緑の塔
私が目覚めたあの世界はまさにファンタジーの世界でした
ー緑の塔ー
私は海に近い街の生まれの極一般的な学生です、今日は海と芝生の公園でスケッチブックを片手に散歩をしていたら幾何学的で公園に似つかわしくない塔が建っていたようで…
周りの人には見えてないせいか、誰もが素通りをしていました。好奇心に負けた私は塔の扉へ続く階段を踏み出すと扉がひとりでに開き、目映い光に包まれて緩やかに意識を失っていったのでした。
「姉ちゃん、おい姉ちゃん!生きてるが?」
どれ程時間がたったのでしょう、声に気づいて目を冷ますと歪な鐘の付いた大きな時計とドームの硝子、そして…緑の肌に赤い目をした小さな子供?が倒れてる私を見下ろしていたのです
「え…あの…」
言葉も無く周りを見渡すと、青を貴重にした魔方陣の描かれた床の上に寝転んでいたようでした…どうしてこんな非現実的な物が…でも懐かしい気持ちになるんです
「おらはドンって言うだ、姉ちゃんの名前なんだ?」
「私は…水瀬さつきです」
「そーが」と言ってドンは私のスケッチブックをひったくり私にこう言ったのです…「この目に見える見えるもんが懐かしいだな?此は姉ちゃんの作り出した世界なんだべ」
私はにわかには信じられませんでしたが納得はいきます、この世界は私が描いたスケッチブックの中に描かれた物が全て入っていたのですから…
「さつきはおら達の母ちゃんであり神様見たいな存在だっぺ、まだその世界は途中なら…おら達の世界を広げて欲しいだ。まだおらと塔しか知らねぇでずっと寂しくて泣いてるべ…」
「なら…私はどうすれば良いのですか?」
「描いてくれ、そうすればまだ真っ白い世界も埋まるだよ」
この世界が本物か偽物か解りませんが…きっとこの世界が私の世界なら、色鉛筆とスケッチブックでどんな世界にもなるならまた白いページを広げて好きなものを積み込めば良い…
「ねぇ、最初の欲しいものは何ですか?」
「部屋と住民が欲しいだよ」
「じゃあ描いてみますね」
そしてこの塔からは彼女が色鉛筆でスケッチブックに描く手は止まらない、まだ目新しいスケッチブックが一杯になってボロボロになるまで、ずっと…