23.二人の絆
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セリーヌとレンの物語、のんびり進行中です。
そういえば、昨晩の夕飯の態度もどこかレンに冷たかったですわね。
「僕は自分のことを過信しすぎていたらしい。考えていたわけではないけど、君の家を「断らないだろう」と、心の中で見下したのかもしれない。きっとそんな傲慢な僕の考えを君のお父上は感じ取ったんだろうね」
いえ、お父様はとてつもない親ばかなだけな気がしますわ。
それにしても、
「伯爵家が、家格が上の公爵家の申し込みを拒否などできるのですか?」
「本来なら難しいだろうね。でもマクライン家はお母上が王家の血筋を引いているし、交易の要である港を抑えているからね。それでもこちらから無理やり婚約を結ぶことはできなくはないけど……」
レンは私の目をしっかり見て言いました。
「僕が君に無理強いをしたくなかったんだ。君自身が僕を選んで欲しかった」
レンはやにわにポケットから魔法陣の描かれた魔法石を取り出しました。
「これは、先ほどお話に出てきた魔法石なんですの?」
「そうだよ」
「本当にきれいな魔法陣ですわね」
「2年前にマクライン伯爵からやっと婚約の了承を得るまで、これを見ては君のことを思い出し、ずっと自分を鼓舞してきた。君と絶対結婚するんだってね。勉学、剣術の他に父上から領地経営を直に学び、功績を残して。そうして2年前にやっと君のお父上に婚約誓約書に印を押してもらえた」
「まあ、婚約までに4年もかかりましたの?」
「長かった……その間に君を狙うものがいるという噂を聞いたら排……ん、んっ。穏便に話し合ったり」
いま「排除」と言おうとしました?
「頑張りましたのね」
「君もね」
「私もですか?」
「家格的にも釣り合いが取れているからと了承は貰ったけれど。さっきも言ったけど、父は厳しい人でね。公爵家に入ったあと家を没落させるような令嬢は、いつでも婚約破棄させる腹積もりだったらしい」
ただでさえ君の父上に難色を示されていると言うのに、その上うちの父がそんな考えだと知られたら速攻断られてしまうと思うと気が気じゃなかったよ、とレンは笑って言います。
「でも、うちの父のそんな黒い腹積もりを知った後でも、君は僕を見捨てなかった」
私の頭を優しくなでてくれます。ずっと撫でてもらいたくなる心地よさです。
「君も僕との婚約を認めてもらうために、嫌いなマナーや礼儀作法を頑張ってくれたしね」
「そうなんですの?」
「そうなんだよ。初めて出会ったときは平民のような話し方だったし、口いっぱいにクッキー詰めていた君がね」
いたずらっぽく笑うと、私の口の端についていたらしいかけらを取り、自分の口に持って行きました。ペロリと舌を出しました。
「そういう君も可愛くて大好きだけどね」
ぼんっ! 一気に顔に熱が集まります。
し、刺激が強いですわ!!
そういえば、朝食の後にお母様に耳打ちされたセリフを思い出しました。
『セリーヌ、タレンツィオ君が残ると言っても承諾してはいけませんよ。将来公爵家の嫁になるからには、きちんと夫を管理できるところを向こうのご両親に見せなければ。分かりましたね』
お母様も公爵様の腹積もりをご存じだったのですね。
「それが今では王妃教育に匹敵する教育まで完了してしまったんだから、うちの父上ももう何も言えないよね」
レンは、ざまあみろだ、と少し意地悪く笑うと、私の髪を一房掬いました。
普段と違うニヒルな顔や仕草も、とても似合っています。
「僕の為に素敵なレディになってくれてありがとう」
キスをされた髪の先から熱が体中に駆け巡ったように熱くなりました。
「僕も僕を変えてくれた君だけの為に、いい男に成長していくから。早く思い出してね」
そのままレンの手は私の頬に触れ、顔が近づいてきて……。
「お茶のお替りお持ちしまっした~!」
サラ=アンが私たちの間を離しました。
まだ心臓がバクバク行っています。
レン、舌打ちは止めた方がよろしくてよ。
さて、ランチも終わり、早速魔法陣を描いていくことにします。
レンは先ほどの魔法陣セットを取り出しました。
「先ほど聞き逃してしまったのですが、その茶色い束は何ですの?」
「よく聞いてくれたね。この木製プレートの束はね……」
要約しますと、様々なサイズの円定規だそうですわ。
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レンの回想が終わりました。
レンとセリーヌが両方の父親に認めてもらうために二人で頑張った物語、いつか書いていきたいです。




