第1章~終末の序曲
初の作品です。温かい目で見守ってください。
その日、俺は大切なものを失った。
自分の眼前に広がる凄惨な光景を見ているとそんな感じがした。
自分の前にはいくつもの死体が転がっていた。あるものは上半身と下半身が分かれ、またあるものは首から上がなかった。いくつものいくつもの死体を見ていると、不思議と涙が溢れ出てくる。だと言うのに俺は何も感じてはいなかった。目の前にあるのに遠くで見ているような、大切なものなのにどうでもいいもののような、そんな感じがしていた。途端、俺は笑い始めた。なぜ自分が笑い出したのかさっぱりわからなかった。すると、いきなり俺の体が勝手に動き出した。勝手に動きだした俺の体は死体に近寄り、死体を蹴りだした、笑いながら蹴っていた。俺はその行為を見ていたくなかった。ただ、見ていたくなかった。でも目を瞑れなかった。だから俺は、俺は・・・・
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ガバッと大きな音をたてて起き上がった。カーテンの隙間からわずかに光が差し込んでいた。
「何だ、夢か・・・・・」
俺、水雪祐理は小さい頃から同じ夢を何度も見ていた。何度もみているのにどうしてもなれない夢だ。さっきの夢を見て汗をかいたのか寝間着が汗でぐっちょりだった。なので、さっさと着替えることにした。それに、リビングに行けばおそらく朝の早い妹がもう起きているだろう。それに、この夢を見たときは、いつも妹を見れば安心するのだ。着替え終えてリビングに出るといつものように妹がテーブルにすわっていた。
「あ、お兄ちゃんおはよう。」
俺の妹、水雪香菜は、黒髪黒瞳で、髪はロングのストレート、肌は陶磁器のような白い肌、言葉で表すのなら清楚、と言う言葉がとても似合うような少女だ。
「ああ、おはよう」
どうやら俺が起きてくるのを待っていたらしい、まあ、これもいつものことだが。
「また待ってたのか、先に食べてていいのに」
すると、俺の妹は顔を膨らませながら、
「私が一緒にたべたいの」
と言う。これもいつものことだ。
「あれ、今日は入学式だよな、」
「ん、そうだよ、ていうかお兄ちゃんもでしょ。」
「ああ、そうだったな。」
いつもの感じだ、とても安心する。と思っていると。ぱっと目にあるものが入った。「斬首連続殺人事件。また同じ犯人か。」と書かれていた。
「また、こんな日に不吉な・・・」
さっきあの夢をみたばかりなのでとても不吉な感じがした。それに今日は入学式だ。不吉ったらありゃしない。
「ほんと、不吉だよ・・・」
朝からこれだと溜息がつきたくなる。そうこうしていると、階段から人が降りてきていた。
「あ、義父さん、義母さんおはよう。」
「もう6年もたったのに一度もお母さんって呼ばれてないわ。まあいいんだけれど・・・
おはよう。」
「おはようございます」
そう、俺と香菜の本当の母と父はいない。俺たちの目の前で死んだ。魔物に殺されてしまった。祖父母も亡くなり、従兄や鳩子もわからない、そんな孤児になってしまった俺たちを拾ってくれたのが、今俺たちの前にいる郡山さんだ。俺たちが郡山を名乗っていないのは、郡山さんたちが前のままでもいいと言ってくれたからだ。俺たちがお母さんお父さんと、呼ばないのは水雪のままでいる俺たちのけじめのようなものだ。義母さんたちも分かってくれてはいるのだがどうしても若い頃に失った子供のことを忘れられないらしい。
「もうそろそろ時間なので入学式に行ってきますね。」
「あら、もうそんな時間、ごめんなさい、お弁当は持った?忘れ物はしてない?」
「義母さん今日は入学式でクラス発表と学校案内だけで昼前には帰ってくるからお弁当はいらないよ。それにそんなに心配しなくても大丈夫だよ」
「そ、それもそうね、香菜ちゃんは中学3年生、祐理くんは高校1年生だものね。じゃあ、いってらっしゃい。」
「「いってきます」」
彼らはそう言って歩き出した。
思えば、この日から最悪の結末は・・・始まっていたのかもしれない。
投稿スペースはかなりゆっくりです。全然進まないかもしれませんがよろしくお願いします。