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38/62

38.大丈夫

お越しくださりありがとうございます。


 目覚めると、自室のベッドの上でした。

 のどが渇いた。

 手を動かすも、鉛がぶら下がっているかのように思うように動きません。

「サ……ラ……ゴホッ、ゴホッ!」

 声もうまく出ません。

 

 森で土砂に埋もれ、息絶えそうになっていたレンに魔力を注いで……。

 そこまで思い出して、はっとしました。


 レン!


 レンはどうなったの? 

 記憶が無くなる直前、レンの手が温かくなったような気が 


 でも……。

 

 私はベッドから出ようとして足がもつれ、頭から落ちてしまいました。

「お嬢様!」

 ガチャンッ! と何かが壊れる音に続いてすぐ、サラ=アンが助け起こしてくれました。

「お嬢様は3日も意識を失われていたのです。まだ安静が必要です」

 3日も?

「レ……ン、こほこほっ。レンは? ……生きて、いるの? ゴホゴホっ……」

 サラ=アンは少し逡巡した後、口を開きました。

「……タレンツィオ様は、生きておられます」


 レンが生きてる!

 一気に乾いた目から、堰を切ったように涙が溢れました。


「レンに会いたいわ」

「お嬢様のそんな姿を見せてはタレンツィオ様が心配なさりますよ」

「そう……そうね。レンに心配させてはいけないものね」

「さあ、もうひと眠りいたしましょう」

 私はサラ=アンに手伝ってもらいながらベッドに上がると、お水を飲みました。

 ほうっと一息つきます。


 レン、早くあなたに会いたい。


 私はレンの笑顔を思い浮かべながら、また眠りにつきました。


 見た夢は、レンと一緒に過ごす、楽しくものんびりとした日常でした。

 レンが飛び切り甘い笑顔を私に向け、私も笑い返しています。

「レン、あなたの私に向ける笑顔が一番大好きよ」

「僕も君の笑顔が世界で一番好きだよ」

 幸せな夢でした。


 起きると次の日の朝でした。もうだるさはなく、頭もすっきりしています。

 今は家族やサラ=アン達に見守られながら、マクライン家の主治医に診てもらっています。


 短期間で2度も家族や皆に心配させてしまった……。


「膝の擦り傷以外は特に外傷はないようです。魔力切れでしたが、今は魔力も戻りました。もう起きても大丈夫です」

「セリーヌはまだ14歳で、魔力を開放していないのよ? なぜ……」

 お母様が青ざめた顔で主治医を問いただしました。

「どういう方法か分かりませんが、内側から開いた形跡があります」

「一体どうやって……セリーヌは大丈夫なのか?」

 お父様はとまどいの声で主治医に尋ねます。

「お嬢様は……」


 あの時ね。シロと契約をして私の記憶が戻った時、私の魔力が解放されたんだわ。

 そういえばシロはどこかしら。

 あたりを見回してもシロはいませんでした。

 私も気を失っていたし。そのまま森に置いてきちゃったのね。

 新しい名前を付けてあげるって約束していたのに。申し訳ないことをしてしまった。

 でも、調子がいいからきっと新しい契約者もすぐ見つけるわよね。


「……無理やりこじ開けた形跡はありませんし、幸いにも魔力の開放にお嬢様の体は順応されました。通常とは逆ですが、早めに適正審査を行い、魔力をコントロールする術を学ばれた方がよろしいかと思われます」

 主治医の話を聞き、お父様もお母様もほっとした顔をされました。

「お父様、お母様そして皆、心配かけてごめんなさい」

「言いたいことはたくさんあるが、今はとにかく体を休めなさい。分かったね」

 お父様はため息をつきながらも優しく言いました。

「はい」

 お父様は、優しく私の頭をなでてくれ、お母様は私の手を温めるように包み込んでくれました。

 ロバートも心配かけてごめんなさい。

 泣き顔を見せまいと物陰に隠れ、こっそり震えているロバートに向かって目だけで謝りました。


「お父様」

「何だい」

「レンの姿が見えませんが。もしかしてまだ起き上がれないのですか?」

 お父様とお母様は顔を見合わせました。

「お父様? お母様?」

「セリーヌ、落ち着いてお聞き。タレンツィオ君は……」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 私はまだ足に力が入らないため、車いすをサラ=アンに押してもらい、レンのいる客間まで連れて来てもらいました。


「レン……」

 レンはベッドで眠っていました。その頬には赤みが差しています。

 レンの手に触れると、

「温かい」

 口に手を持って行くと、かすかですが呼吸の流れを感じました。


 レンが生きてここにいる。


 レンの頬に涙が一滴落ちました。

「いけない」

 私は慌てて自分の目頭を抑えます。


お父様の先ほどの言葉、

『セリーヌ、落ち着いてお聞き。タレンツィオ君は生きている。でも目覚める兆候が全くないんだ。お前のように魔力切れというわけでも無い。原因不明だ』

 

 でも、生きてる。

 大丈夫。生きてさえいたら、必ず目覚めさせる方法はあるはず。

 私は、森でレンに触れた時の、生きている人としてはあり得ない冷たさの肌を思い出し、ぶるっと震えました。


「大丈夫よレン。絶対に私が目覚めさせる」

 私は両手でレンの手を強く握りしめました。

ディズニーランドでバイトしていた時、「あなた達は、お客様をショーへといざなうキャストなのですから、挨拶は「ありがとうございました」と過去形ではなく、「ありがとうございます」とショーを終わらせない挨拶をしましょう」と言われたような言われていないような記憶があるため、ついつい終わらせない挨拶をしてしまいます。


お読みくださりありがとうございます。

また来てくださると嬉しいです。

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