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20.レンの回想①

お越しくださりありがとうございます。


ただでさえ進みが遅いのに、回想まで入りました。

すみません。

しばらくは、ゆっくりのんびり朝の連続テレビ小説的に進んでいく予定です。

~ レンの回想 ~


 あの日は、第二王子フィリップ=エヴァン=ブレジール主催の子ども達のためのお茶会だった。 


 僕も王都のタウンハウスにいる間は、普段からフィリップ殿下の遊び相手として王宮に招かれていたから、僕のような他の子息達と一緒に参加しなければならなかった。


 集められたのは、8歳前後の国内でも有力な、伯爵家以上の貴族の令嬢たち。

 要は将来の王太子の最有力候補であるフィリップ殿下の婚約者探しさ。

 政略結婚するにしても、気に入った子の方がいいからね。両陛下の親心かな。

 そこに集められた令嬢は、どの子も王族派で、家格的に王太子妃として問題のない令嬢ばかりだった。


 お茶会は王宮内のバラ園で行われた。

 令嬢たちの香水の香りと混ざって、会場に入った途端思わず鼻を抑えそうになった覚えがあるよ。


 紳士としてどうにか踏ん張ったけどね(笑)

 

 子供だけのお茶会と言っても王室主催だからね。

 豪奢に飾り付けられた丸テーブルが並び、楽団までいた。

 最高級の素材を使用した宮廷料理は、人の移動の邪魔にならない場所に用意され、宮廷料理長が待機しているという破格のおもてなし。

 でも、料理は誰にも見向きもされていなかった。


 美味しいのにもったいない。もしオレンジクッキーがあったら後でもらって帰ろう、なんて考えてた。

 

 でもそんな悠長な気分は、あっという間に吹き飛んだ。


 実はこのお茶会が僕にとって初めて一人で出席するお茶会だったんだ。大抵は両親と一緒だったから。


 だからこの後の展開を全く予想していなかった。


 令嬢たちも家族から「絶対に物にしてこい」と家名を受けて望んでいるんだろう。

 そりゃ必死にもなるよね。


 フィリップ殿下はもちろん、自分でいうのもなんだけど、僕も他の子息たちも優良物件だから。


 フィリップ殿下の開会のあいさつが終わったと同時に、目をギラギラさせた令嬢たちにがっちり周囲を囲まれた。

 怖い……。

 僕の興味を得ようと、必死の形相の令嬢たちの圧が僕を覆いつくした。


 他の令息たちはと見ると、

  フィリップ殿下は、優しい笑顔でスマートに対応しているし、

  騎士団長子息のマクガイア=ダンブルは、その威圧的な態度で、そもそも令嬢を近寄らせていなかった。

  侯爵子息のランバード=ルーヴィングは、女の子に囲まれている状況を楽しんでいるし、

  宰相子息のオズワルド=ベルディックは、早々に気の合う令嬢を見つけたようで、ずっと2人で楽しそうに話していた。


 僕だけ場になじめていない状況が辛かった。


「……ですの。今度ご一緒にいかがですかタレンツィオ様」

「それよりも、王都で話題の騎士と姫の実際に合った恋物語を題材にした観劇に先日お母様に連れて行ってもらったんですが、凄く素敵でしたの。今度ご一緒しませんか?」

「まだその観劇を話題にしていますの? 今の最新は、新人歌手オマーリが話題をさらったオペラ、屋根裏の怪人ですわ。私のお父様が後援をしていまして……」

 バラの香りと、香水と、装飾過多な色とりどりのドレスと、会話の端々に毒の混ざった美辞麗句。

 色々と限界だった。

 吐きそう……。

 心を落ち着かせるため、いつも持ち歩いている魔法陣の描かれた魔法石を触ろうとポケットをまさぐった。

 この魔法石は、魔法陣を知った4歳の頃の僕が初めて僕が描いたもので、いつもおどおどしていた僕が、心を落ち着かせるため描いた魔法石だった。もう魔力は残っていないはずなのに、触ると落ち着いたんだ。

 でも、ポケットの中に魔法石は無かった。

 落とした?

 もう令嬢達の話も全く聞こえてこなくなった。平衡感覚もおかしくなり、一瞬よろめきそうになり……。


 その時、背中をそっと支えてくれる者がいた。

 王宮の侍女かな?

 メガネで顔の造形がいまいち分からなかった。

 亜麻色の髪をぴしっと後ろでまとめ上げいかにも優秀そうな雰囲気を醸し出していた。


「あちらに公爵様の使者がお待ちです」

 彼女は、皆に聞こえるくらいの声で言伝を僕に伝えてきた。

 正直、助かった! と思った。

「すまないね。どうしても行かなくてはならない用事ができてしまったようだ。名残惜しいが、失礼するよ」

 「えー」とか「すぐ戻ってきてくださいね」という令嬢たちの言葉に返事することなく早々に背を向けて侍女の後に続いた。


 逃げたい気持ちが強すぎたんだ。


 警戒を怠っていた。


「……どこに向かっているんだい」

 女は、黙々と歩き続けた。

 

 最初は王宮内のゲストルームに向かうと思っていた。それが、どんどん庭園の奥へと進んでいく。この先は、昔の王が愛妾との密会の為作らせたという迷路のように入り組んだ庭園がある。密会用とあって隠れる場所もたくさんだ。


 しまった。罠か。


 王太子ほどではないにしろ、公爵家も敵は多い。 

 僕は護衛も付けず、その場から逃げ出したい一心で見知らぬ侍女に付いてきた事を後悔した。


 何度か同じ道を歩いた。

 僕をかく乱させようとしているのか。

 だが、3歳からずっと遊んでいる庭だ。僕が迷うはずがないとは知らないのか。

 もしかするとこの女は、金で雇われただけの捨て駒かもしれない。他に仲間が現れて誘拐されたりする前に逃げ出さなければ。


 後じさりした時、

「こちらでございます」

 侍女は立ち止まり、植木の一角を指した。

 そこには、暗殺者が持つにしては鮮やかなピンクのリボンが見えていた。

「??」

 今逃げても捕まる。そう判断した僕は、相手を刺激しないよう、言われるまま植木の裏へゆっくり近づいた。


 ピンクのリボンを目で追っていくと、


 ベンチにちょこんと座る、綺麗なエメラルドグリーンの瞳をまんまるに見開いた、8歳の君がいた。

お読みくださりありがとうございます。


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