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42.目覚め 第一部完

お越しくださりありがとうございます。


 え、突然なんですの?

 乗っ取られちゃうって?? 心臓がありえない動きでドクンっと多いく波打ちました。

 今まで私はシロの名前をどこかで口にしたでしょうか。

 思い返してみますが、シロを名付けた時の、気絶しているレンと少年の前でだけだったと思います。


 あの男の子、気絶してましたわよ、ね?

 極力関わらない方がいいかもしれません。


「もし乗っ取られてしまうとどうなりますの?」

「えぇ~とねぇ、僕の契約者が代わるだけだよぉ」

「だけって……」

 ああ、シロなんてすぐ分かりそうな真名付けてしまいましたわ! 

 もっと時間があれば、絶対人に気づかれない名前考えましたのに……。

「大丈夫だよぉ。僕と相性のいい魔力の人じゃないと真名知ってても無理だしぃ。今まで二人くらいしかあった事ないもん~。お姉さん3人目ぇ」

「そういえば名乗っていませんでしたね。私の名前はセリーヌ=マクラインと申します」

「ふ~ん、それよりお姉さん、のどか湧いちゃったぁ」

 自分の名前はこだわるのに、人の名前は「ふ~ん」って……なんだか解せませんわ。と思いつつも、水をコップに入れて渡します。リッカの顔がコップの中にスポット入り、変な顔になっています。

 か、可愛い……。サラ=アンではありませんが、これは見悶えたくなるのも分かります。

「そういえば、私の魔力と相性がいいとおっしゃってましたね。治癒を使いましたし、私の属性は光ですの?」

「違うよぉ。お姉さんの属性は「ム」だよ」

「ム?」

 漢字があてはめられません。「ム」とは……。

「そう「無」。属性が無いのぉ」

「無い? そんなことあり得るのですか?」

「知らなぁい。でもここにいるんだから、あるんじゃないぃ?」

「「無」だと、もしかしてなんの魔法も使えませんの?」

「そういう事になるんじゃなぁい? 知らないけどぉ」

「そんな……」

 魔力を持っていても無意味という事ですの。

「でも、お姉さんの魔力、僕たちにはとっても美味しい魔力だよぉ」 

 つまりは、私の魔力はリッカのような精霊(という事にしておきます)達のご飯として最高級品という事でしょうか。

 ご飯……。

「先ほどリッカ、ホットケーキを食べてましたよね。それと私の魔力は違いますの?」

「ホットケーキでお腹は膨れるけどぉ、魔力は増えないよぉ。今両方とも一杯で満足ぅ♡」

 そうか。いくらレンに私の魔力を注いでも目覚めなかったのは、私が聖女ではないからだったのですね。

「私の魔力を注いでも、治癒はしませんのね……」

「しないよぉ」

 今までレンに魔力を注いでいたのは無駄な事だったのですね。

「でも、僕は光属性だからぁ。この間お兄さん直してあげた時みたいにぃ、僕を通して魔法を使ったら、治癒魔法使えるでしょぅ?」

「あの時だけでは無く、ずっと使えるのですの?」

「お姉さんが契約者でぇ、魔力を食べさえてくれている限りは、いいよぉ~」

 私は顔を掃除しているリッカの両前足を握りました。

「ニャッ⁈」

 リッカがネコのように叫びました。

「お願いがありますの!」


返答は、

「やだぁ」

 でした。


「あのさぁ。契約しちゃったからぁ、他の物から魔力摂取でないのにさあ、森に置いて行かれてさぁ~。なのにお姉さんの魔力全然感じられないからぁ、追いかけることもできなくてさぁ。いっそのこと死んでくれてたらって何度も思ったよぅ」

 ものすごく物騒なことをおっしゃいます。

 私の魔力が枯渇して意識が戻らなかった時のことですね。

 契約すると契約者からしか魔力を摂取できないなんて、確かに死活問題です。

「私と契約する前はどのように魔力を摂取していたんですの?」

「僕の光属性の魔力は草花や木なんかからも摂取できるのぉ。森だったら沢山魔力あるんだぁ。なのに食べられないなんて……全部お姉さんのせいだぁ~」

 目の前にごちそうがあるのに食べられないなんて、確かにあまりにも辛すぎますわ。

「やっとお姉さんの魔力の痕跡見つけてたどって来たけどぉ、魔力使えないから歩いてくるしかないしぃ、子供や犬に追いかけられるしぃ、雨にまで降られるしぃ、やっとたどり着いたと思ったらぁ、直ぐに契約者からもこき使われるなんてぇ……あ、あんまりだぁぁぁ~~~!」


 私、サラ=アン、メイドたち総出で、目一杯おもてなしいたしました。


 リッカは馬の毛で作ったブラシで体中梳いてあげると、気持ちよさげに眠ってしまいました。

 サラ=アンが作ってくれた、籐の籠にふかふかのクッションを敷いたリッカ専用のベッドに、そっと抱っこして移動し寝かせました。

 ああ、寝相までどことなくおっさんくさい……。

 お腹をなでると、前足で払う仕草をしました。

 ふふ。ゆっくり休んでくださいね。


 私は先ほど途中になっていた刺繍を再開しました。


「ふう。できましたわ」

 巾着袋を広げます。

「お嬢様の思いがたくさん詰まっていますね」

 サラ=アン、先ほど魔法陣を思いっきりカエルと間違えてしまった手前、あえて刺繍自体に関する誉め言葉を割けましたわね。

 でも、その通り。思いが大切ですわ。

「ちょっとレンのところへ行ってくるわね」

 私は巾着袋に癒しの魔法石と、送受信用の魔法石の3つを入れ、自分用の送受信用魔法石を持つと部屋を出ました。


 レンは相変わらずベッドで寝ています。

 まるでミケランジェロが彫った彫刻みたい。天使が寝ているようで、もうこの世の者ではないみたいで……、

「レン、早く戻ってきて」

 私は巾着袋に強く強く祈りを込め、レンの手に握らせました。

 その手を両手で包み込みます。

「レン、愛してるわ」

 私の魔力を注いでも意味は無いとリッカは言ったけれど、何もせずにはいられません。レンが目覚めるよう両手に思いを込めて祈りました。

「あなたとの記憶全て思い出したのよ。早く直接あなたにこの言葉を伝えさせてね」

 と突然、レンの両手からまばゆい光が溢れ出てきました。


「きゃっ!」

 

 巾着袋が光ってる?

 まぶしさに目がくらみます。


 光が徐々に引いていくのを待ち、少しずつ目を開けました。


「レン?」

 レンの目が開いてる!

「レン、分かる? セリーヌよ。レン!」

 レンは、まだ焦点の定まらない目でぼうっとしていました。

 私はレンの左手を、まだ手に持っていた巾着袋と送信用魔法石と一緒にギュッと握りました。

 レンの目の焦点が徐々に定まってきました。

「レン、私よセリーヌよ」

「セリーヌ?」

「そう、セリーヌよ。良かった目が覚めて」

 私は涙が溢れてきました。

「セリーヌ」

 レンはもう一度私の名前をつぶやきました。




「君は……誰?」

 



第一部 完

ここまでお読みくださりありがとうございます。

第一部完です。


閑話を挟みまして、次回から王立学園編になります。

登場人物が一気に増えます。

また読んでいただけますと嬉しいです。

ここまでありがとうございました。

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セリーヌが生まれる前のサラ=アンの物語を不定期で連載しています。こちらもどうぞ!

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