リポート 01
――――
蛇白村まで軽自動車でT県の国道を走ること2時間。林道を走ること1時間。日台はその間。終始無言で考え事をしていた。
俺は東京では配送センターで働いているから、長距離運転には慣れている。晴れた早朝の5時に蛇白村へと向かったが、林道に入ると、そこは別世界だった。
薄暗く。
ここの近くに観光スポットがあるなんて、誰も信じないだろう。
村の中央の大きな病院の蛇白村総合病院が見えてきた。元はサナトリウムを作る計画だったが、出資者が病院もと途中から設計を変えたようで、総合病院の後ろには広大なサナトリウムがある。
今では廃病院となった蛇白村総合病院は、その外観が荒れ果てていた。
枝や草で汚れてしまった軽自動車を村の入り口の整備された道路につけると、突然に窓ガラスを誰かがノックした。
「あのー。観光スポット専門のyuYubeをしています。ここの近くに観光名所があると聞いたのですが、迷ってしまって」
「ああ、観光スポットならもっと東だよ。あそこの林道を右に……」
日台が親切に話している間。
奇妙な事が起きた。
「地図にはここにあるって、載っているはずなのになあ……あれ!?」
「うん?!」
道を尋ねた人と日台が同時に首をかしげる。
今まであったはずの林道の二つの小道が忽然と無くなっていた。
俺は目を擦りながら、多分、見間違いでただ薄暗いだけで小道はそのまま繋がっているんだろうと思った。
「うーん。なんか……。あの、失礼ですが、ここ廃村ですよね。何かの心霊スポットの取材か何かでしょうか?」
「そうです」
「ぼくも御二方に同行していってもいいでしょうか?」
「うんうん。別にいいけど、床とか階段が腐っていて危ないよ」
「大丈夫です! 良かった。午後には帰らないといけないんですよ。急いでいます。できればここで取材しようと思います。ぼくの名前は鈴木 信夫です」
「よろしく。俺は日台 伸介。心霊写真ライターをしていて、こっちの運転手が海道 雅くん。配送センターで勤務していて、この廃村の元住人だったんだ」
「それは良いですねー」
日台と鈴木が意気投合している間に、雲行きが怪しくなって真夏の風が急激に涼しくなって来ていた。