友が師か
訳あってしばらく書けませんでした。
ようやく書けるようになったのでよろしくお願いします。
小川先生とのじゃんけん大会から数十分後。
俺と小川先生は二人きりで話をしていた。
こうなったのは小川先生が「この病人と大事な話をするから出て行け。」と追い出したからである。
小川先生が俺だけに話したいことと言えばあの話しかない。
「さて・・・・邪魔者がいなくなったところで話をしようか。」
「体の話ですか?」
「そうだ。あれから何か変化はないか?」
「特にないです。」
強化魔法の禁忌魔法の代償を負って生きている者がおらず、前例がない為に自分の体はどうなるか完全に不明である。
「そうか・・・・・これからもこの事は?」
「秘密でお願いします。」
この事を知っているのは、俺と小川先生だけだ。
香菜には俺の体のことで心配をかけたくない。
だからと言って、朝日や碧、立石達は変なところでなので伝えられない。(伝えたら香菜にバレそう。)
「そうか・・・・なら、強化魔法は常に張っておくべきだ。解除した状態を誰かに見られたらバレるぞ。正直に言わせてもらうが、君の体はかなりまずいレベルに到達している。」
「はい・・・・」
一度目の使用の際、俺の体の成長は止まった。俺の体が小さいのはそのせいで、体は中一のままなのである。実際、成長が止まってしまう病気はあるし、その治療法も既に確立しているが、俺の場合はどの方法で治療しても効果は出なかった。
だが、禁忌魔法を使用して、最初に気付いた症状はその事では無かった。
禁忌魔法を使用して解除した時、俺は目が見えなかった。
音も聞こえなかった。完全に聞こえない訳ではないのだが、今までは普通に聞こえていた音が、どこか遠くで聞こえているような感じになってしまった。
そのことで妹に秘密で病院に行き、分かったのは、体全体のあらゆる能力が低下している、と言うことであった。
目に見えて分かるのは、触覚、聴覚と言った主に五感と呼ばれるものである。
視力や聴力が極端に低下し、触覚、嗅覚、味覚も低下。
本来ならばこの時点で、眼鏡だの補聴器だののオンパレードになるのだが、俺には幸い強化魔法があったので、何とかごまかせている。
「まあ、何だ、今日はそれだけだ。死ぬなよ?」
「言われなくとも。」
*************
その後、小川先生は家へと帰った。(仕事は休みだった。)
碧も家へと帰った。俺が病気と言っておいたおかげで殆ど怒られなかったらしい。
その後、先生達から色々質問責めを受け、何とか開放された頃には六時を回っていた。
「すっかり遅くなったな・・・・」
もう季節は六月。日が伸び、六時だと言うのにまだまだ明るい。
「遅くなっちゃったね。」
妹と二人で並んで歩く。毎日の事なのに、何だか久々な気がする。
今日、命を懸けた戦い?をしたからかもしれない。(主に碧のせい)
二人の間に沈黙が降りる。
気まずい雰囲気、では無い。
まるで実家に帰り、どこか安心するような雰囲気が、そこにはあった。
だがそれは、香菜のみであった。
兄である祐理は、何も感じていないようであった。
無表情。だが、その無表情は、ただの無表情では無かった。
まるで、何かを抑え込んでいるような無表情。
そのことに、妹である香菜は気付いていなかった。
***********
その日の夜、ふと目が覚めた。
そのまま寝ようと何度か寝返りを繰り返して、やがて諦めた。
完全に目が冴えてしまっている。
「・・・・・・・・・・」
ゆっくりと起き上がる。
何か飲み物でも飲みながらボーッとしていよう。そうしていればそのうち眠くなるかもしれない。
ベットから這うように出て、自分の部屋の扉を音を立てないように開ける。
もうこんな時間だ。彼女も寝ているだろう。
「・・・・・・・・・・・・」
音を立てないようにしながら階段を降りる。
キッチンにある冷蔵庫を開け、中から飲み物を取り出す。
飲み物をコップに注ぎ、そのコップを持ってテーブルまで歩き、椅子に座る。
何も考えず、椅子でくつろぐ。
あのまま碧の暴走を止められなかったら、俺はもちろんのこと立石や白波。香菜までもが殺されてしまったかもしれない。
彼らが殺されてしまう、いなくなってしまうことを考えると、悪寒のようなものを感じずにはいられない。
その感覚。それはまるであの時のような―――――
