第5話 先生
あたしがこの塾に来て一週間が過ぎていた。
そして笹本への恋心も次第に膨らんでいっていた。
「おはよー諸君。そして久しぶり!」
得体のしれない笑顔のきらきらした若者が教室へはいってきた。
あれっ?数学だよなこの時間?
「今週からは数学俺だから。知らない奴もいるだろうから自己紹介、、」
、、笹本もういないんだ。そっかぁ。
胸が締め付けられるように痛かった。
もう居ない。
授業が終わっても階段の下には笹本はいない。
あたしを心配してくれる笹本は居ない。
その事実は変わらない。
苦しい。
苦しい。
あたしこんなにも笹本が好きだったんだ。
今更気付くなんてあたし馬鹿だよ。
もっと早くから気付いていたら、、いつでも気持ち伝えられるチャンスはあったのに。
「いやー二週間きつかったけど今日からもう普通に出られるんだよね。」
「店長、あたしバイト辞めます。」
夕暮れの中チャリをすっとばしあたしは希望に燃えていた。
笹本あたしやってみる。取りあえず目標できたし。
―――春―――
大学の門をくぐるとサークルの勧誘者でいつぱいだった。
見覚えのある後ろすがたにほほ笑みながら近づく一人の女性。
「先生っ!!」
驚きながら振り向くあなたにあたしは飛び付いた。
驚いた顔していたその人は笹本。あたしをみていつかみたほほ笑みをした。
あたしの進路はまだ決まってない。だけど笹本と同じ大学に行って笹本に告白するっていう目標が出来た。
「あたしね、笹本に言いたい事があるんだけど、、、。」
どこか遠くでミーンとセミが鳴き始めるのが聞こえた気がした。