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末っ子エミリアーナ  作者: ぱんどーる


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23

あれから月日が過ぎて、私は20歳になった。


商売関係では、お祖父様が描いた2頭身キャラを、10枚で1つのセットにして販売し、購入した人が好きなように色を塗って楽しめるようにした塗り絵が大ヒット。


幼い頃、アンジェ様がアリア叔母様に相談していたドレスを作り、マスコット人形を着せ替え人形としても楽しめるようにして販売したら、こちらも大ヒット。アンジェ様も「望み通りのドレスを作ってもらえて最高だわ」とノリノリでデザインを送ってくる。


次に、メイから謝罪の場が欲しいと言われ、2人で会って話をした。


「僕はエミリアーナの事が大好きだったのに、僕から父上にお願いした婚約だったのに、侯爵令嬢に唆されてごめん。あの、やり直せないかな? 本当に大好きなんだ」


そう言われたが、お断りした。


ご令嬢にアーノルド殿下と私が相思相愛なのに、メイが邪魔してると言われて信じてしまったらしい。それを聞いて更にムリと感じた。いつも近くにいたメイなら、私とアーノルド殿下が2人でいたところを見たことなんてないし、殿下が私に好意を持っていたとしても、私が殿下をそういう対象で見たことはないのを見ていたはずだから、そもそも相思相愛が成立しない。それを突然現れたご令嬢の言葉を信じて、仮だとしても8年も婚約していた私には、何も問いかけてはくれなかった。

これからは親戚として仲良くしようと伝えた。


婚約解消後メイは、ロデリック伯父様とエル兄様から鉄拳制裁を受け、ローレンス伯父様と私のお父様からは、長時間の説教をされたらしい。


ご令嬢はアーノルド殿下に何度もアタックしたが、なびく気配が全くないので仕方なく諦め、アーノルド殿下に紹介されたメイに乗り換えながら、多くの男子生徒と仲良く過ごしていた事がバレた。学園の風紀を著しく乱したとして、ご令嬢は退学させられた。そしてなんと、姉エーメリーが嫁いだ伯爵家へ第3夫人として嫁いで行った。


そんなことがあった後、陛下から呼び出しを受け、王宮に行くと、待っていたアレクシス様とアーノルド様に私への想いを打ち明けられ、婚約しようと言われたが、こちらもお断りした。よそ見をせず、婚約者と仲良くお過ごしくださいと伝え、陛下にはこの件で王命は使わないでと訴えると、


「そんな事は絶対にないから安心しろ。ただ彼奴らの望みを完全に断って欲しくて内密に呼んだ。くくっ、秒でバッサリと断ってくれて助かった。この件は他言無用で頼む。何か望みがあれば言ってくれ」と感謝された。


お父様から縁談が結構きてると言われ、面倒だったが見合いもした。誰にも心がときめく事もなく、だからといって妥協することもできなかった。断りづらい方々の申し込みには、陛下の力をお借りした。


エル兄様から謝罪されたが、あの時は私の態度も悪かったから、こちらからもきちんと謝罪をして、ぎゅっと抱きしめあった。ブラコン、シスコンの関係は継続中である。


アンジェ様の結婚式に招待され、イーブンに行った。とても豪華な結婚式で、2人とも幸せそうな顔をしていて私も幸せな気持ちになった。アンジェ様と短いが話をする時間を与えられた。しかし時間内でお互いに話したい事が終わらず、メイドが何度も「もう時間です」と言っても話し続け、怒ったイライアス様が登場するまで続いた。


その時のパーティーで、エル兄様に同行していた影さんに誘われて1曲踊ることができたが、曲が始まってからしばらくの間、無言で見惚れてしまった。影さんも無言で私を見下ろし、ステップを踏んでいた。


「・・・久しぶりね、影さん」

「・・・そうですね。またお綺麗になられましたね」

「ふふ。今日は気取ってるのね」

「主の顔に泥は塗れないのでね」

「ねぇ、今日は飲んでないけど、やっぱり好き」

「っ、相変わらずいきなりだな。俺の事を何も知らないのに好きなの?」

「あ、そういえば知らなかったわね。名前を教えてもらえるかしら?」

「ったく・・・ヴィンセント・テールだ」

「ヴィンセント・・・とても素敵な名前ね、影さん」

「はは、そりゃどーも」

「ふふ」


この会話をしただけで曲が終わってしまった。


エル兄様やお父様達は、結婚式が終わるとすぐにアーブンに帰ったが、私はアリア叔母様と観光をしたり、流行りのリサーチをして楽しんだ。


その後、アーブンに帰ってからもアレクシス様の結婚式、次はエル兄様の結婚式とお祝いごとが続き、影さんと踊ることはできなかったが、少しだけ会話することができた。


「よう、元気か? お嬢」

「び、びっくりしたぁ」

「くくっ。相変わらずエスコートは父親なんだな」

「・・・悪かったわね」

「・・・まだ気持ちは変わらないか?」

「え? あ、うん。好き」

「くくっ。軽すぎだ。なあ、今度ーー」


そこまでで影さんは呼び出しを受け、「悪い、またな」と私の頭をポンとしてから消えてしまった。

何を言うつもりだったんだろう。


それからあっという間に、アンジェ様が第1王子殿下をお産みになり、アレクシス様も第1王女殿下が誕生した。先日はエル兄様の所もマリアンナ様がご懐妊されたと報告があった。


皆からの幸せな報告がどんどん続き、私もほっこりとした気持ちになる。けど、それと同時に、私は皆と違って立ち止まったままなのかもしれないと、どうしようもなく気持ちが不安定になることもあった。


何かを察したメイが訪問してはお茶に誘ってくる。メイは婚約解消後の方が積極的に気持ちを伝えてくる。後継ぎなんだからちゃんと婚約者を探せと言っても、


「エミリアーナが心配なんだ。もう皆それぞれに家庭を持って、今までのように気軽には会えない。僕くらいは身軽でいたいんだ」


気持ちはありがたいが、後継ぎがいつまでもフラフラしてるなんて、ロデリック伯父様が心配しているのではないかしら?


「あのね、メイ。私、好きな人がいるの」

「え? そ、そうなの?」

「うん。片思いだけど。婚約解消した頃からだから、もう3年になるのかな」

「・・・そっか。モテモテだったエミリアーナが好きになった人か・・・それは気になるね」


モテモテなんて・・・。 あ、アレクシス様とアーノルド様? それにメイ? ふふ、身内ばかりじゃないの。

それにどんな人か教えたくても、名前しか知らないから気になられても私が困るわ。なんて思っていたら、


「メイナード殿が気になる相手は俺だよな? お嬢?」


影さんが、影の能力を使って、突然陰から現れた!

久しぶりの影さんはやっぱりチャラく見えたし、チャラく登場したけど、私の胸は高鳴った。


「か、影さん!」

「優しい元婚約者と元サヤか? お嬢、チョロすぎるだろ?」

「っ、違うわ!」

「なら、今からは俺との時間にしてくれるか?」


手を伸ばしてくる影さんに、自然に私の手が伸びる。


「メイ。予定ができたからごめんね」

「あ、ああ。う、うん。またね」


突然現れた人と手を繋いで歩き出す2人の背中をみつめ、


「あれは誰だろう? でもエミリアーナは幸せそうな顔をしてたな・・・。そっか、やっぱり僕じゃダメだよね」


寂しそうに呟くメイナードがいた。



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