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シルベ=テルミチのチートナシ異世界ライフの物語  作者: なめなめ
第八章 家族
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シルベの昔話3

 最後の大会から一ヶ月が経った昼下がりの日曜日。既に部活を引退して受験生になった身のオレは、自宅のリビングにあるソファーにて穏やかな夢の世界は堕ちていたが……


「ちょっと輝道(テルミチ)。そんなところで寝ていたら邪魔よ」


 しかし、突如何者かの声によって意識を現実へ引き戻されてしまうことに。


「んにゃ……?」


 目覚めたばかりの(まなこ)で見上げたその先には、(ほこり)でも払おうとしていたのか、はたきを手にした母親が仁王立ちしていた。


「ああ……母さんか……ごめん、今退くよ……」


 オレは掃除の邪魔になるだろうと、仕方なく別の場所へ移動しようするが?


「待ちなさい輝道!」

「え?」


 呼び止められて振り向くと、先程の姿のままの母さんが怪訝(けげん)そうに口を開いた。


「ねぇアナタ、自分の立場がわかってんるの?」

「立場って?」


 言われてる意味がわからずにキョトンとしてると、母さんは呆れたように続ける。


「はぁ、アナタは仮にも……いえ、正真正銘の受験生なんでしょ? こんなところでダラダラと昼寝していていいものなの!?」

「あ~」

「『あ~』じゃないわよまったく……」


 さらに呆れる母さんは「やれやれ」と頭を抱えて嘆く。


「……それで、進路は決まってるの?」

「進路って?」

「輝道ぃ~!」


 うっ、これはちゃんと答えないと本気で怒られそうだ!


「わ、わかってるよ! 高校のことなんだろ?」

「ええそうよ……っで、どこの高校を受験するつもり?」

「ど、どこって……」


 一応は二、三校程は考えてはあるが、どれも一般的には滑り止めとして受けるようなレベル。よって、それらを本命にしてるとなかなか言い出せないでいたら……


「そうだ! まだ決まってないなら渚崎高校(なぎささきこうこう)なんてどうなの? あそこなら家から近くて歩いていけるわよ?」

「近いって……あのね母さん。いくらオレでも、自分の人生を左右しかねない受験先を“近い、遠い”くらいで決めたりしないよ?

 それに、そもそも渚崎高校はかなりの名門校。とてもじゃないけど、オレの成績では無謀過ぎるよ」


 言葉にした通り、確かに渚崎高校は優れた名門高校だ。特に“進学、就職”の道を進む上での学科や資格へのサポートが充実しており、入学さえできればある程度の安泰(あんたい)した人生が手に入るさえいわれてる。

 ただ……それだけに競争率は高く、毎年多くの受験生が泣きをみているのが現状なんだけど……


「ふぅ……あのね輝道? “無謀”なんて後ろ向きなことを言うけど、アナタが普段からちゃんと勉強さえしておけば……」

「ちょ、ちょっと、タンマ!」

「何よ?」


 まずいな、このままだと二時間は説教コースだ。そう考えたオレは……


「ご、ごめん母さん。今日は図書館で友達と勉強する約束をしてたんだった!」


 咄嗟に思いついた嘘を使ってこの場から逃れようと画策。


「図書館で友達と? ふ~ん……まぁいいわ。それなら帰りに玉子と牛乳を買って来てくれるかしら?」

「あ、うん。了解」


 そして、どうにかこのピンチを脱することに成功するのであった。


「――――さてと……逃げ出したのはいいけど、これからどうするかな? 本当に図書館で勉強するってのも手かもだけど……」


 宛もなく人通りがまばらな商店街をブラついていると、突然背後から声が……


(しるべ)……君?」

「!?」


 ゆっくり振り向くとそこには?


「橘?」

「やぁ!」

「驚いたな。まさかこんな場所で出会うとは!」


 思わぬ偶然に驚くなか、橘はなぜか神妙な顔をしていた。


「どうしたんだ? 何か暗い感じするけど……どこか具合でも悪いのか?」


 この質問に橘は首を振って……


「いや、特に何もないけど……それよりも導君。今って時間あるかな? ちょっと話したいことがあるんだ」

「話?」


 雰囲気的にいって「一緒に遊ぼうぜ!」っていう訳でもなさそうだが、別に断る理由もないので取り敢えずは了承する。


「ああ、いいぜ。じゃあその辺の……」


 ここはスマートに「その辺の喫茶店で話そうか?」と続けたいところだが、あいにく財布の中には卵と牛乳が買える金しかないので……


「その辺の公園で話そうか?」


 ――――数分後、オレ達は適当に近くにあった寂れた公園へ移動すると、そこにあったベンチへ一緒に腰を下ろす。


「っで、話ってのは?」

「うん……じつは、キミに謝りたいことがあってね」

「謝りたい? お前、オレに何かやったか?」


 覚えがないことなので首を傾げていたら、橘は再びあの神妙な顔で話しかける。


「いや、“何かした”と言うよりも“何もしなかった”という方が正解かも知れない」

「何だよそれ? ずいぶんと回りくどい言い方だけど?」

「ハハハ、回りくどいか……そうかもね。だったら単刀直入(たんとうちょくにゅう)に言わせてもらうよ」

「おう! どんと来い!」


 何を話されるかは知らないが、取り敢えずは胸を力強く叩いて相手の告白に備えた。


「……ボク達の最後の大会……覚えてるよね?」

「え、そりゃあ……まぁな……」


 予想だにしない話題には少し戸惑ったが、それでも一応の相づちだけを打つと?


「すまなかった」


 あろうことか、橘はいきなり土下座する!


「お、おい、橘! お前、何やってんだよ!」


 慌てて止めようとするも、当の本人は頑なにこれを拒否。そして、その体勢のまま自らの想いを伝えようとする。


「すまなかった……キミの……キミの努力を無駄にしてしまって……」


 謝罪……というよりも懺悔に近い印象を受ける橘の言葉と行動。意味がわからないオレは、ただただ困惑するしかなかった。

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