22.オレンジの香り
お越しくださりありがとうございます。
レンの回想が終わりました。
セリーヌとレンの物語、のんびり進行中です。
なんだか話を聞いていくうちに、レンの語彙力が低下していきましたわ。
レンは私の隣に座り、ピックに刺さったオレンジを私の口に入れてきました。
あまりの早業に恥ずかしがる暇もありません。
「あの頃のまま、セリーヌはオレンジのいい香りがするね」
「レンの方が柑橘系のいい香りがしますわ」
「いつもセリーヌをそばに感じていたくてね。セリーヌをイメージした柑橘系の特注した香水を毎日つけているからね」
レンったら、なかなかのセリーヌ強火担ですわね。
知っていましたけど。
今は図書室の3階の奥にある個室に移動して、サラ=アンの運んできてくれたランチを二人で食べています。
お茶を飲みながら本を読むためにしつらえた部屋のため、ゆったり腰かけられるソファと、丸テーブルが1セット置かれただけのこじんまりとした部屋ですが、広めの窓から入ってくる日差しは暖かく、とても居心地のいい空間となっていました。
というか、マクライン家のお部屋どれも広すぎるんですわ。前世の記憶を思い出したからか、こういったこじんまりとした部屋って落ち着きますわ。
ランチは、手で持ちやすいように紙で包んだBLTサンドと、これまた手でつまみやすくピックを差したカットフルーツとピクルス、そして冷たいレモネードでした。本を読みながら食べるのを考慮したラインナップです。
氷の入ったレモネードを、寒い日に温かい部屋で飲むのって最高の贅沢ですわね。
図書館の本を物を食べながら読むのはなんだかためらわれますが、サラ=アン曰く、全ての本に防水・防火に加え汚れ防止の魔法が付与されているのだとか。
「僕はあの日あの瞬間に、セリーヌ、君が欲しいと思った。誰かに取られる前に婚約を結んでしまわなければと焦ったんだ」
レンの回想が続きます。
レンはサンドウィッチの最後のひとかけらを飲み込んで、包み紙をくしゃくしゃに丸めました。
「だから、その日のうちに婚約申込書を作成して、父上の承認印をもぎ取った」
婚約申込書って、貴族間の婚姻ですし、多分契約書のようなものですわよね。
え、レンってこの時まだ8歳ですわよね?
レンったら、とてつもなくハイスペックですわ。
「お父様は厳しい方なんでしょう? 良くその日のうちに承認が下りましたわね」
「僕にとって幸いなことに、僕も世間の令嬢たちから見て優良物件だけど、父上からみた君は、というかマクライン家は、派閥的には中立だし、古くからある名門の家で、王家の血筋も引いている。公爵家にとって優良物件だったというわけさ」
レンの少し蔑んだ物言いが気になります。
「うちの父上は僕も含めて全ての事象を「公爵家にとって損か得か」でしか見れない人なんだ」
でも、とレンは話を区切りました。
「僕はセリーヌがどんな家柄であっても、たとえ平民であってもセリーヌを選んだ。婚約に障害が無かったのは喜ばしいことだけど、血筋やら家格なんか関係なく、セリーヌが良かったんだ。セリーヌだから結婚したかったんだ。それだけは信じて欲しい」
レンが私の左手を自分の両手で包み込みました。
「はい」
昨日今日だけで、十分すぎるほど伝えてくれています。
でも、レンをそこまで惚れさせた過去の私の事何も知らないのって寂しいわね。
昨日からなんだかモヤモヤしています。
私、過去の自分に嫉妬しているのかも。
早く思い出したいですわ。
モヤモヤを吹き飛ばそうと、オレンジをひとかけら口に含みます。
甘酸っぱい爽やかな味が口いっぱい広がると、少し気分が落ち着きました。
「では、私たちの婚約はとてもすんなりと整ったんですのね」
ここでなぜかレンが渋い顔を作りました。
「何かありましたの?」
「まさか、マクライン伯爵から難色を示されるとは思わなかったよ」
「まさか!」
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