気付けば、真っ赤な血に濡れた両手があった。
手の隙間から、ある物が見えた。
血まみれで倒れ込む二人の女性と男性。
その傍で泣き叫ぶ子供。
そう、これは―――――
誰のものでも無い自分の記憶。
何があっても忘れられない記憶。
自分が両親を失った時の記憶だった。
目の前で、為すすべもなく蹂躙される両親。
二人の名を叫ぶ妹。
二人を殺した者への怒りに視界を染めながら、俺はそれを見ていた。
母と、父。
二人を殺した者がこちらを向いた時。
俺と妹は真逆の行動を取った。
妹は泣き叫びながら逃げ惑い
俺は怒りのままに刀をとった
俺はそのまま無茶苦茶に刀を振り回し
妹は何度も転びながら逃げた
俺は、その時までまともに刀を握ったことなどなかった。
だが、刀を握った瞬間、何となく使い方が分かった。
まるで、体が憶えているかのような感覚だった。
刀を振り回し、惨殺する。
そのまま刀を投げ捨て、両親の元に駆け寄る。
両親に声をかけ、返ってきた言葉は―――――
『あなたは・・・・誰?・・・・』
その言葉。その言葉だけは―――――
「うわあああああ!!あ、あ・・・・・・・」
ふと我に返る。
自分の顔が目の前にあった。
どうやら無意識に洗面所まで来てしまったらしい。
「はあ、はあ・・・・・・」
鏡には、息切れを起こしている自分がいた。
そんな自分の顔が見ていられず、鏡から視線を外す。
今更こんなことを思い出して何になるというのか。
どれだけ思い出しても、どれだけ悲しんでも―――――
どれだけ怒っても二人は戻らないと言うのに。
自己嫌悪。
今自分の感情を占めているのはそれだけだった。
分かっている。分かっているのに、
未だに自分は引きずっているのだ。
あの時の悲しさ、
あの時の怒りを。
心の片隅で未だに望んでいるのだ。
あれを殺すことを
自分の幸せを奪っていって、未だのうのうと生きているあの女に報復することを
復讐を
どんなに無惨にあの女を殺そうと・・・・復讐しようと二人は、幸せな時間は戻ってこないと言うのに。
「チッ・・・・」
まだその時ではない、と自分を抑える。
今すぐに殺したい。そんな負の感情を抑える。
どんな手を尽くしても、殺さない限りはこのわだかまりは消えないだろう。
そんな確信が、心の中にはあった。
それでも俺は殺せない、まだ殺せない。
臥薪嘗胆、では無い。
あの女により苦痛を与えるため。
今は泳がせておくのだ。
せいぜい今は楽しく暮らしているといい。
俺が・・・・俺がお前に・・・・
俺が味わった以上の苦痛を味わわせてやる・・・
大分ヒートアップしてしまった。
こんな状況ではもう寝れないだろう。
しょうがない。
外でクールダウンでもしてくれば、多少はマシかもしれない。
1日ぐらいなら寝なくても大丈夫だろう。
「永華」を手に取り、外に出る。
思えば、こいつとの付き合いは両親が死んでからずっとだ。
いつも荒々しく使っているが、こいつも俺にとって失いたくないものの一つだ。
「永華」は裏切らない。
何があっても、俺を裏切ったことは無い。
まあ、刀と言う意思を持たない物なのだから、当然のことだが。
その時、俺は高揚した自分の感情を抑えるのに必死で気付かなかった。
自分を見つめる双眸があったことに。
*************
翌日。
俺達は変わらず学校に行った。
香菜と別れ、学校に入った頃から騒がしくなった。
声、ではない。視線が、である。
昨日のことがもう学校全体に広まったのだろうか?
皆が皆こちらを見ながら何事かつぶやいている。
それとも、これは気のせいなのだろうか?
いつも目立ちたくないと考えているくせに目立つ行為をしてしまったと言う意識が自分の感覚を敏感にさせているのかもしれない。
自意識過剰と言うやつだ。
とりあえず、気にしないことにした。
気にしなければどうということは無い。図太ければ。
新情報発覚。そこらへん俺はデリケートでした。
周りの視線が気になって気になって仕方がない。
そこから逃れたいと言う思いからか自然と足早になる。
俺はそのまま教室にそそくさと逃げ込んだ。
が、その選択は大間違いだった。
教室に入った途端、より騒がしくなった。
今度は視線だけではない。声も、である。
質問攻めに次ぐ質問攻め。やがてその質問は波となって俺を襲う。
第3波、来ます!
