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末っ子エミリアーナ  作者: ぱんどーる


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1

エミリアーナ・ルルーは、母方の祖父と街を散策していた時に誘拐された。


私はついでで標的はお祖父様だった

子供なのに容赦なく暴力を振るわれ、ここで人生は終わったと私は思った。誘拐犯は私を痛めつけ、お祖父様に言うことを聞かせることを目的としていた。


お祖父様の悲痛な叫びは今でも覚えている。


あまりの容赦のなさに生きる事をを諦め、痛いと声をあげる気力もなくなり、泣く力も無くなった頃、やっと助けが来た。誘拐犯はあっという間に拘束され、騎士団に連れて行かれた。


私の顔は腫れ上がり、歯も何本かなくなり、体は全身骨折の為あちこちが変な方向に曲がり、その上内臓の損傷もあり。あまりの痛みに意識を飛ばす事もできなかった。運び込まれた病院で、処置に慣れているはずの医師や看護師でさえも悲鳴をあげた。


半年間入院生活を送ることになった。お祖父様はとても陽気で面白い人だったが私の事がトラウマになったのか、塞ぎこむようになってしまったそうだ。私の見舞いにも1度も訪れる事はなかった。


私の家族は父、兄、姉、兄といたが、父が見舞いに来たのは入院してからひと月以上が過ぎた頃だった。兄姉兄たちは次の日に見舞いには来たが、私の容態を見て、長兄と姉は奇声を上げ意識を飛ばした。それ以降、見舞いに来ることは1度もなかった。次兄は私の悲惨な状態に体を震わせ、顔をこれでもかと歪めたが、倒れる事はなく、週に1度はお見舞いに来てくれた。


皆が寝静まった深夜に1度だけ人の気配がした時があった。


熱がおさまらず、息も荒く寝ようとしても眠れない状態だったが、その人が私の額に手をあてると不思議と呼吸がしやすくなった。


あれは誰だったのだろう。


それからどうにか人型に戻り、リハビリも終えて歩けるようになり、退院して家に戻ってからの生活は、やっぱりいつも通りだった。


いつも通りというのは、


長兄に無視され、姉は顔を合わせる度に文句を言うということである。


次兄は居合わせると私を背にかばい、姉に対抗してくれるのだが、勝てた試しはない。


「ったく、毎度毎度よく飽きないな! クソが」


姉がいなくなると、暴言を吐いた後に必ず私をぎゅっと抱きしめてくれる。私も次兄エルウィンの背に手を回し、エルの胸に頭をぐりぐりと押しつける。


「エル兄様、ありがと」


以上がいつも通りだ。


だが退院して、いつも通りからはずれた事も起きた。


それは父が帰ってくるようになった。


我が家の父は子爵位を賜っているが、領地はなく収入は父が経営する商会の売り上げがメインだ。家族を養うために頑張ってるらしく、家に帰ってくることは少ない。


お母様が亡くなってから更にお父様は帰ってこなくなった。兄と姉が私を嫌うのはお母様が私を産んですぐ亡くなってしまったから。これは毎度姉が言うセリフだ。それに加え、私とエル兄様だけがお父様とお母様の色を受け継がない金髪碧眼だからだ。兄と姉は明るい茶髪に緑色の瞳。これはお母様の色。お父様は茶髪に茶色の瞳。


だったらお母様の不貞では?


何故お母様は恨まれず、私とエル兄様はこんなにも嫌われるのだろう。いつも不思議だった。

家に帰らないお父様の事を知り、心配してたまに訪問されるお父様の兄の伯父様が金髪碧眼だからか、長兄と姉は怪しんでいるが、態度には出さないようにしているのは、きっとお土産を期待してるから。そんな伯父様は今だに独身だからか、私達を可愛がってくれている。


お父様は帰って来て、子供達の雰囲気が良くない事に驚いて、1人ずつ執務室で話をする事になった。


上の3人とどんな話をしたか分からないが、私の順番がきたので執務室に入ると、お父様はだいぶくたびれていたが、私を見て驚いた顔をした後、ハグをしようと両手を伸ばしてきたが、無視して椅子に座ると、「え?」なんて言って固まっていた。


私からすると何を今更?って感じなのだ。


お父様に会うより伯父様の顔を見ることの方が多かったくらいに顔を合わせた回数が少ないのだ。


とにかく言いたいことは全部言った。


お父様の子供ではないのなら平民で構わないからこの家から出たい事。長兄とほぼ会話をしたことがない事。姉とは会う度に文句を言われる事。エル兄様は優しい事。使用人や執事も兄と姉には従順だが、私の時はすぐ返事をしない、躊躇うこと、嫌々やらされてる感を出すこと。


お父様はあんぐりと口をあけて聞いていたが、私が話し終えると、勢いよくこちらにスライディング土下座をしてきた。


「ごめん。君のことを放っておきすぎた。これからはちゃんとする。本当にすまない」


それでも私には何も響かなかったので、黙っていた。


おそるおそる顔を上げたお父様は涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにして汚かった。


すんとした私の態度に、更に涙を流したがすぐハンカチを取り出して顔を拭き、


「君は私の子供だ。間違いない。明日からは必ず生活を変えてみせる」


と、真面目な顔で訴えてきたが、やはり私には何も響かなかったので「そうですか」と応え、立ち上がった。


呆然としたお父様の姿が目に入ったが、何も気にならなず、部屋に戻った。




これら誘拐から父親のスライディング土下座までの件は、エミリアーナが6歳の時の出来事である。

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