47.遭遇
お越しくださりありがとうございます。
試着をしてみると、お直しの必要が無かったので、この後も買い物を続けるので、タウンハウスまで届けてもらう事にしました。
「では、お先に失礼いたします」
「ああ、では学園で会おう」
フィリップ殿下とロザリーヌ様に挨拶をして店を出た。
「セリーヌお嬢様、次はどこへ行かれますか?」
「そうねえ。少し文房具を揃えたいわ」
「えぇ~。それよりもぉ、カフェはぁ?」
「さっき沢山食べたでしょう?」
「カフェぇ~」
「カフェに行く途中に文房具屋さんはあるから、ちょっと寄ってから行きましょう」
「えぇ~」
リッカはぶうぶう言いながらも私の後ろをちょこちょこついてきました。
サラ=アンにはリッカの事を伝えてあるので、ほほえましく見てくれているけれど、事情を知らないバルドは私とリッカの会話を不思議そうに、それでも口を挟まず聞いてくれていました。
いつかはバルドにも離さないといけないと思うけれど、まだリッカの事知っている人が少ない方がいいわよね。
リッカは光魔法の精霊だし、慎重に対応しなくちゃ。このことが知られてしまったら、私は光の神殿に入れられてしまうかもしれない。
そうなったら、ますますレンと会えなくなってしまう。
お父様は1年猶予をくださった。私がレンをあきらめるための猶予とおっしゃったけれど、悪あがきくらいはしたい。
「お嬢様、文房具屋はこちらですが、どちらに行かれるのですか?」
「あら、うっかりしてたわ」
文房具屋の前まで引き返し、バルドにドアを開けてもらって入ろうとしたら、中から出てくる人とぶつかりそうになった。
「すみません」
「いえ、こちらこそ」
お互い謝って顔を上げると、
「あ、レ……ラジヴィオラ様」
「君は……」
そこにいたのはレンでした。お互い何となく気まずく、お互い視線をそらしてしまいます。
「ちょっと失礼」
外に出ようとする紳士に声をかけられました。
「あ、すみません」
出入口を塞いでいたのに気づき、慌てて二人で端によります。
「……」
「……」
「え……と、その……」
「はいっ!」
いけない。ついつい食い気味で応えてしまったわ。
「いや。それでは、ここで失礼するよ」
「あ……」
レンが行ってしまう!
私は思わずレンの裾を引っ張っていた。
「何か?」
「あの、よろしければ向こうにフルーツタルトが美味しいカフェがありますの。ご一緒にお茶でもしませんか?」
べたなナンパのセリフしか思い浮かばない~~。
私とレンの様子をはたで見ていたバルトが怪訝な顔をしていた。
「え、フルーツタルトぉ? 行く行くぅ」
リッカが真っ先に反応を示した。
「え?」
そんなリッカをレンは驚いたように見つめている。
ん? リッカの言葉を理解できるのは私だけよね?
確認するようにリッカを見ると、ごまかすように前足で顔を洗い始め、べたに「にゃーん」と鳴いてまでみせている。
棒読みの「にゃ~ん」って初めて聞きましたわ。
そんなリッカを、レンは固まってみている。
「いかがでしょうか?」
「あ、ああ。私もセリーヌ嬢に確認しておきたいことがある。そんなに時間はないが、それでよければ」
「本当!」
私はつい以前のレンに接するように素で喜んでしまった。
いけない。レンが驚いてるわ。
「では参りましょう。ここから直ぐですわ」
「りょおかいだよぉ~。タルト、タルトぉ」
リッカが率先して向かいまます。
私とレンはその後を、お互い少し距離を取ったまま無言でついていきました。
カフェに付くと、私たちを覚えてくれている店員さんがいつもの席に連れて行ってくれた。
サラ=アンとバルドも目立たないように近くの席に座る。
「いつもご利用ありがとうございます。いつものオレンジタルトもありますが、期間限定の木苺タルトも人気ですよ」
「わあ、おいしそう」
「レ……ラジオヴィラ様は何になさいますか?」
「私は紅茶で。タルトはいらない」
私の前ではいつも【僕】だったけれど、普段は【私】なんだ。
ズキン
「こ、ここのタルトは絶品なんですよ! 是非召し上がってみてくださいな」
私は何とか話題を振ろうと、ことさら明るく話を振ってみる。
「結構だ」
「そう、ですか」
ズキン ズキン
ハートが痛い。
でも、負けない。
あと1年しかチャンスはないのだから。傷ついている暇は今は無い。
「では、私も紅茶と、オレンジタルトと木苺のタルト両方ください!」
思いっきりの笑顔で注文した。
ちゃんと笑顔になっていると良いな。
「そんなに食べるのか?」
「いえ。この子が楽しみにしているので」
私は、鼻歌を歌っているリッカを見て言いました。
「ふーん」
レンはすぐに興味なさそうに横を向いてしまいました。
このカフェ、レンと良く通ったな。
私がフルーツタルトが好きなのを知っているレンは、色んなところのフルーツタルトが美味しい店の情報を見つけて来ては、連れて行ってくれた。
ここもレンが最初に見つけてくれた店だった。
今日みたいに食べたいのが2つあったら、両方頼んで半分こしたっけ。
感傷に浸っていると、レンがおもむろに口を開きました。
「私が話したいことと言うのは、セリーヌ嬢、君との婚約の件です」
「は、はい」
え、今この状況で?
私の心臓は驚くほど大きく跳ねた。
お読みくださりありがとうございます。
偶然の再開が続いてしまいました。
皆制服の最終調整の為服飾店へ予約を取っています。
遭遇しても問題ないように、服飾店の方で、同じ派閥の者同士の日付を合わせて予約を入れてあるため、知り合いに会いやすいという設定です。
レンはセリーヌの前に同じ服飾店で制服の最終調整を終えています。