ようやくその質問攻めが終わり、俺が席に着いた時には俺はもうヘトヘトだった。
どうやら碧も同じ目にあったようだ。俺の隣の席で机に突っ伏している。
(転校生が主人公の隣に座るのは最早テンプレなので気にしないでください。)
一応、声をかけておくことにした。
「おつかれ。」
俺が声をかけると、机に突っ伏した体勢のまま顔だけこちらに向けて返してくる。
「お・・・お疲れ様です・・・・」
疲れていても口調だけは変わらないようだ。さすがは碧である。
「祐理さん・・・昨日、僕らが帰った後に何を先生と話しました?何だか事実と噂が違うような・・・・」
「ああ・・・先生に頼み込んでな。昨日の事件を解決したのは先生ってことにしてもらったんだよ。生徒が見ていた時間だけでもこれだけ目立ったんだ。これ以上目立ちたくなかったからな。」
俺の考えで行くと、先生が鎮めた、と言う話になれば噂はすぐに止まるだろう。俺達の事件を見ていた人は事細かに知っているが、噂として広まるのは「生徒が問題を起こした」と言う点と「それを先生が鎮めた」と言った風に広まるだろう。
このように広まれば、ありふれた学校の事件の一つとなり、この噂は自然消滅するだろう。
「そうだったんですね。一応、会話は合わせておきましたよ。」
「おお、悪いな。」
碧が突っ伏しているのを見ていたら、何だか楽そうなので自分も突っ伏すことにする。
あ~、これ楽。
「あ、そうだ碧。」
ふと思い出すことがあったので、突っ伏した体勢のまま、碧の方を向く
「何ですか?」
「こんな体勢で悪いが・・・すまん!先に謝っとく。」
「体勢直せばいいだけじゃないですか?・・・・何ですか?」
碧の言う通りである。体勢を直せばいいだけである。
直さないのには理由があるのだ。
「いや、この体勢が楽でなんか癖になっちゃって・・・・いやさ、俺が頼んだ噂だと碧がかなり目立っちゃうと思うんだよ。だからごめん。」
こんな理由で悪いか!すいません、悪いですね。
俺の返答に碧はケロッとした様子だ。
「何言ってるんですか。たかがそんなこと、僕は気にしませんよ。むしろ大歓迎ですよ。僕の性格、知ってるでしょう?」
まあ、対して怒らないだろうからいつものテンポで謝ったのだが、予想通りの答えにホッとした。
「まあ・・・知ってるけどな・・・・。ずっと思ってたんだが・・・・何でそんなに闘いが好きなんだ?Mなのか?」
中学からの付き合いだが、そういえば聞いていなかった。何度か気になって聞こうとは思ったのだが、聞く前に俺が忘れてしまうのでずっと聞いていなかった。
この質問をかけた途端に、碧の瞳の色が変わった。
その瞳は、何も写していないような、何も見ていないような悲しい瞳だった。
碧が突っ伏していた体勢からしっかり座り直す。
「僕を・・・・」
「え?」
声が小さくて聞こえなかったので聞きなおす。
聞き直した時に、俺も体勢を元に戻してしまった。
「僕を探してるんです。どこか、遠い所に置いて来てしまった僕を。」
話しながら、碧は左手と右手で丸を作り、その二つを繋げて子供がやる望遠鏡の真似のようなものを作る。
それを左目からやや離れたところに置き、右目をつぶる。
「僕の胸に空いてしまった大きな穴、僕の居場所。それを探してるんです。」
碧は先程までやっていた望遠鏡の真似事をやめ、グッと拳を握り締める。
「僕の原点は闘い、です。いや、殺し、です。勝って負けて、殺して殺されて。それの・・・それの先に僕がいる気がするんです。強い奴と闘うことで、そこに近付いている気がするんです。生か死か、そんなギリギリの闘いの中に、僕が落ちている気がするんです。僕の胸を埋めてくれるのは、強い人・・・」
その話し方は、本当に何かを探しているようであった。探りながら、ゆっくり、ゆっくりと探りながら言葉を紡いでいるような、そんな喋り方だった。
碧がこちらを向きながら、惚れてしまいそうなほど美しい笑顔で言った。
「そう、強い人が僕の大事な居場所になってくれる気がするんです。」
その微笑みは、美しかった。
闘いの時だけしか見せない美しさ。
その瞬間、時が止まったような感じさえした。
この美しさを前にしたら、花も黙って萎れてしまうのではないかと言う美しさだった。
何より、その目だ。
俺が目を見て大体人の感情を読めるのを知っているからか、碧はまっすぐに俺の目を見つめていた。
その目には強烈な熱があった。
その熱いとすら感じる感情は?・・・・
挑戦?違う
怒り?違う
そんな感情では無い。
これは・・・この目は・・・・
俺を・・・・俺を誘っているのか?
