38.大丈夫
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目覚めると、自室のベッドの上でした。
のどが渇いた。
手を動かすも、鉛がぶら下がっているかのように思うように動きません。
「サ……ラ……ゴホッ、ゴホッ!」
声もうまく出ません。
森で土砂に埋もれ、息絶えそうになっていたレンに魔力を注いで……。
そこまで思い出して、はっとしました。
レン!
レンはどうなったの?
記憶が無くなる直前、レンの手が温かくなったような気が
でも……。
私はベッドから出ようとして足がもつれ、頭から落ちてしまいました。
「お嬢様!」
ガチャンッ! と何かが壊れる音に続いてすぐ、サラ=アンが助け起こしてくれました。
「お嬢様は3日も意識を失われていたのです。まだ安静が必要です」
3日も?
「レ……ン、こほこほっ。レンは? ……生きて、いるの? ゴホゴホっ……」
サラ=アンは少し逡巡した後、口を開きました。
「……タレンツィオ様は、生きておられます」
レンが生きてる!
一気に乾いた目から、堰を切ったように涙が溢れました。
「レンに会いたいわ」
「お嬢様のそんな姿を見せてはタレンツィオ様が心配なさりますよ」
「そう……そうね。レンに心配させてはいけないものね」
「さあ、もうひと眠りいたしましょう」
私はサラ=アンに手伝ってもらいながらベッドに上がると、お水を飲みました。
ほうっと一息つきます。
レン、早くあなたに会いたい。
私はレンの笑顔を思い浮かべながら、また眠りにつきました。
見た夢は、レンと一緒に過ごす、楽しくものんびりとした日常でした。
レンが飛び切り甘い笑顔を私に向け、私も笑い返しています。
「レン、あなたの私に向ける笑顔が一番大好きよ」
「僕も君の笑顔が世界で一番好きだよ」
幸せな夢でした。
起きると次の日の朝でした。もうだるさはなく、頭もすっきりしています。
今は家族やサラ=アン達に見守られながら、マクライン家の主治医に診てもらっています。
短期間で2度も家族や皆に心配させてしまった……。
「膝の擦り傷以外は特に外傷はないようです。魔力切れでしたが、今は魔力も戻りました。もう起きても大丈夫です」
「セリーヌはまだ14歳で、魔力を開放していないのよ? なぜ……」
お母様が青ざめた顔で主治医を問いただしました。
「どういう方法か分かりませんが、内側から開いた形跡があります」
「一体どうやって……セリーヌは大丈夫なのか?」
お父様はとまどいの声で主治医に尋ねます。
「お嬢様は……」
あの時ね。シロと契約をして私の記憶が戻った時、私の魔力が解放されたんだわ。
そういえばシロはどこかしら。
あたりを見回してもシロはいませんでした。
私も気を失っていたし。そのまま森に置いてきちゃったのね。
新しい名前を付けてあげるって約束していたのに。申し訳ないことをしてしまった。
でも、調子がいいからきっと新しい契約者もすぐ見つけるわよね。
「……無理やりこじ開けた形跡はありませんし、幸いにも魔力の開放にお嬢様の体は順応されました。通常とは逆ですが、早めに適正審査を行い、魔力をコントロールする術を学ばれた方がよろしいかと思われます」
主治医の話を聞き、お父様もお母様もほっとした顔をされました。
「お父様、お母様そして皆、心配かけてごめんなさい」
「言いたいことはたくさんあるが、今はとにかく体を休めなさい。分かったね」
お父様はため息をつきながらも優しく言いました。
「はい」
お父様は、優しく私の頭をなでてくれ、お母様は私の手を温めるように包み込んでくれました。
ロバートも心配かけてごめんなさい。
泣き顔を見せまいと物陰に隠れ、こっそり震えているロバートに向かって目だけで謝りました。
「お父様」
「何だい」
「レンの姿が見えませんが。もしかしてまだ起き上がれないのですか?」
お父様とお母様は顔を見合わせました。
「お父様? お母様?」
「セリーヌ、落ち着いてお聞き。タレンツィオ君は……」
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私はまだ足に力が入らないため、車いすをサラ=アンに押してもらい、レンのいる客間まで連れて来てもらいました。
「レン……」
レンはベッドで眠っていました。その頬には赤みが差しています。
レンの手に触れると、
「温かい」
口に手を持って行くと、かすかですが呼吸の流れを感じました。
レンが生きてここにいる。
レンの頬に涙が一滴落ちました。
「いけない」
私は慌てて自分の目頭を抑えます。
お父様の先ほどの言葉、
『セリーヌ、落ち着いてお聞き。タレンツィオ君は生きている。でも目覚める兆候が全くないんだ。お前のように魔力切れというわけでも無い。原因不明だ』
でも、生きてる。
大丈夫。生きてさえいたら、必ず目覚めさせる方法はあるはず。
私は、森でレンに触れた時の、生きている人としてはあり得ない冷たさの肌を思い出し、ぶるっと震えました。
「大丈夫よレン。絶対に私が目覚めさせる」
私は両手でレンの手を強く握りしめました。
ディズニーランドでバイトしていた時、「あなた達は、お客様をショーへといざなうキャストなのですから、挨拶は「ありがとうございました」と過去形ではなく、「ありがとうございます」とショーを終わらせない挨拶をしましょう」と言われたような言われていないような記憶があるため、ついつい終わらせない挨拶をしてしまいます。
お読みくださりありがとうございます。
また来てくださると嬉しいです。




