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中編

夜。1人、格納庫に向かい歩いて行く。格納庫の中には練習用滑空《秋草》や他の秋水試作機や改修機などが置かれている。



しかしそれらの機材も秋水の開発中止により処分される事に決まっている。最後に見ておこうと足を進めている。



「ハッ~・・・何でこうなったんだろうな。」



昼間のアイツとの会話を思い出しながら深いタメ息をついた。戦争が始まる前はお互い夢に向かって邁進していたのに今では人殺しの兵器を作っている。


“何でこんな風になったのだろうか?”そんな暗々たる思いを抱えながら格納庫に入ろうと扉に手を掛けると中から声が聞こえてきた。



「んッ?・・・こんな時間に誰が・・・?」



頭に?マークを浮かべながらも扉を開けて入る。スパイなんぞこんな場所に居る訳は無いし、浮浪者は入って来れる訳もなく、大方、技術者の誰かだろと思っていた予想は大きくハズレた。



「あッ、お父さん!コレがお父さんが作った飛行機?」



「ッて!バカ息子!お前どうやってココに入って来た!」



驚きの声を挙げた。何とそこには自分の息子が秋草のコックピットに乗り込んでいたのだから。



「こんばんは、おじ様」



「・・・お嬢ちゃんも何で家のバカ息子と一緒に居るんだ?と云うか一体何処から入ったんだ?」



呆れながら呟くしかなかった。この時の心中は察してくれ。



「これ位、お茶の子さいさいだよ。と云うかこれ位のカギなら釘でもあればチョチョイのチョイで開けれるし」



「それにです。しょっちゅうお夜食や届け物するので“届け物がある”と言えばココの人達は素直に通してくれましたですよ?」



コロコロと若いながら答える嬢ちゃんとバカ息子が自信満々な返答に頭を抱えて唸る父であった。



「それで。何でお嬢ちゃんと家のワルガキが一緒になってこんな所に居るのかな?(バカ息子、後でオシオキだ。逃げんなよ)」



頭抱えて唸っていたのから復活した息子と一緒になってコックピットにいる少女に聞いた。



「今日、父がコチラに来たと聞いたので無理を言って入れて貰ったのです。またお父様がおじ様に何か言ったと思い、誤りたくて。怒らないでやって下さいね?」



申し訳なさそうに言った。昔からこの子にこう言われると強く怒れない。



「イヤイヤ、お嬢ちゃんがそんな事しなくイイから。悪いのは全部このワルガキとあの大バカ野郎だから」



慌てながら、両腕をパタパタと振りながら言った。



「そうだよ。全部悪いのは家の親父達なんだから気にしないでいいよ」



「うるさいぞ、バカ息子。お前はお嬢ちゃんを見習ってもうちょっと慎みとか礼儀と云うものを覚えろ!」



「ワルガキ、バカ息子ってうるさい、バカ親父!大体、子供の頃からの付き合いの親友同士なのに、今だに意地張って仲の悪い親父達に言われたくない!」



「あッ、手前ぇ、親に向かってバカとは何だ!バカとは!大体、アイツとは小学校の頃からの付き合いだが仲良くなかったは!何かにつけて儂にケチを付けるイヤの奴だったよ!もしカミサンの妹と結婚でもしなかったら今でも仲悪いは!アイツと義兄弟なんて寒気がするわ!」



「おじ様・・・」



「あ~また始まったよ・・・」



少女はクスクスと笑い、息子はまた始まったよと頭に両手を組んでボヤいた。



「うるさい、バカ息子!」



「あッ、またバカ息子って言ったなこのクソ親父!」



息子と父がギャースカと言い合いを始め、ソレを見ている少女はコロコロと笑っていた。



「それで、父は失礼をしませんでしたか?」



父と子のによるどつき漫才が一仕切り終わるのを見計らないながら、笑い過ぎで目から出た涙を拭って聞く。



「あ~お嬢ちゃんには悪いがあのバカは戦争に憑り付かれているよ。アイツは昔は音速を超える事に夢を見てた技術屋だったのに今では復讐に憑り付かれたマッドサイエンティストだ」



昼間の事を苦々しく思い出しながら渋い顔を作って言った。



「叔父様、父をあんまり悪く言わないで下さい。確かに家に帰る事も滅多になく、私の言う事を何も聞かずにいてもあの人は父なのです。でも・・・最近、私の事を見てくれなくて、ちょっぴり・・・ほんのちっぴりだけ、寂しいです」



そう言い返した彼女は泣きそうな顔になりながら嗚咽混じり言った。その彼女を息子がポンポンと頭を撫でて慰めている。



(全くあいつは自分の娘に何て顔をさせてんだ。どうするか。何か手を考えなければならない。もう儂には時間が少ない。

説得は不可能。力尽くで分からすのもの無理。発想の転換。考えろ、考えろ。前提条件を覆せば・・・アッ)



そこまで考えてある考えが閃いた。コイツなら・・・・・・イケるか?



しかし、一歩間違えば全ておジャンだ。だが、どうせ長く無い時間だ。上手い段取りを付けて舞台を組んだなら・・・・・・頭の中で様々な考えを纏めあげながらお嬢ちゃんにある事を頼んた。








「お嬢ちゃん。一つ頼まれてくれないか?」

そして次話。




「お父様・・・コレ、おじ様から・・・」


娘から渡された一通の手紙。そこには驚愕の内容が書いてあった。


「……と云う訳だ諸君。一つドデカい花火を打ち上げてみないか?」


そして彼は動き出す。最後の檜舞台を組む為に。


次回「男達の夢の向こう(嘘タイトル)」COMING SOON!

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