リポート 03
「なんだ!?」
日台が叫ぶと俺は鈴木と顔を見合わせる。日台は首を強く振ると一目散に軽自動車のところへと畑だった道を走り出した。
俺も鈴木も後を追う。
生まれて初めてだ。
こんなに走ったのは。
「もう、出たんなら無理だな。きっと、本物だよ! だって、誰もいないはずなんだよ! ここ!」
「そうですね! ……確かに本物だと思います。ぼくの見間違いかも知れませんが首が落ちましたよね」
日台と鈴木が真剣に軽自動車の車体に両手を付けて荒い息を整えていた。俺も軽自動車の近くで、両膝に両手を当てて暴れる息を整えた。
「こりゃ、きっと本物が出る村だったんだ!」
「そうですね……ああ! もう無理そうですよ!」
鈴木の叫び声を聞いて、俺は一瞬戸惑った。
日台は軽自動車に強引に体を捻じ込んで震えだした。
ここ蛇白村へ来た小道があるはずの場所に、まるでぶち巻かれたみたいに無数の人間の手首や腕、足が散乱し車道が塞がれていた。
「どうする? どうする? どうする?」
日台はハンドルを握る手に力を入れて独り言のように呟いた。
俺も鈴木も軽自動車の中へと入る。三人でブルブル震えていると、俺だけは軽いノスタルジーが残っていた。
「もう仕方ないです。このままここで続きをしましょう。その方が金になるんでしょ」
「お前なあ。そんなこと言ってもなあ。本物だぞ。本物」
「……ええ……それしかないようですね。ぼくは腹をくくりました」
「おい。何言っているんだよ」
日台が俺のだした案と賛同する鈴木を交互に睨む。
「だって、もう夜ですよ……」
鈴木の一言で、俺たちは暗闇の中に取り残されることに気が付いた。
辺りは、正確には蛇白村は、暗闇が支配していた。
「えー、もうこんな時間かよ!」
日台が腕時計を見ると、そのまま腕時計を外へと力任せに投げ捨てた。
「……俺は反対だからな。仕方ないから調べるんだからな」
前方を向いていた日台は急に引きつった笑顔でこちらに振り返る。
後部座席にいた鈴木がフロントガラスの方へ目を向けて、途端に同じ顔をした。
「うん? なんだ?」
助手席に座っていた俺もフロントガラスを見た。
「あ!」