47話 いきなり襲撃者!
「さ~て、どんなものが集まってくるのかな?
こういう集めてもらうクエストなんてはじめて出したからワクワクしちゃうよ!
面白いものが集まってきてくれたらファートス王国の繁栄に使えるかもしれないし、みんな気合いを入れてくれると嬉しいな」
スキル【プリンセスドミネイト】で【ドロップ】がクエストを発令してから数日が経過していた。
【ドロップ】自身も【魔術師】アカウントでログインして冒険をしながら待っていたわけである。
【お姫様】である以上、好き勝手動くことが出来ないためそのアバターは王城にある自室に置きつつ、先日【お姫様】の正式な私兵となり大手を振って日の下を歩くことが出来るようになった元犯罪者アバターの【魔術師】で動いていた。
とはいえ【ドロップ】はアイテムの製作や採取などを全く触れてこなかったため、手に入ったアイテムはモンスターからのドロップ品のみしかない。
【ドロップ】はそのことを全く気にしていないが、端から見ればそれでは不十分だと指摘したはずである。
しかし、【ドロップ】が使用していた【魔術師】のアバターはプレイヤーキラーとして知れ渡っている凶悪な存在であるため、見ていた人もわざわざ教えることがなかったのだ!
好き好んで危険人物に近づくような者は稀というわけである。
「まだまだイベント終了まで時間があるし、今日もアイテムをゲットしに行こうかな!
ファートス王国を盛り上げるため、そして、格好いいプレイヤーになれるために頑張るよ!」
【ドロップ】がアバターの操作を切り替えるとピンク色のロリ巨乳姿のわがままそうな【お姫様】アバターから、青髪で長髪高身長のスラッとした戦いやすい体型の姿の【魔術師】アバターへと意識が移っていく。
【魔術師】アバターがいたのはファートス王国の王城ではなく、城下町にある宿屋の一室であった。
「こういう場所に泊まって冒険者活動をするのって格好いいよね!
本当ははじめからこうやって活動する予定だったんだけど、ようやくやりたかったことが出来て嬉しいよ!」
そのように独り言を口にしながらウキウキで宿屋の階段を降り、サービスの朝食として提供された少し固めの黒パンを口に咥えながらチェックアウトを済ましていく。
黒パンを喉に詰まらせないようゆっくりと食みながら、衣装の汚れや装備品やアイテムの不備がないかを確認して宿屋の扉に手を掛ける。
期待に胸を膨らませながら歩みを進め……
そして街に繰り出すと……
「おい、プレイヤーキラー!
今日こそお前をこの俺【パルメザン】が倒すっ!
俺のハンマーを食らいやがれ【ぶんまわしーLV18】!」
出会い頭に【ドロップ】に恨みを持つプレイヤー【パルメザン】からの襲撃が発生したのだ!
プレイヤーキラーとして悪名を轟かせていた【アイ】による影響をそのまま【ドロップ】が受け継いでしまっているからである。
アバターの見た目が【アイ】から【ドロップ】へ所有権が移った後でも変化していないため、他のプレイヤーからはこれまで【アイ】が受けてきた報復をそのまま続けられてしまう。
(わわわっ、さっそく来たよ!?
もー、いつも突然来るから困っちゃうよ!!!
冒険者ってみんなこんなに苦労してるのっ!?)
【ドロップ】はスタンダードな状態で冒険者活動をしたことがないので、これが冒険者として当たり前の光景だと思い込んでしまっている。
冒険者への完全な風評被害なのだが、襲う側も襲われる側もそのような認識の違いが発生していることなど露知らず、異様な日常的光景として繰り広げられてしまっているのだ!
(こうなったらプレイヤーキラーっぽい(?)戦闘狂みたいなロールプレイで焦ってるのを誤魔化さないとやられちゃう!
格好よくやらないとまずいよね……?)
「あはははははは!!!
今日も私の獲物がノコノコとやってきてくれたんだ!!!
【パルメザン】さん、私と楽しく遊んでくれるかな!!!
すぐに凍っちゃうなんて面白くないことにはならないでね?
【アイスボールーLV31】!」
「いや、やっぱりスキルレベル30超えっておかしいって!
廃人プレイヤーの【ペンネドラゴ】よりも高いってどんだけやり込んでるんだよ!?
【リフレクトウォールーLV20】!」
「弾くなんて新しいことをしてきたね!?
いいよいいよいいよ!
面白くなってきたじゃん!!!
ちゃんとスキルレベルも上げてきてるし、対策バッチリって感じかな!
でも、それくらいじゃ私を倒せないよ!」
(うわっ、私の魔法を弾くスキルまで準備してきたの!?
そんなことしてくる人はじめてだからつい驚いちゃったよ!
こういう風に冒険者は強くなっていくんだね!
やっぱり私も誰かに攻撃を仕掛けに行った方がいいのかな……?)
ずれた認識がまたとんちんかんな思考へと繋がりつつある予兆が見られたのだが、口にしたわけでもなく例え口にしたとしても相手側である【パルメザン】が指摘することは無かったであろう。
もはや軌道修正不可能、手遅れかもしれない……
「あはははははは!!!
跳ね返ってきたアイスボールと一緒に倒してあげるよ!
スキル発動!【アイスフレアーLV28】!
重ねてスキル発動!【ライトフレアーLV28】!」
【スキルチェイン【アイスフレアーLV28】【ライトフレアーLV28】】
【追加効果が付与されました】
【効果が増加しました】
【ドロップ】が放ったのは氷と光の放射魔法である。
杖から放たれた力の奔流がリフレクトウォールによって跳ね返されたアイスボールごと粉砕し、そのまま襲撃者である【パルメザン】を巻き込みながら消滅させたのであった!
「ふぅ~、何とか勝てたよ!
やっぱりこのスキルチェインっていうの強いよね~!
消費も二倍になっちゃうけど、威力が凄く上がるし便利過ぎるよ!
こんなのを使えるなんてラッキーだね!」
スキルチェインは本来古代王国語をマスターしないと使用できないシステムなのだが、【ドロップ】の初期アバターが【お姫様】だったということもあり教養としてマスターしている設定になっているのだ。
そんなことなど知らない【ドロップ】はスキルチェインを度々使用しているが、事情を知っている者が見れば即倒してしまうような光景であった。
そんな【ドロップ】だが、プレイヤーキルに成功した報酬として相手の持っていたアイテムが手に入ったようで……
「えっ、珍しそうなアイテムが手に入ったよ!?
【スライムの黄金核】だって!
こんなに凄そうなアイテムを貰っちゃっても良かったのかな……?
ありがたく貰っちゃうよ!」
……何やらまた一騒動起きそうな予感の幕引きである。
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