誘う?一体何に?
その瞳は、何もかも引き込んでしまいそうな力があった。
一歩、一歩でも踏み込んでしまえば飲み込まれそうなその目。
その目に対し、俺に生まれた感情は・・・恐怖では無かった。そう、この感情は身に覚えがある・・・
渇望
果てしない、どこまでも果てしない。
渇望。
分かる、分かるのだ。
今、この瞬間に俺と碧の心の奥底にある感情は・・・・
全く同じものであると。
だが、そんな時間はそんなに長く続かなかった。
碧が自然に目を逸らしてしまったのだ。
碧が目を逸したことで、俺の感情も消える。
何だ?・・・何だったんだ?・・・今のは・・・・
時間的にはそんな長い時間では無かったかはずだが、体全体にドッと疲れが押し寄せる。気のせいか、冷や汗すらかいているような気がする。
「まあ、そんなところですよ。僕は好きで闘ってるんです。きっと・・・いつか・・・」
碧の声は、途中から小さくなってしまい、聞こえなくなってしまった。
だが、何となくそのことを聞いてはいけないような気がして、俺はその先を聞くことは出来なかった。
俺はさっきの会話に戻るのを、何となく拒否した。さっきの会話に戻るのに。恐怖すら感じた。だから、俺は会話の方向を転換した。
「そういや、立石は?」
「あ、そういえば来てませんね。」
その後、立石が学校に来ることはなかった。
***********
その日の放課後、俺は一人で帰路についていた。
今日、香菜は友人に誘われて放課後に買い物に行くそうだ。もちろん来ないかと誘われたのだが、それでは香菜の友人が楽しみづらいだろうと遠慮した。(そんなことが理由で香菜が友人と喧嘩するのはいただけない。あくまで予測の領域だが)
碧とは家が反対にあるのか帰路が逆である。白波もである。
そんな帰り道で、俺は知っている顔を見つけた。
今日、学校に来なかった立石である。
いつもの制服や訓練服では無く、動きやすそうなジャージを着ている。
いや、先程の見つけた、と言う所を訂正しよう。
見た、いや見ている?う~~ん。何と言ったものか。
説明しよう。
立石が、俺の唯一の帰路(ここまで来ると、家までは一直線なので最早ルートがこれだけ)に立っていたのだ。
まあ、会って当然である。
しかも、ただ立っていたわけではない。鎮座、いや仁王立ちである。
何か企んでいるに違い無い。
まあ、話しかけることから始めよう。
味方だ!撃つな!なんか違うな・・・・
「ど、どうしたんだ?立石。」
立石は、俺が話しかけたのに対して、珍しく迷うような返し方だった。
「いや、ちょっとな・・・」
一体どうしたのだろうか?本能だけで生きている立石にとって、迷うことなど皆無のはずなのだが・・・・
「なんだろう・・・・すっげえ失礼なこと言われてねえか?・・・」
大丈夫だ、言ってない。思っただけだ。このことは心の底に閉まっておいてやろう。これも優しさである。
「そんなことはどうでもいいや・・・で?どうしたんだ?立石。わざわざ俺が一人の時を狙って俺の帰路に待ち伏せとは・・・それに今日、立石にしては珍しくサボりとは・・・」
超熱血。そして正義(笑)感溢れるのが立石の特徴である。
そうそう、ヒャッホー!正義だぜ!とか言ってれば立石になるのである。立石チョロいな。
「水雪祐理!」
立石がいきなり真剣な目付きで俺を見る。
「お、おう?」
な、なんだよ!いきなりビックリするだろ!しかもフルネームかよ。
まるであの時の白波・・・白波?
なんだろう・・・この嫌な予感。デジャブ?
「俺の師匠になってくれ!」
人はまた、同じ過ちを繰り返す。
人は、学習する生き物だ。だが、それでも人は同じ過ちを繰り返す。何度繰り返しても、同じ過ちを繰り返すことがある。だが、それは人が人である証拠だ。何一つ間違えない人を、俺は人と認めない。
以上、現実逃避気味に詩的に表現してみた水雪祐理でした。
自分の作品を見直していて気が付いたのですが、ラストワールドはやたらと急展開な気がします。
直そうとは思うのですが、これが中々治りません。
二章の三話にでてきた碧君との決戦はまだ出てきません。
長く粘ってしまってすみません。
後、二章の題名変えました。




