SS1.6 覚醒
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どうすれば……。
ベッドの下に隠してあった。俺と侵入者の間にあるベッドの下に木剣は隠してある。
俺の方がベッドに近い。
素早く身をかがめると、ベッドの下から硬そうなものを手あたり次第投げつけ、そのすきに木剣を取り出した。
教えられた通り構える。でも、戦闘はおろか、打ち合いすらしたことはない。
手が震える。
「へええ。構える姿なかなか様になってるじゃねえか」
小馬鹿にしたように一人が笑うと、他も下卑た笑いを挙げた。
「てえええい!」
「よっと。ああ、怖い怖い」
何事も無かったように避けると。そのまま俺のお腹を膝で蹴ってきた。
「ぐほっ」
「なあに。ここじゃ殺しませんって。大人しく付いてきてくれたら楽に殺して差し上げますよ、王子様」
こいつ、俺の正体を知っている……。
くの字で床に転がっている俺を、仲間が素早く縛り上げ、口に猿轡をしようとしたその時、
「何をしている!」
オルランド!
オルランドが木箱を抱え、扉の前に立っていた。
「来ちゃだめだ! 逃げて!」
「アノ様!」
侵入者が3名ほど素早くオルランドに向かって行った。オルランドは木箱を侵入者に投げつけると、そのまま剣を抜き侵入者へ突撃していく。
一人、左から切り上げ、そのまま横にいた侵入者を袈裟斬りに切り倒した。
「やった!」
「こいつ、騎士か。まずいもうこのままでいい。行くぞ!」
俺を担ぎ上げた侵入者は、窓ガラスに魔法石を投げつけた。
今までどんなに蹴っ飛ばしても叩いても物を投げても割れなかった窓ガラスが、簡単に粉々に砕けた。
「まて!」
オルランドはこちらを追って来ようとし、その一瞬のすきをつかれ、背中から切られた。
「オルランド〜!】
オルランドは倒れながら呪文を唱え、侵入者に触れると、侵入者は爆発とともに吹き飛んだ。
「アノ様をはな……せ」
「オルランド、血が、血が!」
「アノ様、大丈夫ですよ。すぐにそちらに行きますからね」
「もう良い。もう良いよ。オルランド、逃げて」
「おいっ!」
俺を担いでいる、このグループのトップらしき奴が指示をすると、両隣の部下がオルランドへとどめを刺そうと向かった。
オルランドは何とか立ち上がり剣を持ち上げるが、足元がふらついている。
俺は敵から逃れようと目一杯抵抗した。
「離せよ! 俺なんか誘拐しても何も褒章ももらえないぞ。放っとけよ」
けれどビクともしなかった。
あんなに練習したのに……。
「問題ねえ。もうたんまり前金はもらった。それより、今日は何で祭りがあったか知ってるか?」
「皇太后さまがお産みになった第3王子の生誕の祝祭だってよ。しかも待ちに待った黒髪赤髪だってよ」
「だからなん……!」
「気づいたみたいだな。用済みなんだとよ。スペアとしてもな。お前にとってはとんだ祝祭になったな」
男は意地悪く口をゆがめた。
そういう事か。
もう俺を生かしておく意味が無くなった。
「アノ様、そいつのいう事は聞かなくていい!」
オルランドが剣を振り上げ敵を切った。その間合いに他の敵が入り、今度はオルランドの胴に切りつけに行く。
「オルランド!」
「アノ様、あなたは生きなければならない人だ!」
オルランドは必至の笑顔を俺に向けた。
そんなオルランドに正面から敵が切りかかって行った。
「オルランド~~~!」
俺はありったけの声を張り上げた。
瞬間、俺の中で何かが弾けた感覚があり、オルランドと侵入者の間に大きな土壁が下から盛り上がって来た。
「ち、目覚めたか。面倒だな。おい。あの傷ではもうじき死ぬだろうよ。放っとけ。行くぞ」
「はっ」
俺は意識が朦朧とする中で、
「魔力切れが。そのまま眠っとけ」
の言葉と、みぞおちへの強烈な痛みとともに意識を失った。
オルランド……。
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