遊びにいきたい!
例の事件から一週間。黒いフードから狙われてる可能性があるオレとネイさんは、騎士団による保護の名目の下、建物二階にある一室を与えられて生活をしていた。
ただこの生活……衣食住自体は完全に保障されてるものの、都合上どうしても活動できる範囲が騎士団の敷地内に定められている。よって最近は密かに不満を抱えていたので、思い切ってある人物に相談してみた。
「――――遊びに行きたいだってぇぇぇーーー!?」
大声をあげて憤るのは、この生活が始まって以来毎日差し入れをしてくれるある人物ことバーバラさん。
「シッ! 声が大きいわよバーバラ!!」
「バーバラさん! 押さえて、押さえて!」
オレ達はどうにか彼女を宥め、話を元に戻す。
「あきれたわ……いくら日頃の鬱憤が溜まってるからって、アンタ達は自分の立場がわかった上でそんなバカなことを言ってるの!?」
厳しいお叱りを受けるも、オレ達はそれでも食い下がって現状を訴える。
「ス、スミマセン、バーバラさん。でも、こんな生活が一週間も続いたらさすがに堪えますって!」
「そうよそうよ! アタシだって気が滅入り過ぎて、まともに錬金術の研究ができなくて困っているのよ!」
ただ、これを聞いていた彼女は呆れながらにタメ息をついて……
「はぁ……この際まじめに意見を言わせてもらうけど、そもそもアンタ達はいつ何時に黒いフードから狙われても不思議じゃないのよ?」
「そ、それはわかってるわよ。でも……」
「“でも”も“ヘチマ”もない! そもそも本当にわかっているなら、ここで大人しく世話されてばいいでしょ!!」
「ええーーー! そんなぁーーーー!!」
「わがままいわない!!」
激しく一蹴。なので今度は、ネイさんに代わってオレが別の形で攻めてみることに。
「バーバラさん。元騎士団団長だったアナタに敢えて訊ますけど、仮にオレ達が外に出るとしたら方法はあるんですか?」
「はぁ?」
表情は明らかに怪訝だ。
「テルミチ……そんなつまらないことを知ってどうするつもり?」
「え、そんな怪しむような目で見ないでくださいよ……オレはあくまでも、純粋な好奇心として聞いただけなんですから……ね?」
「ふ~ん、純粋な好奇心ね……まぁいいわ。一応教えてあげるわ」
「あ、ありがとうございます!」
バーバラさんは、やれやれと応じる。
「まず最初に断っておくけど、保護されてる身で外出することは原則的にいって不可能。だから、それを承知した上で聞くようにね?」
「ハ、ハイ、お願いします!」
「よろしい……っで、要望……つまりは外出のことだけど、それを叶えたい場合は特別な許可が必要になってくるわ」
「特別な許可? 誰かにもらえたりするんですか?」
「もらえるわ。騎士団団長のポールから……」
「ポールさんからですね! それじゃ、さっそく……!」
直ぐ様に行動を起こそうとすると……
「ちょっと待った! 話にはまだ続きがあるわよ」
「続き?」
「ポールからの許可は当然だとして、他にも二人の騎士からの許可が必要になるの!」
「二人……ということは、合計で三人分の許可が必要になる訳ですか?」
「そうなるわね」
「残り二人か……」
だとすると彼等はどうだろうか?
「ゲルトさんとワイマンさんでは?」
「あの二人なら問題ないわね」
よかった。二人と知り合っていて。
「……けどね、問題はどうやってその三人から許可を得るかよ」
「どうやって……バーバラさんのお力添えで何とかなるってことは?」
オレはチラリと目配せをしてみたが?
「言っておくけど、私はアンタ達が外出には反対の立場だから力を貸さないわよ」
淡い期待は、あっさりと水泡となって消えてしまう。
「で、では参考までに……三人の許可が必要になる理由はあるんですか?」
「もちろんあるわよ」
「といいますと?」
「そもそも被保護者を外出させるということは、無条件でその者を危険に晒す行為になりかねない。だから、許可を下す者にはそれ相応の判断が求められる。だから……」
「だから、その判断を多角的にする意味で三人分の許可が必要になる訳ですね?」
「正解。さすがはネイの弟ってとこかしら?」
「ハ、ハハ……そう言ってもらえて光栄です」
本当は弟じゃないけど。
「あれ? じゃあ三人からの許可を得るのは……」
「そういうこと。判断には責任がつきまとうから、彼等が許可を下すのはなかなか一筋縄では……」
「案外イケるかも知れない!」
「え……」
ここでバーバラさんが「そんなバカな!?」とした表情で驚こうとするが、それよりも早く……
「シルベ! “イケる”って、彼等から許可が得られることができるの!?」
「ええ。確証はありませんが、やってみる価値は十分にあると思いますよ」
「すごい! それでこそ、アタシのかわいい弟だよ!!」
ネイさんが諸手を上げて喜ぶ。
「じゃあ聞かせてくれる? 三人の騎士から許可を得る方法を!」
「ハイ、それはですね……」
いつまでも続くかわからない退屈な日々。そんな日々を一時でも払拭したく、オレは頭の中で描いたばかりの作戦を期待の眼差しを向けてくる彼女へ説明するのであった。




