30.おやすみの後で
お越しくださりありがとうございます。
楽しんでいただけましたら何よりです。
「お嬢様、そろそろ就寝のお時間です」
実験が終わるころには、月もかなり上の方へ移動していました。
もう少し一緒にいたい。
貴族の子女として、そういったわがままは許されませんわね……。
二人で顔を見合わせ、無言で立ち上がると、サラ=アンの後に続いてゆっくり並んで歩きました。
たくさん話したいことがあるような、いざ言葉にしようとすると出てこないような、もどかしい気持ちでいっぱいです。
レンも何も話してきませんでした。
ああ、部屋に着いてしまったわ。
ドアの前で向かい合って立ち止まりました。
「……」
「……」
無言の時間が続きます。サラ=アンはいつの間にかいなくなっていました。
先に沈黙を破ったのはレンでした。
「あー……、じゃあ、ね。僕は行くよ。いい夢を」
頭に手を乗せ、ぽんぽんと優しく叩いてくれました。
「ゆっくりお休み、セリーヌ」
「レンも、今日はお疲れ様。ゆっくり休んでね」
「……」
「……」
クスッ。ついお互い笑ってしまいます。
「これではいつまでたっても離れられませんわね」
「その通りだね」
レンは首の後ろを掻きながら目線をそらせました。
「えーっと……セリーヌが中に入ったのを見届けてから僕も帰るよ」
「はい。おやすみなさいレン」
「おやすみ、セリーヌ」
部屋に入り、ドアの前で立っていると、しばらくしてレンの足音が遠ざかって行きました。
ベッドに入っても目が冴えて全く眠れそうにありません。
改めて、送受信用魔法石を眺めます。
送信用が私の瞳の色のエメラルド、受信用がレンの瞳の色のアクアマリン。
レンったらロマンチストですわね。
二つ並べていると、二人で寄り添っているようです。
見ていたら、受信用のアクアマリンが光りました。
こんな時間にレンからメッセージ?
ドキドキしながら受信用魔法陣を右手の親指で押しました。
「セリーヌ=マクライン」
呪文を唱えます。
「オキテル(起きてる?)」
早速返信します。
「オキテルレンモネレナ(起きてる。レンも寝れないの?)」
文字を超過してしまいました。
慌てて追加して「イノ」を送信します。
「いけない! 前のメッセージ聞く前に次の送ったら消えちゃうのだったわ」
どうしようとワタワタしていると、レンから次のメッセージが来ました。
「ホクモネムレナイ(僕も眠れない)」
良かったです。ちゃんと聞いた後だったようです。
「ナニシテイルノ(何しているの?)」
「セリーヌノコトオモテル(セリーヌの事思ってる)」
顔が見えないのに、電子音なのに、目の前でレンが言ってくれているようで照れてしまいます。
しばらくやり取りしていたら、気づけば眠ってしまったようでした。
起きるとアクアマリンが点滅していました。
「セリーヌ=マクライン」
合言葉を唱えます。
「アイシテルセリーヌ(愛してるセリーヌ)」
あ、朝から聞くには少々私には刺激が強いですわ。
「失礼します。あらお嬢様顔が赤いですが、お熱でもあるのですか?」
入ってきたサラ=アンにとても心配されてしまいました。
トン、トン。
ちょうど支度が終わるころ、ドアがノックされました。
サラ=アンが扉を開くと、レンが立っていました。
「ムカエニイク(迎えに行く)」
と連絡を貰っていたので、自然と迎えられました。
「おはよう、レン」
「おはよう、セリーヌ。よく眠れた?」
「ええ、ぐっすりよ。レンは?」
「ああ。僕も良く寝られたよ」
その割には、目の下のクマが昨日よりも濃くなっている気がします。
そのことを指摘したら、首の後ろを掻き始めました。
「実は、君の最後のメッセージを何10回とリピートしていたらあまり眠れなくって。はは」
「最後に私なんて送りましたの?」
最後の方、何と送ったのか全く記憶にありません。
最後の記憶のメッセージを思い返します。
「アシタトオルモリ」
「セリーヌスキナミアル」
多分、帰りに通る予定の道に、私の好きな果物がなる森があると、言っているのだと思いますが……。
「最後のメッセージで「サミシイレン」で送ってくれたよ」
それの返しで「アイシテルセリーヌ」でしたのね!
無意識のセリーヌ、かなり大胆なようです。
お越しくださりありがとうございます。
気に入っていただけましたら、評価お願いいたします。




