失恋
*失恋
「あ、あ、あたしのバカああああぁぁああああ!!」
滂沱の涙を零しながら、びゅんびゅんと風を切って盛りの頃にはそれはそれは綺麗な桜をつけてくれる桜道を駆け抜ける。
「うああああっぁぁんんん!!」
恥じも外聞も投げ捨てて、ただひたすらあたしは走る。
ので、ちょっとそこいくお嬢様、お姉様、紳士な方々。
見るに耐えない公害レベルのあたしの今の顔、許してください。
今、あたし、これ以上ないほどの失恋の、成り立てほやほやなんです。
あたしの不幸、まき散らかすことをお許し下さい。
「うわぁぁあああんんっ!!」
あたしの恋した相手は一つ年上の先輩でした。同じ部の先輩で、先輩はあたしの事を妹の様に可愛がってくれておいででした。
そりゃもう、妹レベルだって事は百も承知でしたとも。
先輩はいつもいっつも周囲にバレバレなほどに視線をある人に向けていましたから。
その相手もあたしにとっては先輩で。あたしの事をこれまた妹の様に可愛がってくれています。
二人揃って、あたしを可愛がってくれています。
そして、あたしを挟んで二人は二人とも、バレバレな感情を、相手に向けて、自分に向けられている感情にはこれっぽっちも足の爪の先ほどにも気づきはしませんでした。
大好きで、大好きで、大好きで、大好きな先輩の顔は思い溢れて日々曇っていく。
そんな大好きで、大好きで、大好きで、大好きな先輩の悲しげな顔なんてあたしは望んでないし、見たくもありません。
だからあたしはちょっとつつくだけでくっつく二人に、はりきって協力しましたとも!
あたしには二人の仲に割って入るなんて到底出来ないことだし、周囲に気持ちがバレバレな二人に隠れてひっそりこっそり周囲も欺くほどの演技力で気持ちを隠して、ちゃんとした妹を遣り通しましたよ!
今ならあたし、女優になれる! なんて自信すらついています。
お陰ざまで皆々さまにはおもりご苦労さん。なんて労われていたりします。
いえいえ、それほどでも! お兄ちゃんとお姉ちゃんのためですもんね!
なんて事も平気な顔して笑っていられるほどの面の厚さを標準装備で稼動していました。
そして、ついに、めでたく、あたしのちょっとしたおっせっかいで先ほど、めでたく、あたしの前で、ゴーオォルイン。
輝かしいばかりの二人の笑顔が目に焼きついて、焼き付いて、涙が止まりませんでした。
あとはお二人さんに! なんて気を使った振りをして、ただいまあたしのお城にもうダッシュで泣きかえる所です。
小さいながらも住めば都、一人暮らしのあたしのお城。
待っててね、涙君。
お家に帰ったら思う存分泣き喚いて、ごろごろして、ふて腐れようぜ!
すでに決壊している涙君に言い聞かせてこれ以上の洪水を必死で食い止める。
せめて、これ以上はと必死で湖レベルが海レベルへと進化する前に部屋にたどり着いてみせようとも!