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SS1.5 それは突然に

お越しくださりありがとうございます。

「オルランド! 今日は俺の素振り見てくれよ」

 あの一件以来、俺はオルランドにをすっかり信頼を寄せるようになった。

「おお、大分上手に振れるようになりましたね」

 そういっていつも頭をなでてくれた。

 さぼり癖のある護衛の日は必ず差し入れを持ってきてくれた。


 先日夜中にこっそり来た時、

「体も大分できてきましたし、体術も素晴らしい。短期間でよく頑張りましたね。これはプレゼントです」

 と木剣をくれた。

「剣だ!」

 護衛が腰にぶら下げているのを見たことはあるが、実際に触ったことは無かった。

「本物では無く木ですけどね。でも十分使えますよ」

「やったあ! ありがとうオルランド!」

 以来俺は夢中になって剣の練習をしている。

 剣の稽古は楽しい。

 音が出るから打ち合いはできない。でも剣を振っているだけで強くなれた気がした。



 俺が10歳になってしばらく経った頃、オルランドが神妙な顔をしてやってきた。

「どうしたんだ? 何かあったのか」

 オルランドはなかなか話そうとしなかった。こんなことは出会って3年程経つが初めてだった。

「異動になりました」

 一瞬何を言っているのか分からなかった。

「異動?」

「はい。来月から私の持ち場は北の砦になります」

「……遠いのか?」

「……ここから5日ほど馬で行ったところになります」 

「思った以上に遠いな……」

「ええ……」


「……行かないで」

「アノ様」

「俺を置いて行かないでよ! ずっとここにいてよ!」

 俺はオルランドにしがみついた。

「……すみません……十分注意したつもりなのですが……」

「注意ってなんだよ。どうにか方法は無いの?」

 オルランドは無言でこぶしを握り締めている。

「もういい!」

 俺は木剣をオルランドに投げつけた。

「俺を捨てる奴なんて大っ嫌いだ! もう二度と顔を見せるな!」

 俺は手当たり次第にそこら辺にあった本を投げつけた。

「出てけよ! お前なんか大っ嫌いだ!」

 本があたってもオルランドは動かなかった。

「うっ……うっ、うっ……」

 俺は地べたに座り込み、泣き続けた。

 そのまま時が過ぎた。もう一人の護衛が戻ってくる時間になり、オルランドは小さな声でもう一度「すみません」と呟くと、部屋から出て行った。

 

 以来オルランドは俺を訪ねてこなかった。

 たまに朝起きると、大量の保存食と、その日食べる用の特大サンドウィッチがベッドの下に置かれていた。


 もうこのままオルランドには会えないままさよならしてしまうのかな。

 最後に会った時のことを後悔していた。

 

 オルランドに会いたい。

 多分まだ外で護衛をしているだろう。


 でも俺には扉を開けるすべはないし、俺から声をかけることもできない。


 夜会えるかもと頑張って起きてみるが、この子供の体ではずっと起きているのが難しかった。

 

 でも今夜こそ。

 今宵は何やら外が騒がしい。

 ドン、ドンという音と共に色とりどりの綺麗な光が空を舞っている。

 きっと本の中で読んだ、花火という物だろう。

 生まれて初めて見たけど、とてもきれいだ。


 こんなに賑やかだったら、眠ってしまう事も無いかな。


 花火が終わっても、街の喧騒は続いていて、この世界から隔離されたような離宮にも人々の騒ぐ声が聞こえてきた。

 なんのお祭りだろう。

 いつか行ける日が来るだろうか。


 街の喧騒もすっかり静まり、東の空が少し明るくなり始めた。


 今日は来ないか……。

 もう起きているのも限界でうとうとし始めたころ、扉の鍵をガチャガチャ開く音がした。

「オルランド!」

 一気に眠気が吹き飛んだ。

 俺は扉まで走って行こうとして立ち止まった。

「……誰だ」

 黒いフードを被った怪しい者達が足音もさせずに部屋に入ってきた。

 俺はじりじりと横に移動しながら相手の出方を伺った。

 扉は男たちでふさがれている。

 見る限り男たちは全部で7、8人ほどいた。

 きっと今日はさぼりの護衛の日だな。争う音もせずすんなりと入ってきた。


 という事は……、

 まずい! オルランドが来てしまう!

お読みくださりありがとうございます。

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