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26.嬉しそうで何よりですわ

お越しくださりありがとうございます。

セリーヌとレンの物語まったりゆっくり進んでいます。


「音だけを飛ばすか。両方の魔法陣に同じ暗号を文字ごとに設定すれば……」

 レンは書類を端に置き、すっかり体ごとこちらを向いて考え始めました。

「……できる可能性は、あると思う」

「本当ですか?」

「ただ……」

 レンは思案したまま話し続けます。

「それだと確かに重さの問題は無くなるが、風魔法は少しの力でもフワフワとあちこちへ行ってしまう。近距離なら問題はないが、遠距離となると難しいな」

「では光ではどうでしょう?」

「光? 光魔法は癒しの力で、何かを運ぶ力はないよ」

 そういえば、こちらの世界での光魔法とは聖女の使う癒しの力でしたね。

「光と言っても光魔法ではありません。雷魔法です」

「雷魔法?」

「はい。雷の速さは風とは比べ物にならないくらい早いです。外部からの干渉を受けないほどに一瞬で目的地にたどり着きます。その力は使えないでしょうか?」

 レンはしばらく考え込んでいます。

「……なるほど。やってみる価値はあるね。早速雷魔法石を取りに行こう」

 レンは素早く立ち上がると、私の手を取ります。

「レン、書類は?」

「もう終わったよ」

 私の婚約者様、恐ろしく優秀です。


 備品室へ行くと、まずは先ほど借りた風魔法石を緑の回収ボックスへ入れ、今度は手のひらサイズの丸い雷魔法石を2つ、長方形のを2つ選び、受付をします。

 受付には、先ほどと同じ責任者のおじさまがいました。


 使用目的が『雷魔法石を使用した、遠距離への高速郵送実験のため』と、先ほどと魔法石の種類だけが違う同じ理由なのを見て、ニヤァ顔で承認印を押してくれました。

 うるさいですわよ。顔が。

 でもそんなことに構ってはいられません。もう明日にはレンは行ってしまうのですから。

「愛だねえ」

 なんてセリフも聞こえませんとも!


 図書室の魔法陣コーナーへ行き、まずは参考になりそうな本を探しました。

「レン、これなんかどうですか?」

「『遠隔から暗号を操作する魔法陣言語』か、確かにこれとくっつき合う魔法陣を組み合わせれば……」

 図書室には私が書籍を探してはページをめくる音と、レンが紙に描いては試行錯誤する音だけが響いていました。


「そろそろ休憩なさってはいかがですか」

 サラ=アンが紅茶とお菓子を持ってきてくれました。

 いつの間にかお茶の時間になっていたようです。

 私は人差し指を口にあて、「しー」のポーズをしました。

 レンが集中して魔法陣を描いています。さきほど書類を見ている時の顔とは違い、イキイキしています。

 本当に魔法陣が好きですのね。

 私はレンが魔法陣を描く様を飽きずにずっと見ていました。


「できた!」 

 レンが顔をあげたのは既に夕焼け色に空が染まる頃でした。

「じゃーん、どう?」

 レンの指し示すテーブルには、2つ魔法石が置かれていました。

 1つは、周りに5つの突起と、1つの小さなエメラルドが等間隔で配置た丸い魔法石で、もう一つは短辺部分に少し大きめのエメラルドが1つだけ配置された長方形の魔法石でした。

「短時間で素晴らしいですわ」

「ありがとう。でもちゃんと発動するかは試してみなくちゃ分からないからね。早速実験してみよう」

 レンが細長い魔法石を渡してくれました。

「どうやって使用しますの?」

「セリーヌに渡した方は受信用だよ」

「では私からは送れないのですね」

「さすがにこの短時間で送受信できる魔法石は作れなかった。もし実験に成功したら、もう1セット作るよ。さあ時間が惜しい。早速実験だ」

 雷の魔法です。対策はしているそうですが、もし当たってケガをしてはたまりません。まずは外で実験です。

 受信側魔法石は石畳の上に置き、少し離れた場所から送信します。

「どうやって送信しますの?」

「周りの5つの突起がそれぞれ上から時計回りに「ア行」「イ行」「ウ行」「エ行」「オ行」となる」

 さすが日本の作品の中です。文字の形は違いますが、この世界の文字は「あいうえお」でできています。

「例えば「おやすみ」だったら、「オ行1回」「ア行8回」「ウ行3回」「イ行7回」それぞれ突起を押す」

 レンは早業で躊躇なく突起を押していきます。突起を押すたびに、性別不明な電子的な音声が「あ、か、さ、た……」と文字を読み上げていきました。私にはあいうえお表が必要が無いと押せなそうです。

「終わったら最後に真ん中の自分の識別記号を、予め設定した指で押す」

 レンが右手の人差し指で魔本陣の真ん中を押すと、音もなく細い光線が空へ向かって打ちあがりました。と思ったらすぐに魔法陣のエメラルドが光り始めました。

「よし、受け取ったみたいだ。確認してみよう」

 受信用魔法石にゆっくり近寄ってみます。受信用魔法石のエメラルドも光っていました。

「送信完了。受信完了で宝石が光るようになっている。受信ちゃんとしているようだね」

 しばらく様子を見てみましたが、特に感電しそうな雰囲気はありません。

「聞いてみるよ」

 レンは、警戒しながら受信用魔法石の真ん中をゆっくりと右手の人差し指で押し、あらかじめ決めた解除ワードを口にしました。

「セリーヌが可愛い」


 実用化の折には解除ワードを変えてもらう事にしましょう。


 ザザ……

 小さなノイズの後、声が聞こえてきました。

「オ……ヤ…ズㇲ……ミィィ……」

「う、わぁ……」

 ちょっと夢でうなされそうな、ホラーテイストな声です。

「よし! 成功だ!」


 レンが嬉しそうで何よりですわ。

お読みくださりありがとうございます。

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