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シルベ=テルミチのチートナシ異世界ライフの物語  作者: なめなめ
第一章 消える世界
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変わる世界

 人々が消える入学式の会場から無我夢中で逃げ出したオレは、当てもなく町をさ迷っていた。だが、やがて……


「はぁ、はぁ、そ、そうだ……もしかして家に帰れば、父さんと母さんがいつもみたいに出迎えてくれるんじゃ……」


 現実逃避ともいえる妄想に取り憑かれ、急いで自宅へ戻ることを選択する。


 途中、視界からは()()()()()消えていくのが否が応も目に入ったが、それ等は全ては振り切って全力で走り抜けた。

 そして、ヘトヘトになりながらも我が家にたどり着くと、淡い期待を抱えたまま玄関のドアを勢い良く開いた。


「父さん、母さん、ただいまぁーーーー!!」


 家中には十分に届いたはずの大きな声。しかし、それを聞いて現れるのはずの両親の姿はどこにもなかった……


「ハハハ、やっぱりな……」


 本当のことをいえば、期待なんてもの本気で抱いていた訳ではない。


 知っているんだ。

 両親が……父さんと母さんが消えたことを。


 知っているんだ。

 両親が……父さんと母さんがいなくなったことを。


 知っているんだ。

 ここには()()()()()()()()


 どうしようもない現実を改めて突きつけられ、頭の中は絶望で一杯になる!


「何だよ……何なんだよ! どうしてこうなったか、誰か教えてくれよ!!」


 誰もいない家の中で泣き叫んでも、返事が返って来なかった。


 ――――どれくらいの時間が過ぎただろうか? どんなに願っても、どんなに祈っても、両親が消えたという現実が変わらないことをオレは悟る。


 そう、この現実は認めるしかないのだ。


「ふぅ……これからどうすればいい?」


 両親のいない家にこのまま(とど)まり続ける? それとも外に出て、オレみたいにまだ消えていない人達でも探してみるか?


 どちらにしろ、今は決める気力が湧かない。


 打ちひしがれた気分で落ち込んでいると、ふとした瞬間に両親が緊急用の避難リュックの常備していたことを思い出した。


「こんな機会だし、一応の確認くらいはしておくか」


 リュックがあると思われる玄関の下駄箱の上にある戸棚の戸をゆっくり開く。


「え~と、確かこの辺に……これだな」


 見つけたのは緑色のリュック。中身をさっそく確認してみると、缶詰やゼリー等の数日分の食糧。それに水が入った五〇〇mlのペットボトルが二本あった。


「これくらいあれば、しばらくは大丈夫そうだな。あとは……」


 ゴソゴソ……


「え~と、ライターが二本? ウチでは誰も煙草を吸わないはずのにどうして?」


 不思議に思って眺めてると?


「これって……いつぞやの父さんがいかがわしい店から持って来たヤツじゃないのか!?」


 父親の一面に多少の幻滅をするも、取り敢えずはリュックを漁り続ける。


「手回し型の懐中電灯に、タオル……それにロープ、アウトドア用のナイフもあるな」


 両親が色々と準備していたこと感心してると、まだ一番底に何かが残っていることに気づく。


「これは……」


 最後に出てきたのは、去年のクリスマスに家族で撮った写真だった。


「これ、リュックに入れっぱなしだとシワになるな」


 ということで、写真は制服の胸ポケットにしまう。


「よし、荷物のチェックはこれでいいだろう」


 確認を終えてリュックを背中に担ぐと、今度は何となく家の中を歩いて回る。すると、嫌が応にもリビングが目に入る。


「そういえば、今朝も家族揃ってここで朝食をとっていたんだったな」


 いや、今朝だけではない。誕生日やクリスマス、中学の部活で試合に勝ったあの時だって……


「ホント、思い起こせば、リビング(ここ)には楽しい思い出ばかりだな」


 けど、今はそんな楽しい思い出によって胸を締めつけられる。


「ふぅ……外の空気でも吸ってくるか」


 オレはその場をあとにすると、玄関のドアを開けてから外へ……


「え?」


 目の前に広がる光景。それは自分が知っている“外”の光景とはまったく違うものだった!


「な、何だよこれ……」


 見渡す視界一面を占拠(せんきょ)するのは緑色の……いや、どこからどう見ても広大な森だった!!


「オ、オレ、頭がおかしくなった……のか?」


 困惑しつつ何度も目を擦って見直すも、やっぱり森にしか見えない! 


「これは……まさか?まさか?まさか!?」


 昔、何かのアニメで見た記憶があった。不思議なドアをくぐれば別の場所へ繋がるとする話を。


「まさか、ウチのドアが“そうだった”とは言わないよな?」


 まぁ、冷静に考えたらそんなことはありえないのはわかる。わかるけど……


「現実……なのか?」


 とにかく確かめるためにも、おそるおそる足を踏み出してみる……すると?


「こ、これは……間違いなく本物の感触だ!」


 最初は自分の頭がおかしくなったと思った。だが、実際にこの身で体感してしまったなら認めるしかない。認めるしかないが、そうなるとここは……


「一体どこなんだぁぁぁぁぁぁーーーー!?」

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