吟遊詩人追放譚〜自由になったのでこれから世界を滅ぼしたいと思います〜【供養作品】
冒頭は作ったが、中身が考え付かなかったので一旦供養。
朝っぱらから叩き起こされた。この時期はまだ朝は寒く薄暗い。眠りを妨げられた不快感に顔をしかめつつ窓の外に目を遣ると、まだ日も登っていなかった。
一体、何の用事だろうか。今日は休みだとリーダーのカランコエが言っていたはずのに。
「悪いな、わざわざ来てもらって」
私を出迎えたのは副リーダーのリンドウだった。どっかりと談話室の椅子に腰掛け、私を見るなり青色の目を細め意地の悪い笑みを浮かべる。
高い位置で二つに括った紫色の髪がさらりと揺れた。
剣士の彼女は私の事を良く思っていない様で、何かあればすぐに突っかかってくる女だ。
「どうぞ、こちらに座って」
と、私をリンドウの向かい側の席に促すのは、ペチュニア。彼は聖十字教の司教で、パーティの回復と蘇生役を担っている。
彼は神経質で生真面目。なので、のんびり屋の私とは気が合わないらしく、表立って突っかかってこないものの、回復や追加効果を私にかけてくれない。
「見張っとくから、さっさと始めて」
出入り口の付近に立ち、周囲の様子を伺っているのは魔術師のフリージア。彼女は魔術教会に所属する上級の魔術師だ。パーティ内では主に後方で魔法による攻撃や支援を行う。
彼女がそこに立っているのは、外部からの干渉と私の逃亡を妨げるつもりだろう。
「では、手っ取り早く話す」
リンドウは私に告げる。
「お前を、このパーティから追放することにした」
「……ふぅん」
さして驚きもしなかった。
軽い返事をした私に、リンドウは少し驚いた顔をした。
「それだけか? 何も言わないのか?」
「言うことなんて、何もないよ」と、私は肩をすくめる。
「これがお前たちの決めたことなら、そうなんだろう」
ペチュニアが咳払いを一つして、静かに口を開いた。
「これは皆で話し合った結果だ。お前の行動がパーティの結束を乱していると判断したからだ」
「行動、ね。」私は苦笑いを浮かべる。「それがどんな行動だったのか、教えてもらえるかな?」
「それは……」ペチュニアが言葉を詰まらせる。
リンドウが割って入った。
「要は、お前が我々の理念と合わないってことだ。特に、昨日のダンジョンでのお前の独断専行は許せない」
昨日のダンジョン探索での一件。確かに、私はみんなが迷っている間に独自の判断で先に進んだ。だが、それが結果的にパーティを危機から救ったのだ。
「それが、追放の理由か。だとしたら、私は納得できないな」
「納得するかどうかは問題じゃない。私たちはもう決めたんだ」フリージアが冷たく言った。
私は席を立つ。「分かった。なら、もうここには用がない。ただ一つだけ、確認しておきたいことがある」
リンドウが眉をひそめる。「何だ?」
「私が追放されるのはいい。だが、もしこれからお前たちがピンチに陥ったら、助けを求めるなよ。私はもう、ここにはいないんだから」
その言葉を残して、私は談話室を出た。後ろから聞こえるリンドウの舌打ちと、ペチュニアの沈黙、フリージアの冷たい視線を感じながら。
外はまだ薄暗く、冷たい空気が肌に触れる。だが、その寒さは、私の心の中の何かを焼きつけるようにも感じた。これからどうするべきか、次にやるべき事を考えながら、私はゆっくりと歩き始めた。