あの時の彼等に起きていたこと。7
「錬金術師のネイ=サン?」
「そうよ」
少女……ネイからは短く肯定されたが、オレは素直にその肩書きを受け入れられなかった。なので尋ねてみると?
「す、すまない……錬金術師というのは、その……職業のことを差すなのかな?」
「職業? まぁ、いわれてみたらそうなる気もしないけど……よかったら説明しようか?」
「そうだな。よろしく頼むよ」
「では……コホン!」
ネイは軽く咳払いをすると、胸を張って得意そうに喋り始める。
「錬金術師とは、既存する科学や物理等を含めたあらゆる観点から知識の追求と探求を行う偉大なる存在になるわ」
「な、なるほど……ずいぶんと凄いだな。教えてくれて助かったよ」
「どういたしまして」
「それで、その偉大なる錬金術師であるキミは何を狙ってるんだい?」
「え?」
「惚けなくてもいい。キミみたいな利口な子が、見ず知らずの者を……しかも、複数人を親切心だけでわざわざこんな屋敷にまで連れて来たとはとても思えない……違うか?」
この疑問に対し、彼女は小さく息を吐いて答える。
「……リュウイチだっけ? アナタ、案外勘がいいのね」
「まあな。これでもそれなりの人生を送ってきた大人だ。勘の一つや二つは働くさ」
「そう……なら、じっくり話をしたいから別の場所へ移動しましょか?」
「ああ、そうしてくれ」
ということで、オレは明美に適当なこと訳を伝えてネイと共に二階の右奥一つ手前の部屋へ向かう。
「入って」
言われて中に入った先には二人かけのソファーがテーブルを挟んで置かれており、オレ達はそれぞれに向き合って座った。
「――――さてと……まず最初に告白するけど、アナタ達がこの世界にやって来たのはアタシのミスが原因よ」
「なっ!?」
唐突の暴露に、オレは素直に驚くしかなかった!
「アナタ達がこの世界へやって来た時、アタシはある目的のために錬金術の実験を行っていたわ」
「ある目的? 何だいそれは!?」
「家族との再会よ」
「!?」
この瞬間、脳裏には図らずも例の記憶が甦る。
「そ、それって…….キミが住んでいたという家にあった写真の人達を言ってるのか? 確か、父親と母親に娘……それと赤ん坊が写っていたと思うが?」
「覚えてるなら話が早いわ。アナタの記憶通り、アタシはそこに写っていた家族……弟との再会を望んでいる」
「弟? 両親とは会えなくていいのか?」
「彼等はとっくに亡くなっているから無理よ」
「そ、そうだったのか、余計なことを訊いて悪かった」
「別にかまわないわ」
そう言われても、さすがに親が死んだと聞かされては胸にくるものがある。
「……では、弟との再会というのは? 事情があって離れて暮らしてるのかな?」
「離れてはいるわね。そもそも住んでる世界が違ってるから」
「住んでる世界が違う……まさか!?」
「そっ、弟はアナタ達の世界にいる。だからアタシは……」
「ちょっと待ってくれ!」
オレは慌てて話を中断させた!
「キミの弟がオレ達の世界にいるだって!? それって……!」
「アナタ達とは逆になるわね」
「…………!!」
何てことだ。彼女の言ってることが正しければ、“弟”というのはやはり……い、いや! そんなことがあってたまるか!!
「……話、続けても?」
「あ、ああ……やってくれ」
「アタシは弟と再会するため、“賢者の石”を使って二つの世界を繋げた。そして……」
「待ってくれ。度々話を中断させるのは謝るが、賢者の石とは何なんだ? それに二つの世界を繋げるというのも一体!?」
「そうね、石についての説明がまだだったわね。賢者の石とはアタシ達の一族に代々受け継がれる秘石。如何なる願いをも叶える力があると伝えられてるわ」
「願いを叶える力? そんなものが!?」
「事実よ。因みに大昔には、石の力を使って王にまで上り詰めた者だっていたらしいわ」
「王……それ程の力が……」
「ただ残念ながら、死人を生き返らせることはできなかったけどね」
「できなかった? 試したのか?」
「試したわよ。両親で……」
「そ、そうか……」
確かに、そんな石があれば試さない訳がないだろう。
「じゃあ、二つの世界を繋げるというのは……可能だったのか?」
「可能よ。アナタ達がここにいるのが良い証明でしょ?」
ごもっともな意見だ。
「それで話を戻すけど、当初の予定では弟だけをこの世界へ転移させるつもりだった。だけど、いざ弟がいる位置を特定してこっちの世界へ転移させようとした時、弟の周囲にはあまりにもたくさんの人達が密集していたの」
「たくさんの人達が密集……渚崎高校の入学式か!」
「状況確認を怠るというミスを犯した結果、石の力に狂いが生じて転移させる範囲が弟以外にまで広がってしまい……」
「オレ達のような関係のない人間までもを、こっちの世界へ……そう言いたいんだな?」
オレがそう問い詰めると、ネイは無言でソファーから降りて床に膝を着く。そして、申し訳なさそうに頭を擦りつけながら……
「ごめんなさい!全てはアタシの責任です!!」
全身を震わせ、涙を流して己の罪を謝罪する姿を不様に晒すのであった。




