ピリカニズム―単位は"柱"です―
「今日もいい天気だ。」
煎れたての緑茶片手に、うーんと伸びをして、澄んだ青空に目を細めた。
うんうん、とても清々しく素敵な朝だと思う。
大満足。
ちーちゃん(彼女)は今頃、ラクダに跨がって悠々と出勤中なんだろうなあとか、これまた清々しく、頬を緩めて考えてたりした。
僕はピリカ・ココ・町村。
オレンジの髪にグレーの瞳をしていて、自分でも正直、何人なのかは既にわからない。
町外れのこの村で、占い師をやっていたりする。
最近の僕の興味は、お隣に住んでる眼鏡少年と、斜め向かいのニコチン中毒な彼女と、そのお隣の少しMっ気があると思われる美形な彼だ。
「ヒナコさーん。」
朝っぱらから堂々とニコチン中毒な彼女、渡辺ヒナコさん宅に了承なく乗り込んでいくMな彼、車谷ルビーくんの姿が見えた。
ああ、毎度のこととは言え、僕はわくわく…いや、はらはらしてしまう。
「ルビーてめ!あたしはまだ寝てたんだよ!」
「イタッ!…酷いよ、ヒナコさん…。」
外にまで響き渡るガシャーンっという音と、打たれ強いのかあんまりこたえてなさそうなルビーくんのちょっと気の抜けた声。
「今日も平和だなあ。」
呟いて緑茶を見れば、茶柱が立っていた。
「柱って、神様を数える単位だよね。」
てことは、僕の緑茶に一柱。
神様が降りたってことで。
「いいことあるかなあ、ちーちゃん。」
「え、僕は田中ウサギですけど。」
ちょうど前を通り掛かったお隣さんに、怪訝な顔でそう言われてしまった。