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シルベ=テルミチのチートナシ異世界ライフの物語  作者: なめなめ
第三章 レナトスの街
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臨時従業員

「テルミチ君。これもお願いね!」

「ハ、ハイ!」


 “地獄飲み比べ”とやらが始まるまでの三十分だけという条件で引き受けた臨時従業員だったけど……


「ほら! バーバラが注文をとって来るから料理をどんどん運んで!」 

「ハイ!」

「遅い、もう次の出来上がったよ!」 

「ハイ!」

「ダル! 一番から六番までビール五杯ずつ、お願いね!」

「了解! テルミチ君はこっちもお願いするよ!」

「ハ、ハイ! これとこれを一緒に運べばいいんですね?」


 はっきりいって、想像以上に激しいものがあった!


「お待たせしました~!ご注文の品です!」


 酒や料理を次々と配膳するが、まさに息をつく暇がない程の忙しさだ!


「テルミチくーん! 今度はこっちも頼む!」


 うわぁ、また追加だ。


「ハーイ! 今、行きまーす!」


 まったく、本当に息つく暇も暇もない。


「おーい! ニィちゃん。こっちの注文も追加!」

「スミマセーーーン! 少々お待ちをーーー!」


 さらに注文取りもバーバラさんだけじゃ追いつかず、オレの方にもどんどん注文が入ってくる始末なので、カウンターにいるダルさんへ急いでそれを伝えにいく。


「ダルさん! 十番テーブルにポテトの追加です!」

「了解したよ! それじゃあ、今出来上がったのは八番にお願いするよ!」

「わかりました!」


 直ぐ様に目の前に置かれた酒と料理を抱えて猛ダッシュ。


「にいちゃん! この皿を下げてくれ! それと水割り三杯追加な!」

「ハイ! すぐに伺いますので!」

「テルミチくーん!十番があがったよー!」


 八番テーブルの配膳を終えた後、空いたグラスとジョッキを回収してカウンターへ直行!


「ハイ!これ十番と追加の九番!急いでね!」

「十番、九番ですね!すぐ行きます!」


 そんなこんなでバタバタと仕事をこなし続けてると、やがては約束の三十分が過ぎ……


『店内の皆様ぁ!大変お待たせしましたーーーー!!』


 この場にいる全員が、カウンターの上に立つバーバラさんへ集中する。


『地獄飲み比べはもう間もなく開始されまーーーす!

 尚、この対決の司会進行兼解説は暴れ馬の紅一点、このバーバラ=ルドーが務めさせていただきます!!』


「いいぞーーー! バーバラちゃん!」

「相変わらず美人だねーーー!」

「今日も盛り上げてくれよーーー! バーバラ!」

「オレと結婚してくれーーー! バーバラァァァ!!」


 会場……じゃない店内はまさに興奮のるつぼ化とした盛り上がりを見せている!!


『では皆様! 決戦の舞台となる七番テーブルにご注目してくださ~い!!』


 七番テーブル、そこには例の荒くれ者とネイさんが対峙する形で席に座っていた。


 荒くれ者の方は、親の仇でも見るような目でネイさんを睨み付けるが、彼女の方は明らかに格下の者を見下すかのような(さげす)んだ目で相手を見据えてる。


『さぁ野郎ども! その小汚ない目ン玉でちゃんと見てるかい!?』

「「うおおおおおおおおおおーーーーーーー!!!」」

『よ~し、盛り上がってきたようだね!? それじゃあ、まずは選手紹介を始めるよ!!』


 急に口調が荒くなるバーバラさん。どうやら彼女自身もかなり興奮しているらしい。


「おおーーー!」

「やれやれーーー!」


 そして、そんな彼女に呼応するかのように、店内の空気もますますヒートアップ!!


『さぁ、まずは『熊殺し』の異名を持つ男! 髭の荒くれ者ことルド~ル~フーーー!!』

「ぐおぉぉぉぉぉぉぉ!」


 両拳を突き上げ己の強さをアピールするルドルフなる男。熊殺しって言ってたけど本当なのか!?


『対するは……史上最高の八〇連勝を飾る生きながら『伝説』と呼ばれる女! ネ~イ=サーーーーン!!』


「錬金術師の知識をお見せするわ!」


 一方のネイさんは、良くわからないセリフで挑発してるけど……まぁ、見てるとどっちもどっちって感じだ。


「テルミチ君ちょっといい?」

「あ、ダルさん。また注文ですか?」

「うん。コレを()()()()()()にまでお願いするよ」

「七番って……」

「フフッ、もちろんあそこだよ」


 ダルさんはネイさんとルドルフが対峙するテーブルを指差す。


「わ、わかりました……」

「では、よろしく」


 ――――っで頼まれたのは、強烈なアルコール臭が漂う酒が注がれたジョッキ二十杯をキャスター付きのワゴンを運ぶこと。


「あのダルさん、この酒は?」

「それは地獄飲み比べに使う勝負酒だね」


 地獄飲み比べ、勝負酒……ここに来て、オレはようやく状況を理解し始める。


 だけど、念のためにハッキリと確認したい。


「ダルさん。つかぬことこと訊きますが、地獄飲み比べとは?」


 訊ねられたダルさんは、悪魔の様な笑みを浮かばせて答える。


「フフッ、テルミチ君は知らないのかい? 地獄飲み比べとは暴れ馬名物ともいえる飲み比べのことだよ」

「飲み比べ……ですか?」


 やはりそうだったか。


「ルールは単純。相手よりも早く規定量の酒を飲み干せば勝者。そして、負けた敗者は……」

「敗者は!?」


 一体どんな目に会うんだ?


「敗者は、勝者の酒代を一ヶ月間支払い続けるのさ!」

「い、一ヶ月も……それは地獄ですね」

「だろ?」


 こうして地獄飲み比べのすっとんきょうな全貌を知ったオレは、そのあまりの下らなさに深いため息を吐く。


 そしてその後、誰にも聞こえない小さな声で呆れ気味にポツリと呟く。


「この人達は、一体何をやってるんだろ?」

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