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28.月明かりの下で

お越しくださりありがとうございます。


私が短文をサクサクページをめくりながら読むのが好きなので、1話を大体1500文字から2500文字に収まるように気を付けながら描いているのですが、たまに納まりきらない時があります。

今回かなり中途半端に続くとなっています。

 図書室に戻ると、レンはまだ2階の魔法陣コーナーの前で作業をしていました。


 私はそこを素通りすると、3階の個室へ行き食事の用意をしました。それから読みかけの本を手に持って2階に下ります。

 レンが作業をしている横の床にペタッとおしりを付けて座りました。

 ふかふかの絨毯の上にレンの作業用に敷物が敷いてあるので、なかなか快適な座り心地です。 

 でも令嬢らしくないお作法ですわね。いけないことをしている気分になります。

 それだけで、なんだかワクワクしてきました。

 ふふ。前世では一度でいいから図書館の床に座って本を読んだり、お泊り会なんかしてみたかったのでしたわ。夢がかなうとは思いませんでした。


 昨晩図書室に来た時は、上の階のランプは消えていたのですが、今日は私たちの為に点けてくれているので、窓辺でなくても本が読めそうです。

 司書さんが図書室に入った時にまだいたので、帰っていただきました。

 無駄な残業はいけません。レンに「閉館です」というわけにもいかず、帰るに帰れなくなっていたようです。ひたすらペコペコお辞儀をしながら出ていかれました。


 今図書室にいるのはレンと私だけ。

 記憶がまだ戻っていない私にとって、レンとの思い出は昨日と今日だけ。

 でももうずっと一緒にいたかのように、レンのそばは落ち着きました。


 天井ガラスから月が見えています。昨日より少し細くなった気がします。

 月はレンに似ていますね。

 銀色の長い髪とアイスブルーの瞳。切れ長の目は、笑っていないと冷たい印象を人に与えるけれど、笑った時の優しくて私を安心させるところなんかそっくりです。

 月明かりに照らされるレンは、なんだか月の精霊のようです。


 ずっとこうしていたい。


 月が少し天井に近くなった頃、

「ぶつ……ぶつ……え、あ、セリーヌ! え、あ、暗い! ごめん。長い間放っておいてしまったね」

「ふふ。構いませんわ。レンの作業している姿を眺めているのは楽しかったですわ」

 レンは首の後ろを掻きました。

「それより、お腹すいたのではありません? 個室に夕飯を用意しましたわ。食べましょう」

 レンは今気づいたかのようにお腹をさすりました。

「待っていてくれたの?」

「お父様とロバートがそれは許して下さらなくて。家族で食べましたわ。ごめんなさい」

「いや。謝るのは僕の方だ。じゃあいただこう」

 レンが私の手を取ろうとし、自分の手が汚れているのを見ると、首の後ろを描きました。

「え、あー、行こうか」

「ふふ。行きましょう」

 私はレンの腕を取って並んで歩きました。


 サラ=アンが用意してくれた夕食は、手でも食べられるよう工夫された一口サイズのパイやお肉、カットフルーツなどでした。

 カトラリーの中にしっかり浄化用魔法石も入っています。

 汚れの他に雑菌類も瞬時に取り除いてくれますし、浄化後フレグランス効果もあるというとっても優れモノです。

 私は隣でアイスティーをいただきます。

 レンは上品に、且つ流れるように素早く食事を平らげていきます。

 男性がたくさん食べる姿、見ていて気持ちいいですね。

「うまく修正できました?」

 レンは最後のフルーツを咀嚼し、アイスティーを一口飲むと話し始めました。

「ああ、かなり改善できたと思う。さっき一人で試した時はうまく行ったんだ。微調整したいから、実験に付き合ってくれる?」

「もちろんですわ」

「ありがとう。じゃあ早速始めようか。時間が惜しい」

 レンはナプキンで口を拭うと、手早くバスケットにプレート類を詰め込みました。テーブルをきれいにすると、その上に4つの魔法石を並べました。

 「こちらが、セリーヌからのメッセージを送受信するセット」

 こちらは先程見た、エメラルドのはめられている円盤の魔法石(送信用)と四角い魔法石(受信用)でした。

「そうして、こちらが僕のメッセージを送受信するセット」

 形は私のと全く同じですが、エメラルドの代わりにアクアマリンがはめ込まれていました。

「じゃあセットしようか」

 レンがお互いの受信用魔法石を交換しました。

 私の手元には、私用メッセージ送信用魔法石と、レン用受信魔法石があります。

「受信用は受ける人の情報を記録しなくては、聞けないからね」

 確かに。私の受信用魔法石に私の情報を入れてしまうと、レンが聞こうとするたびに私の指紋と合言葉が必要になってしまいます。

「まずは魔法陣の真ん中に何でもいいから記号を書いて。セリーヌの識別番号と連携されるようにセットしてあるから」

 正直仕組みはさっぱりわかりません。でもレンの言う通りにしていたら大丈夫でしょう。

 私はこの世界の文字で「セリーヌの«セ»を書きました。

 あら、わたし文字も違和感なく書けますわ。読めても書けないのではと懸念していましたが、何も問題ありませんでした。

「じゃあ僕は自分のイニシャルとセリーヌのイニシャルを組み合わせようかな」

 レンは«レ»と«セ»を組み合わせた、なんだか素敵なレタリングデザイン文字を作成しました。

「レンのその文字、素敵ですわね。私も同じのに書き換えたいのだけれどできます?」

「いいね! セリーヌとおそろいだ。もちろん書き直せるよ。本人だけ消せるようになってるから、また消して書き直せばいいよ」

 私は連の言う通りに消し、レンのレタリングを真似して書いてみます。

「ぶほっ……んっん……。初めてにしてはうまくかけているよ」

「レン、笑いが堪えきれていませんわよ」

 出来上がったレタリングは、文字というよりミミズの大群のようです。

 つまり、気持ち悪いです。


 私に美術の才能は無いようです。

お読みくださりありがとうございます。


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セリーヌが生まれる前のサラ=アンの物語を不定期で連載しています。こちらもどうぞ!

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