
・・
立石は槍で思い切り突いた体勢で、俺は右手を床につき、体勢を低くしてそれを聞いていた。周りの生徒達も、見ていた先生達も唖然とした顔をしている。まさか誰も考えなかったのだろう。空中で身動きがとれず。なんの抵抗も出来なかった筈の俺が・・・
・・・
宙で武器を投げた、なんて。しかも武器を投げ、余計に立石の技をよけられない筈の俺に、
・・・・・・
一切ペイントが付いていないことに。
いつまでも同じ体勢でいるわけにはいかないので近くに落ちている刀を拾い、立ち上がる。魔力を流していないのでもはや柄だけの刀を持って皆と同じように壁に寄る。少しすると先生が動きだし、
「はい、次―」
と、言う。それに合わせて立石も俺に近寄ってきて、壁に寄る。
「なあ・・・」
「ん?」
「最後・・・最後いきなり落下速度が上がったのはなんでなんだ?」
他にもいろいろ聞きたそうな顔をしている。こいつは顔にでやすいな・・・
「気になるか?」
「ああ・・・」
周りがやや騒がしい、先生がさっきの試合で皆の緊張が高まってしまったと思ったのか軽いジョークを言って皆を笑わせている。確か先生が試合前の説明で試合が終わったら休憩に少し外に出てもいいと言っていた筈だ。(具体的には五分)幸い近くに先生がいた。
「先生、ちょっと外に出ても・・・」
「ん?ああ、いいぞ。」
行くぞ、と立石にサインして訓練室の外に出る。
「ふう・・・」
中と外ではやっぱり空気が違う。扉を閉めたら廊下は一気に静かになった。
「まあ、さっきいきなり落ちたのは魔法だよ。」
「魔法なのか?」
「ああ、強化魔法で俺の重さを一気に強化したんだ。」
「それでか・・・」
立石がまだ何かあるような顔をしている。本当にこいつは顔に出やすいな~
「なんかまだ聞きたそうな顔をしているな?」
「あの、さ、なんで俺が技を放つ前にあんな俺を哀れむような顔をしたんだ?」
しまった・・・どうやら顔に出してしまったらしい・・
「すまん、気に障ったか?」
「いや・・・それより訳を聞きたい。」
なんかまだ、こいつ暗いな・・・
「あれはな、途中まではよかったんだけど最後にお前がミスを犯したからだよ・・」
「ミス?」
「ああ、致命的なミスだよ・・・ほれ」
近くの自動販売機(スポーツドリンクとお茶、水しかない)から二本スポドリを買って(買うとは言ってもタダ)立石に投げる。
「それでよかったか?・・・お前、最後までできるだけ無駄をなくすようにして闘ってたろ?」
「これでいいよ・・・ああ、そうだけど・・・」
「でも最後に大技に走っただろ?あれが駄目なんだ」
立石がよくわからないと言った顔をしている。今にも頭の上に?のマークが出てきそうだ。
「いきなり話が変わるんだがお前って実戦にでたことある?」
「いや?でたことないけど・・・」
「ああ、やっぱりか・・・」
「なんでいきなり?・・・」
そこで、諭すように立石に話す。
「ああ、だいたい実戦を味わったことがあるやつは実戦か実戦じゃないかで戦いかたが変わるんだ。でも、お前は試合なのに実戦同様に戦った。そこにあるんだ。え?よく分からないって?まあ、細かく言うとだな、あの試合では相手に当てれば勝ちなんだ、だから最後のお前の構えはてっきりフェイントだと俺は思ってた。でもフェイントではなかった。そしてそのままお前は大きなためが必要な大技を放った。この試合は相手の急所に当てれば勝ち、だから正解は・・・」
「大技と見せて相手が反応を見せたところで・・・」
「軽い技で対応すればよかった。と言うわけだ・・・」
お、顔が明るくなった
「なるほど~そう言うわけか~。ありがとうっ!よくわかった!」
「まあ、そう言うわけだ。さ、戻ろう・・」
「ああっ!!」
元気になった立石を連れて訓練室に戻ると試合が行われていた、今の試合は間違い無く先生がしっかり決めたものだろう。二人ともまさに素人、と言った動きをしている。しっかり先生が決めなければ分からないことだ。このあとの試合はとくに見るべきものがあるような試合はなかったので適当に見ていた。相手に失礼だ!!と怒られたらそれで終わりだが・・・
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全ての試合が終わり、全員が集められた。
「お前らに一つ連絡事項がある。来月の一番最初の戦技の授業で一年と三年の合同授業がある。そこで急遽一年と三年で合戦をすることになった。まあ合戦つうのは一年前半組全員と三年前半組全員で戦争みたいに戦うっつうもんだ。これなんだがな・・・」
正直に言おう。説明がざっくりすぎる!まあ、分からない人もいるだろうから俺が軽く説明しよう。さっきまでやっていた試合のように相手にペイントを付けたら勝ちと言うルールはそのまま、失格判定を受けたものは壁際に寄っておとなしくする。それをどちらかが完全にいなくなるまで行う。と言うものだ!!
