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主催の短編投稿企画『酸欠』投稿作品を転載。
企画テーマは『調味料』テーマは『味噌』でした。
今日も荻窪は晴れていた。
「味噌食べたくなる空じゃないですか?」
「青いのに?」
「青は味噌ですよ」
そもそもが味噌食べたくなる空ってのがよくわからないが、深雪は味噌を食べたいらしい。
てか、味噌食べたいって何だ。
窓から覗く空は青い。
そして、冷蔵庫をがさがさと漁った深雪を視界の端に捉えていれば「じゃーん、味噌でーす」とか言って、本当に味噌達が登場を果たした。
「味噌『達』ね」
「味噌です」
「複数系でしょ、てか何で味噌がそんなに」
いつの間にか同居人と化していた深雪は、いつの間にか冷蔵庫を掌握していた。
そして、いつの間にか味噌コレクションをしていたらしい。
「で、何作ってくれんの」
「食べ比べじゃだめですか」
「味噌の?」
「味噌の」
何で味噌だけなのと聞いたら、味噌って高いんですよと当然に返される。
つまり、
「味噌に食費をはたいたわけね」
「だって味噌ですよ」
「そりゃ味噌だけども」
調味料として活躍してこその味噌だとは思うが、しかし、空の青に立ち向かわんばかりのそれらは、深雪の前で堂々として見えた。
たかが味噌なのに。
しかしながら、これだけの味噌ならば、深雪がその頭上に掲げる味噌より内容は濃いことだろう。
「人生って深いね」
「何の話ですか」
「味噌の話」
「ニュアンスが……」
「味噌の話だよ」
言い切る。
「腹減ってきたじゃんか」
「味噌がありますって」
あんたにもあればよかったのに。
そうは言わずに食べた白味噌は、思ったよりも濃厚だった。
「甘く見てた」
「意外と濃厚じゃないですか?」
「あんたと違う」
「だから、何の……」
「味噌の話だよ」
絶対違うと首を捻る深雪と味噌を見比べて、食べた白味噌は、何と驚きの八百九十円だった。
「高い!」
「白味噌バカに出来ないですから」
「あんたと違う」
「だから何が……」
さて、明日からの飯をどうしようか。