乙女ゲーム世界の不都合な真実(違)
戯れ言を思いついて小説化しようとしたんだけど面倒くさくなったので。
乙女ゲーム世界を舞台にしたお話は私もいくつか書いてますが、書く度に謎の違和感に襲われていました。
ていうか私は「正当な」断罪物は書けませんでした。
なので私が書くものは全部ギャグとかコメディで。
他の作家さんたちのお話はそれぞれ面白いのですが、やはり違和感があります。
攻略対象が馬鹿過ぎる。
悪役令嬢物ではヒロインも。
物語の構造としては自分では希望せず、やむを得ない理由で婚約した相手を真実の愛が見つかったから婚約破棄して断罪するだけです。
そして真実の愛の相手と結ばれる。
恋愛物としては定番で、ロミジュリの変形と言ってもいい。
設定を整理してみます。
ヒロイン:平民もしくは平民上がりだったり下級貴族の娘。
攻略対象:王族および高位貴族家子息。
悪役令嬢:高位貴族家息女。
攻略対象とヒロインが惚れ合って悪役令嬢をふるというだけの話です。
ではなぜ私は違和感に襲われるのか。
「なろう」の分類では乙女ゲーム物は「恋愛」になることが多いわけです。
ですがこれって本当に恋愛物なの?
違和感の理由はこれでした。
貴族社会を舞台にしている以上、平民ではなくて貴族の常識で話が動きます。
私も本物の貴族社会を知っているわけではありませんが、そういう物語を読むと大体想像はつきます。
日本の戦国時代とか江戸時代の武士も一緒なんですが。
貴族は「家」が全てで、構成員は「部品」です。
日本の武家も跡継ぎが死んだり身体が弱かったりしたら平気で養子をとって家を継がせます。
そこに恋愛の要素はありません。
結婚は家を存続させたり家同士の結びつきを確保したりするために行うものです。
なのである意味、婚約したり結婚する当事者はどうでもいいことになります。
下手すると血縁すら後回し。
王太子がヘマやって廃嫡されたら第二王子が代役として王太子になって婚約者と結婚してもいい。
だから攻略対象が悪役令嬢と婚約破棄して真実の愛の相手と結婚するのはいいとしても、王子妃にしたりするのは無理がある。
それだけではありません。
乙女ゲームの攻略対象は大抵の場合、王子とか貴族家子息とかです。
これって実は何者でもないんですよ。
貴族家を会社に置き換えてみたらよく判ります。
王家は超大企業、トヨタとかサムソンとか、あるいはそぐわないけどグーグルとかアマゾンとか。
公侯爵家は大企業ですね。
伯爵は中小企業で下級貴族は零細。
それぞれの企業の社長や会長やCEOが国王や貴族家当主です。
ということは、王子とか高位貴族家子息とかって何なのか。
「インターン」です(笑)。
まだ企業活動に参加してないし、役職があるわけでもない。
王太子が王政府の仕事をしている場合もありますが、本格的にやっていたら学園なんかには通えないでしょう。
つまりお飾り。
当然、企業や組織に関する権限もないし人事権なんかあるはずもない。
なら悪役令嬢やヒロインは?
悪役令嬢は、超大企業がその実家ともっと繋がりを太くするために将来の社長である王子と婚約します。
つまり悪役令嬢自身というよりはその家との契約です。
ヒロインは王子たちが「気に入った」ということで個人の金で雇ったバイト。
実家は吹けば飛ぶような零細。
ヒロインには何の権限もないし、そもそもその実家と取引しようがない。
それを当てはめてみるとこうなります。
会社の役職もない社長の御曹司が会社にとって重要な取引先を侮辱したあげく一方的に契約の打ち切りを宣言。
それも「相手の会社が悪行をしている」という理由で。
社長や経営陣に何の断りもなく。
そして、どこともしれないチンケな店と契約を結ぶと。
理由は「愛」。
正直言ってどん引きです。
廃嫡以前にそういうのを放置していた世話役や経営幹部の責任が問われるでしょう。
社長以下経営陣は総退陣ですね。
悪役令嬢の実家も大混乱。
やっぱり経営陣は退陣です。
はっきり言って、もう攻略対象や悪役令嬢がどうとかいうレベルではなくなるでしょう。
ヒロイン?
むしろ被害者ということで無罪放免なんじゃない?
ところで書いているうちに気づいたんですが、これって現実社会でも有り得たりして(笑)。
ラスベガスで会社の金を百億円くらいスッたという御曹司だか社長だかのニュースがありましたが、チェック機能が働かないと出来てしまうかもしれません。
実際、乙女ゲームでは王子や高位貴族家の子息がやるから廃嫡で済みますが、もし国王とか侯爵とかが狂ったら下手すると国が滅ぶかも。
そういう話もありますね。
というわけで攻略対象やヒロインが馬鹿に見えるのは、実はその実家が馬鹿なせいであることが判明しました。
そんな国、すぐに滅ぶぞ。