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多分欲しいのは愛ではない。
欲しいのは器でも心でもない。
貴女そのものが欲しいと言ったら、どんな顔で笑うだろうか。
夢中で滅茶苦茶にしていて、全く気付かなかった。
「ひとみさん、これ…。」
「え?…ああ、ちょっとね。」
無防備に背中を見せて少しだけ笑ったひとみさんの表情は見えない。
安っぽいベッドライトに生白く浮かぶ愛しい肢体。
視線を這わせた先、左肩甲骨下には、煙草を捻じ付けられたであろう火傷が、三つ程あった。
「どこが"ちょっと"なの?」
「大したことな…痛っ…。」
人差し指を当ててぐっと押せば、案の定思った通りの反応を返すひとみさん。
「痛いんじゃない。」
「それはそうよ、そんなことされたら。」
くるりと寝返りを打ってこちらを見たひとみさんが、苦笑混じりにそう言った。
こんな痕を付けられて、それでも尚笑うのか。
俺は、赤い花痕さえ許されないというのに。
「どうしたの。」
目を逸らした俺を覗き込む様にして、艶めかしい切れ長の瞳が見上げてくる。
「…何でも。」
細い顎を掬い上げて、貪る様に口内を犯した。
願わくは、この星がいつか俺に堕ちる様に。
朝も昼も夜も、俺だけのものである様に。
腕の中で淫らに啼く幻想だけでなく、永遠になる様に。
「…愛してるよ。」
快楽に引きずられていく瀬戸際で、小さく小さく、愛を囁いた。