35.出会い
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風圧で馬車が揺れ、私とサラ=アンは必死に手すりにしがみつきました。
馬たちがおびえ、一斉に興奮応対になったらしく、残っていた騎士たちがなだめている声が聞こえます。
馬車を引いてる馬も暴れているらしく、揺れが納まりません。
「お嬢様、馬の様子を見てまいります」
「よろしくねサラ=アン」
サラ=アンが出てしばらくすると、揺れが収まりました。
私はそろりと、ドアを開いて外へ出てみました。
「何事?」
森の奥で土埃が盛大に舞っていました。
レンはあそこにいる!
そう思ったら、何も考えられず、私は夢中で馬車から飛び出しました。そしてそのまま森の中へ駆け込み、土埃を目指して走りました。
「あ、お嬢様!」
サラ=アンの呼ぶ声が聞こえたような気がしましたが、足は止まりません。
レン!
記憶を失くした私にとって、レンとの思い出はここ数日のものだけ。
まだレンの事良く知っているとは言えない。
このまま記憶が戻らず、レンとの思い出も思い出さないままかもしれない。
レンを愛しているなんて、まだ、言えない。
でも、
このままレンと会えなくなるかもと思うだけで苦しい。
逢いたい。
レンに触れたい。優しい声で「セリーヌ」と呼んで欲しい。
「あっ」
木の根っこにつまづきこけてしまいました。ひざ丈の動きやすいドレスだったため、直接膝が地面に触れ、ざっくりと切れてしまいました。かなり出血もしています。
でも行かなくちゃ。
「いたっ」
立ち上がろうとして、また座ってしまいました。
前世とは違い、全く運動をしていない体です。ケガまでしてしまうと、立ち上がることさえできません。
レンはあそこにいるのに。
唇をかみしめました。
土埃がだんだん収まって行きます。
あ、あ、レンまでの目印が消えてしまう!
消えちゃった……。
「レーーーーン!!!」
レンの元へ行かなくちゃいけないのに、もう動けない。
レンにもう会えないかもしれない……。
涙がとめどなく流れて止まりません。
どのくらいそうしていたでしょう。
「何してるのぉ?」
場にそぐわない、幼い子供の声が聞こえてきました。
放っておいて。
「ねぇ~、何してるのぉ? ねぇってばさぁ~」
「放っておいてよ!」
声のする方へ腕を思いっきり振り上げました。
「あ、あれ?」
私は辺りを見回しましたが、子供の姿はありませんでした。
「どこ見てるのぉ? ここだよぉ」
下から声が聞こえてきます。
「ネコ?」
そこには白い子ネコがちょこんと座って見上げていました。
この世界ではネコも話しますのね。
「今はあなたに構っている暇はありませんの。放っておいてくださらない。あなたは危ないですから森から逃げた方がよろしくてよ」
涙と泥でぐちゃぐちゃになりながらも、威厳のある態度で言いました。
「お姉さんすごぉい! 僕が人間の言葉話しても驚かないんだぁ」
「ネコは話しませんの?」
「話さないよぉ~」
白ネコがお腹を抱えて笑ってます。そちらの方がどうなんですの。
「お姉さん面白いぃ」
白ネコが涙まで流して笑ってますわ。どうなんですの、それ。
「久しぶりに笑ったぁ。楽しませてくれたお礼に何か1つ願い叶えてあげるよぉ」
「え、なんでも? あなたが?」
「なんでもぉ。国1つ欲しいぃ?」
この世界のネコ凄いですわね。
「何でもできるというなら、先ほど土煙が上がっていたところまで連れて行ってください」
本当にできるとは思えなかったけれど、できたらラッキーです。
「ここぉ?」
「えっ?」
瞬き1つする間に景色が変わり、私の目の前には土砂崩れがあったような土の山ができていました。いえ、よく見ると、周りの土地がえぐれて真ん中に積みあがったようになっています。
「なに、これ……は……レン、レン!」
私は痛む足を引きずって、土砂の周りを囲むように歩いて、レンを探しました。
「レン!」「レン!」「レ……レン!」
土砂の中から右腕が伸びているが見えました。手にはアクアマリンのついた送信用魔法石を持っています。体の他の部分は全て土砂の中に埋まっていました。
「いやあぁ!! レン! レン!」
両手で土石流を掘ほうとして、右手にベルを持っているのに気が付きました。
「お、応援を、応援を呼ばなければ」
私はベルを思いっき1り振りました。
ガッラーン ゴローン
「うるさいぃよぉ」
白ネコが耳を塞いでいますが、構っていられません。
「レン、今応援来るからね。もう少しの辛抱ですわ」
私はレンの手を握りました。
「冷たい……」
お読みくださりありがとうございました。
暑いですね。でもクーラーをつけると寒いです。
温度調整がうまく出来ません。




