表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いきなりお姫様!~VRMMOの世界で一人だけ悪役令嬢NPCに擬態して政略ゲーに勤しむことになりました!~  作者: 杞憂
アバター奪還編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/48

26話 いきなりメイド徴兵!

 「ふ~っ!

 演説なんとか無事終わったね!

 流石にあんなに大人数の前で喋ったことなんてなかったし、噛んじゃわないかドキドキだったよ……」


 

 【プリンセスドミネイト】の効果によって判明した公式イベントの内容を演説風にプレイヤーたちへと告知し終えた【ドロップ】であったが、ドキドキしたと本人が言っていたわりにはポーカーフェイスを無意識に駆使していたため、誰にもそのドキドキは伝わっていなかった。

 ここまで隠し通せるのはもはや天性の才能と言えるであろう。



 「今回は流石に【王様】も積極的に動いてくれたし、【王様】直属の騎士団が調べてきたモンスターの傾向を他のプレイヤーに伝えられたのは棚からぼたもちだったね!

 じゃなかったら完全に私以外のプレイヤーに仕事を投げるだけの無責任な悪役令嬢だったからね……

 ……ってあれ?

 それはそれで良かったのかな?」

 


 NPCに完全に偽装するという目的であれば、【わがままお姫さま】として情報集めなどもプレイヤーに任せるのは手だったかもしれない。  

 だが、ファートス王国の存亡に関わるタイミングでそうしてしまった場合には多くのことが手遅れになっていた可能性は高い。

 ……もっとも、プレイヤーである【ドロップ】の善性のことを鑑みれば、偽装することを頭に置いていたとしてもやはり同じ行動をしていたであろうが。

  


 「じゃあ、もう戦線で戦いが始まってるみたいだしさっそく顔を出してみようかな!

 こういう時にチラッと顔を出したら特別なNPC感あるよね~!

 ここまで来ればとことんNPCの【ドロップ】を演じちゃうよ!」


 そう言いながらズカズカと自室から出ていこうとした【ドロップ】であったが、扉を開けた先ではメイドの【カノン】は当然のように待ち構えていた。

 


 「姫様……?

 どこに行かれるおつもりで?」


 【カノン】はジト目になりながら【ドロップ】が出ていくのを食い止め、呆れたように問い詰め始めた。

 この状況であれば【カノン】にも予想がついていることであるのだが、仮にも目上の者が相手であるため前置きは必要なのである。



 (えー、これ止められちゃうパターンだよね!?

 「危険なので行くのは止めてください」とか言われそうだよ……

 でも、せっかく自分が起こしたイベントなんだからどんな風になってるのか確認したいよ!)


 「当然防衛戦線ですわ!

 ワタクシが率いる異郷の冒険者たちが、どのような活躍をするのか見たいと思うのは当然のことではありませんこと?

 【カノン】、ワタクシを各々の戦線まで案内してくださいまし!」


 

 【ドロップ】はイベント中部屋に引きこもることを強要されると思い先手を打って【カノン】に戦場を案内させようとしたのだ。

 城働きのメイドに戦場の案内などアンマッチにも程があるのだが、プレイヤーである【ドロップ】は王族でもなくその辺りのことについては何が正しいのかよく把握していないためこのような奇妙な要求をしてしまったわけである。

 当然、【カノン】もそれを理由に断り【ドロップ】を諫めようとしたのだが……



 ……ここで運命の女神の悪戯が二人の運命を狂わせ始めたようだ。







 【スキル【姫のわがまま】が発動しました】



 「かしこまりました。

 【ドロップ】様のご意向であれば私自ら姫様を案内させていただきます。

 姫様に取っても危険な場所となりますので、入念な準備をお願いいたします。

 ……まずは、私も色々と準備する必要がありそうですね。

 ……はぁ、久々の私の武器の出番がこのような形になるとは」



 スキル【姫のわがまま】はNPCに絶対服従命令を出すという強力なスキルである。

 確定ではなく確率でしか発動せず、意図しないタイミングで起動することもあるが、有無を言わさぬ命令権というのはそれを加味しても破格と言えるであろう。


 スキル【姫のわがまま】による命令を受けたメイドの【カノン】は拒否することを許されず、【ドロップ】のいる部屋から去る際にため息を漏らしながら退出していった。

 突然のわがままにさらされる不憫な立場である。


 そんな【カノン】を横目に【ドロップ】はガッツポーズを取っていた。


 「また【姫のわがまま】に助けられちゃったね……

 本当はもっと別のことに使ってみたいんだけど、なんでか【カノン】相手ばっかりに発動するよねこのスキル!

 まあ、でも、これで外出許可が出たならラッキーだったよね!

 世話役のメイドが一緒なら他に文句を言ってくる人もいなさそうだし!」


 普通のメイドがついていったところで戦場での危険を避けられるわけではないので、実際には止められる可能性はあるのだが【ドロップ】の頭の中では完全にオーケーということになっている。

 ……今回は、特別な事情もありそのまま行けてしまうので、【ドロップ】のこの思い込みはより根強いものになってしまうことであろう。





 このことで一番頭を悩ませ、胃を痛めるのはメイドの【カノン】でも、当人である【ドロップ】でもなく、この場にいないお目付け役である大臣の【サンマー=ジュージカン】であるため御愁傷様と言う他ないのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