勇者の冒険のゆめのなかみを短くしたら
ハルト君は、好きな夢がありました。それは勇者の冒険のお話。
◇
勇者は旅にでました
勇者は困っている人を助けました
勇者は魔法使いを仲間にしました
勇者は剣の大会に優勝しました
勇者はドワーフを仲間にしました
勇者は森で修行しました
勇者はエルフを仲間にしました
勇者は魔物を倒しました
勇者は強くなりました
そして勇者は魔王を倒しました
◇
それはワクワクする冒険のお話。何度見ても楽しいお話。でも夜に一度しか見れないから残念でした。
ハルト君は神様にお願いしました。
「神様、勇者の冒険の夢を沢山見たいな」
すると神様は
「それじゃあ、10の長さの夢を5の長さにしたらいい」
◇
勇者は旅にでました
勇者は困っている人を助けました
勇者は魔物を倒しました
勇者は強くなりました
そして勇者は魔王を倒しました
また勇者は旅にでました
また勇者は困っている人を助けました
また勇者は魔物を倒しました
また勇者は強くなりました
そして勇者はまた魔王を倒しました
◇
ハルト君は勇者の冒険の夢を2回見る事が出来ましたが、勇者が独りぼっちになってしまいました。でも勇者は強くて魔王を2回も倒したので嬉しくなりました。
ハルト君は神様にお願いしました。
「神様、勇者の冒険の夢をもっと沢山見たいな」
すると神様は
「それじゃあ、5の長さの夢を3の長さにしたらいい」
◇
勇者は旅にでました
勇者は強くなりました
そして勇者は魔王を倒しました
また勇者は旅にでました
また勇者は強くなりました
そして勇者はまた魔王を倒しました
またまた勇者は旅に出ました
またまた勇者は強くなりました
そして勇者はまたまた魔王を倒しました
更に勇者は旅に出ました
◇
ハルト君は勇者の冒険の夢を3回も見る事が出来ました。だけど勇者は独りぼっちだし冒険もしないですぐ魔王を倒してしまうし、最後はどっかに行ってしまいました。
ハルト君は神様にお願いしました。
「神様、勇者の冒険の夢をもっともっと沢山見たいな」
すると神様ではなく、魔王が出て来て
「いやいや一晩でこれ以上倒されるのは勘弁してくれ」
と泣きながら言いました。
ハルト君は少し考えて神様にお願いしました。
「神様、勇者と魔王と仲間達の冒険の夢を見たいな」
◇
勇者と魔王は二人で旅にでました。行く先行く先で、魔王は恐れられますが、その度に勇者は悪い魔王では無いよと説得しました。魔法使いやドワーフ、エルフも仲間に加わり、更には魔物まで仲間に加わりました。沢山の仲間に囲まれた勇者と魔王は、旅の先で村を造り、それが国になり、二人は沢山の仲間に囲まれて楽しく過ごしました。今日は二人の国の、猫の魔物のパン屋さんのお話……。
◇
ハルト君の見る夢は、勇者の冒険ではなくなってしまったけど、勇者と魔王とその仲間達が紡ぐ沢山のお話は10よりも長く続きました。
ハルト君は続きが気になって、今日も早くお布団に入るのでした。
夜に子供達に布団で読み聞かせる事を意識して考えてみました。10の長さの夢は10個の冒険があり、両手で順に指折りして話して、5の時はそれぞれの片手ずつ指折りするといった声に合わせた手の動き。3の時はあまりが1出る、最後の10より大きな数等の数遊び。じゃあ11個目の冒険を足すなら何にしよう?11の長さを夢見るなら早く寝ないとね、といった布団での会話が出来たら面白いかなあと。難しいですね、童話。