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いきなりお姫様!~VRMMOの世界で一人だけ悪役令嬢NPCに擬態して政略ゲーに勤しむことになりました!~  作者: 杞憂
アバター奪還編

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9話 いきなりレベルアップ!

 「では、出発ですわ!

 目指すは港町セカドンでしてよ!」


 【ドロップ】は声を張り上げるようにしてファートス王国の城下町から出発していく。

 ……とは言うものの、【ドロップ】は重要NPCという扱いを受けているわけで……


 (わー、馬車なんて乗るの初めてだよっ!?

 他のプレイヤーたちは徒歩なのにちょっと申し訳ないよね……)


 徒歩で港町へと向かうプレイヤーたちに前後左右を何重にも囲まれながら行軍となっているのだ。

 ちなみにこのクエスト、【ドロップ】が死亡した時点で失敗扱いとなってしまうため【ドロップ】を冒険者ギルドに連れてきた手前【アルタルソース】が先導してこの陣形を作り上げたのだ。


 「お姫様を守るためだからね~

 普段気楽主義な私もちょこっとばかし張り切っちゃうよね~」


 【アルタルソース】は馬車に乗り込んで【ドロップ】を守る最後の砦となるため自ら志願した。

 もちろん他のプレイヤー……主にロリコン男性プレイヤーたちも【ドロップ】と密接することのできるこのポジションに立候補していたのだが、女性プレイヤーたちの非難の目もあってか最終的には同性であり腕の立つ【アルタルソース】に白羽の矢が立ったというわけである。


 男性プレイヤーは女性プレイヤーたちの視線と評価には敏感なのであった……






 「スライムだ、俺が倒すぞ!」


 「こっちからはゴブリンだっ!?」


 「おいおい、何か向かってくるモンスターの数おかしくないか!?

 プレイヤーがこんだけ集まってなかったら絶対対処できない数だぞ!」


 【ドロップ】の馬車が進む度に増えていくモンスターたちにプレイヤーたちに恐れが広がっていく。

 それもそのはず、今回のイベントは護衛という名のタワーディフェンス形式で襲いかかるモンスターたちを薙ぎ倒していくクエストなのだ。


 「私もサポートしないと不味そうだね~?

 ちょっと見ててよ【ドロップ】お姫様っ!」


 「手柄を期待してますわよ?

 五体満足でワタクシの前に戻って来てくださいまし?」


 「任せてよお姫様~!

 こう見えて私って結構強いんだからね~」


 【アルタルソース】は戦況が不利なことを察知して最前線へ駆け出していく。

 意気揚々と鉄槍を両手で持ちながらゴブリンへと向かっていき、ゴブリンによる攻撃を許す前に一突きで心臓を貫き、そのまま他のモンスターへと凪払いながら吹っ飛ばしていった。

 

 「さらに行くよ~!

 【スウィングーLV5】!」


 【アルタルソース】は追撃と言わんばかりに槍を振り回し、周囲にいたモンスターを一気に凪払っていく。

 タワーディフェンスという形式上、出てくるモンスターのレベルが低めに設定されておりレベル差でごり押したというわけである。

 

 ただ、それが許されるレベルに達しているプレイヤーはこの時点ではそこまで多くはない。

 つまり、この長身の女性【アルタルソース】は……



 「流石は攻略組の【アルタルソース】だ!」


 「自称エンジョイ勢とはよく言ったものだ……」


 「まさか観光をスムーズにするためにレベルを上げるプレイヤーがいるとはな」


 「すげぇ……一気に負担が軽くなったぞ!?」


 (【アルタルソース】さん、強いっ!?

 あんなに強い人だったんだ……

 私もあんな風に強い女って感じになりたかったよ……

 ……よーし、こうなったら私もスキルとか使っちゃうぞ!)


 「皆様ワタクシにひれ伏しなさい!

 【拡声ーLV1】!【威圧ーLV1】!」



 【スキルチェイン【拡声ーLV1】【威圧ーLV1】】 


 【追加効果が付与されました】


 【効果が増加しました】


 (えっ、ナニコレナニコレ!?

 えぇ!?スキルチェイン!?)


 【ドロップ】が慌ててスキルを起動すると、スキルを同時に発動してしまい廃棄されるはずだったがそのままシステム上存在していた機能が起動してしまったようだ。

 【旧王国言語】スキルに匹敵するジョブである【お姫様】に不慮の事故で就いてしまったからこそ起きた玉突き事故のようなものである。



 そうして【ドロップ】の威圧が拡声によって遠くまで響き渡っていき、周囲にいるモンスターたちは全員僅かであるが動きを鈍らせてしまった。


 「おっ、お姫様からの援護だぞ!」


 「護衛対象でもちゃんと支援はしてくれるって親切仕様で助かるわ~」


 「お姫様の美声っ、最っ高っ!」


 「これって【威圧】だよな……?

 こんなに効果範囲って広かったっけ……?」


 「なんか知らんがそれはお姫様の特権ってやつじゃないか?

 重要NPCなんだし、マスクデータで強めに設定されてるとかでしょ」


 「なるほど~」


 (や、やっぱりこれなんだか強力になってたんだよね!?

 ラッキーだけどいいのかなぁ?)


 【ドロップ】はスキルチェインによる挙動を不具合か何かと懸念しており、浮かない表情である。

 抜け道で使った【威圧ーLV1】とは範囲も効果量も増えていたので当然の疑問ではあるが。



 そうして【ドロップ】による支援の甲斐もあってか一度押し寄せたモンスターたちは一掃されたようである。

 このタイミングで戦闘は一度終了した扱いとなるが、RPGでは戦闘終了時に起こることとして定番のものがこのゲームにも仕込まれている。



 【個人アナウンス】


 【【ドロップ】が level up!】


 【【ドロップ】のレベルが2になりました】


 【【ドロップ】のスキル【拡声ーLV1】の熟練度が一定に達しました】


 【【拡声ーLV1】から【拡声ーLV2】へ level up!】


 【【ドロップ】のスキル【威圧ーLV1】の熟練度が一定に達しました】


 【【威圧ーLV1】から【威圧ーLV5】へ level up!】



 「うわっ、一気にレベルが上がっちゃったよ!?

 これってパワーレベリングって言うんだよね……

 しかも【威圧】なんて一気にレベル5になっちゃったし、上がり幅が凄すぎるよ。

 なんだか申し訳ないけど、お姫様だから仕方ないよね!」


 周りに誰もいないことを確認して素の声で自分を納得させていく【ドロップ】。

 このゲームを始めてから変わったことが起きすぎていて、もはや感覚が麻痺しつつあることに気づくものは誰一人としていないのであった……

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