ん?俺は誰に説明していたんだ・・・
「負けるとペナルティがある。」
え・・・?
「みんな唖然としているところ悪いがこのペナルティが結構きつい・・・」
お、おい・・・
「その内容は・・・」
頼む!楽なものであってくれ!
「軍隊式の腕立て伏せを魔法なしで5万回するまで帰れない・・・」
やめろ、そう言うことを言うと・・・
「詰んだな・・・」
「神よ哀れな私を・・・」
「だが断る!」
「あ、あべしィ!」
「○×▽□態様キエェェェェェェェェェェ」
ほら出ちゃったじゃないか。言わんこっちゃない。てかなんか増えてないか・・・?
「すまない・・・俺達も一緒にやることになるから許してくれ・・・」
「だが断る!」
それ何度もいうな!怒られるんだよ!俺?俺じゃねえよ、作者が!
人を・・・人を殺す気か・・・・ん?立石?どうした?
「先生!!まだ諦めるのは早いです!今から全力でやればもしかしたら・・・」
フッと先生が笑う。
「ああ、そうも考えたさ・・・今年の三年でなければな・・・」
「え?・・・」
先生が諦めていいのか~
「今年の三年はな、近年最強と名高いんだ。三年のトップクラスなんかは十強なんて呼ばれていてな・・・一番強いやつなんかは大人の魔法兵士がまったく歯がたたないほどなんだ・・・」
さすがの立石でも表情が凍ってしまった。魔法兵士になれるのは養成学校を卒業した者でもひと握りの実力のある者だけなのだ。学生ではまず歯がたたない。それに勝ったと言うのだから凄まじい。だが今は褒めている場合ではない。これで俺達は詰んだと言うことだ。先生も諦めてるし、俺達は終わりだろう・・・
「先生!諦めちゃ駄目です!たとえ、たとえ相手が強くても諦めたら、諦めたらそこで終わりなんです!たとえ負けたとしても、あきらめたら・・・」
立石が涙を流しながら言う。
「おお、そうだな立石!!」
涙ぐんで先生も返す。そしてそのまま二人は抱き合う。この光景をみているやつらは皆呆れて・・・って泣いてる!?
「ああ!そうだよな立石!皆!そうだよな!」
「「「「「オーー!!」」」」」」
こいつらは皆熱血野郎なのか?・・・
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近接戦闘が戦闘の主流になった時、多くの流派と呼ばれるものがつくられた。理由は単純で、自分の技を後に残すためである。魔物との戦いが自分の代で終わるとは限らず、自分の発見した技を後世に残し、魔物との戦いをより有利に進めるため、と多くの者が流派を作った。その中でも有名なのは、「魔殺二天流」と呼ばれる流派だった。この流派を創設した人間が、日本で起きた、「第三次人魔戦争」で凄まじい戦果を挙げ、英雄とまで呼ばれた者だったからである。その後もこの流派からは何人も優秀な人間をだし、さらに魔殺二天流をでた者が他にも流派を作ったことで傍流をいくつも生んだ。流派名で魔殺の名がつく流派はだいたい傍流である。
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その後は来月に備えて自由訓練となった。自由と言うことでみんな思い思いのところで訓練しているのだがほとんどが俺の周りにいると言っていいだろう。さっきの立石との試合がなかなか面白かったらしい。俺同様立石も囲まれている。そんなことをしている場合か?
「ほーらそんなことをしている場合か~?」
皆ハッとする。言わんこっちゃない。
「軍隊式腕立て伏せ5万回・・・・」
「キェェェェェェェェェェ」
また誰か壊れたぞ・・・?
「水雪君」
「貴様か・・・」
昨日俺を呼び出したやつだ。あ、名前を聞いておかないと。
「な、なんかうらまれてる・・・」
「あの、昨日の話な「なあ聞きたいことがあるんだけど。」
昨日びっくりさせられたからやり返しだ、器が小さい?知ったことか。
「はいなんですか?」
あっさり返しやがった・・・あ、目が黒い・・・
「君の名前「白波 葵です。」
「あっさり返したと思ったらしっかりやり返しやがった・・・」
「口にでてますよ・・・」
ハッ・・・
「あの・・・ところで昨「いいよ・・・」
「本当ですかっ」
なんだかもう面倒臭くなったのでOKを出した。
今日は下校の時間まで大変だった・・・・。
あのあと来月に備えて作戦などを立てた。後は作戦を実行するだけだ・・・
負けられない戦い?が俺達を待っている・・・
次の話で主人公のシスコンぶりが発揮されます。
また学校の名前がかわりました。
「魔術兵士」~「魔法兵士」