40.再開
お越しくださりありがとうございます。
外では、朝から小雨がしとしと降っていました。
雨が降るごとに暖かくなってきているような気がします。
もう王立エリュカレーヌ学園入学式まで1ヶ月を切りました。入学までもう間もなくです。
レンが事件に巻き込まれたあの日から1週間ほど経ちましたが、まだ起きてくる気配はありません。
私は自室で、巾着袋に刺繍をしていました。
以前「レン」と刺繍した上に、レンがいつも持ち歩いている心を落ち着ける魔法陣を、心を込めて刺繍していきます。サラ=アンからは「まあカエルですか? 可愛いですね」と言われましたが……。
心がこもっていればきっと通じるはず。そう信じて縫い進めてます。
朝からずっとしていたので、そろそろ休憩でもしようかと顔を上げた時、
「何の音かしら」
窓辺で何やら雨音とは違う音が聞こえてきました。
カシ、カシ、カシ
メイドがテラスに続く大窓のカーテンを開けると、
「あら、どこから入ってきたのかしら?」
侍女が驚いた声をあげました。
そこでは、白い子猫が窓をひっかいていました。
シロ!
「中に入れてあげて」
「承知しました。少々お待ちください」
メイドは素早くタオルを持ってくると、床に敷きました。
「さあお入り」
窓を開けると、シロはぴょーんと飛ぶように入ってきて、タオルの上でブルブルと体を震わせました。水しぶきがあちこちに飛び散ります。
「あらあら、このタオルでは足りませんでしたね」
メイドか慌ててタオルを取りに行きました。
シロは、我関せず部屋を横切りチョコチョコ私の前まで歩いてくると、私の膝にチョコンと乗りました。
それを見ていたサラ=アンが、
「可愛い~」
と黄色い声を上げます。
「ぼ、僕を置いてくなんて信じらんないぃ〜!」
でも、シロから聞こえたセリフは抗議の声でした。
喋る猫なんて他の人に見られたら大変!
慌ててシロの口をふさぎます。
「なにすんのっ……ふごっ! きぃーーー!」
私の後ろに控えてるサラ=アンを恐る恐る見上げると、とろける顔でシロを見ています。
「まあ、セリーヌ様にとても懐いていらっしゃいますわね。ニャーニャー鳴いておりますが、お腹空かせているのかしら。すぐに何か持ってまいります」
そう言ってサラ=アンはそそくさと扉に向かいます。
「うむ。よく気がつく良い子だねぇ♫ パンケーキを所望するよぉ」
シロはご満悦そうにサラ=アンに言葉をかけていますが、サラ=アンには「ニャー」としか聞こえていないらしく、
「まぁぁ! か、可愛いいい」
と身悶えながら出ていきました。
バタン。
念のため周りに私たち居ないことを確認し、シロに話しかけます。
「あなたの言葉、私以外の人にはわからないのね」
「繋がってる契約者とだけ話せるみたいぃ。不便だよねぇ」
何でもできそうなこと言っていた気がしますが、制約も結構あるんですね。
「それよりぃ! なんで僕を置いていったのさぁ。君の魔力は全然感じられないしぃ、僕も力使い果たして動けないしぃ。大変だったんだからぁ〜。酷いやぁ。捨てるなんてぇ〜。契約したんだから、最後までしっかり面倒みてよねぇ!」
シロが後ろ足で立ってシクシクのポーズで泣いてます。
よく見れば森であったときよりも痩せて汚れていました。
「意識を失くしていて、気づいたら家に戻っていたのよ」
「そんなの知らないぃ~。抱っこしとくとかぁ、なんか色々あったでしょぉ!」
そんな無茶な……。でもここは機嫌を取っておくべきかしら。
「そうね。今度から気をつけるわね」
「どうだかぁ! 人間のいう事なんて信じられないぃ!」
まだシロの怒りは納まらないようです。
どうしたものかと困っていると、丁度サラ=アンがトレーを持って戻ってきました。
「ネコちゃん、おやつ持ってきましたよ!」
サラ=アン、ナイスタイミングですわ。
「お腹空いてるのではありません? ほら、食べましょう」
「やったぁ!」
シロがウキウキとサラ=アンの元へ歩いていきました。
「ネコちゃん、どうぞ召し上がれ」
サラ=アンがクローシュを取ると、そこには生肉が細かく刻んで入っていました。
「美味しい部位を貰ってきましたよ」
シロはフルフル震えたかと思うと、
「こんなの食べられるかぁ~!」
お皿をひっくり返してしまいました。
テーブル返しって、ネコ(?)でもできるんですのね。
お読みくださりありがとうございます。




