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リポート 04
そこには、ツギハギだらけの顔があった。フロントガラスに押し付けられているその顔は、別々の人の顔の皮膚で構成されていた。ツギハギだらけだからか、皮膚同士を針金で乱雑に縫ってあった。
突然、フロントガラスが真っ赤になった。俺はツギハギだらけの顔からの血液だと思った。
「ひっ!」
俺も堪らず悲鳴を上げ顔が何とも言えない恐怖で引きつる。
俺はふと思った。
ツギハギ……が怖いのだろうか?
それとも、その顔が俺のよく知った顔だからか?
そのツギハギだらけの顔は……昔、大学時代に分かれた弘子だった。
何故だろう?
俺には弘子が悲しんでいるように思えた。
そうだ。
きっと、悲しいんだろうな。
何故ならツギハギだらけの顔の目から赤い液体がだらだらと流れていたからだ。
フロントガラスを赤く塗り潰した液体は、弘子の血涙だった。
数時間?
いや、実際には数分くらい経ったのだろう。
しばらくすると、弘子はどこかへと行ってしまった。