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いきなりお姫様!~VRMMOの世界で一人だけ悪役令嬢NPCに擬態して政略ゲーに勤しむことになりました!~  作者: 杞憂
アバター奪還編

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22話 いきなり謁見!

 (よ、よ~し!

 準備万端……とはいかなかったけど、王様に報告出来るくらいにはなったかな?

 怒られない程度だけど、大丈夫かな~?)


 内心不安な【ドロップ】だが、王の間の前の扉に手を掛けて無表情で硬直していた。

 端から見るといつもはわがままな【ドロップ】が無表情でいるという非常に違和感のある不気味な様子だが、ただ緊張しているだけである。



 そして、意を決した【ドロップ】はその扉を開けて王の間へと足を踏み入れていった。

 

 (うわっ!?

 何ここ……雰囲気が他のところとはまるで違うよっ!?)


 それもそのはず、王の間は一国の王が座す場所として調度品、装飾品、建築構造……その全てが一級品を越えた特級品で統一されているからである。

 誰の目から見ても、一つ一つの精密さからもデザイナーの拘りが窺い知れるであろう。



 そして、その最奥で玉座に腰をかけているのは50代ほどの荘厳な雰囲気を全身に纏った男である。

 頭には華美な王冠を被り、赤色のマントに、黄金の杖を側に立て掛けているといういかにも王様という風体である。


 この人物こそまさに、【ドロップ】が今いる国……【ファートス王国】の頂点にいる【ファートス王】その人なのだ。

 【ドロップ】も事前の調査で確認していたが、【ファートス王】の名前は【カラメッラ】。

 正式には【カラメッラ三世】である。


 そんな国王の前に立った【ドロップ】は緊張した面持ちで【カラメッラ三世】と顔を見合わせている。

 【ドロップ】はどんな形で口を開けばいいのか図りかねているため、無言の時間が一分間続くこととなってしまった。


 そのことに不信感をもったのか、【カラメッラ三世】は自ら口を開き【ドロップ】へと語りかけてきた。

 

 「……【ドロップ】」


 (わわっ、話しかけられちゃったよっ!?

 とりあえずそ~っとお返事しなきゃだよね?

 王様に大声出して話しかけても引かれちゃうだろうし……

 いつもの私の【わがままお姫様のドロップ】像で……)


 「父上、ご無沙汰でしたわ!

 ワタクシ、父上に色々と買っていただきたいものがありましたので今回の呼び出しはちょうどいい機会でしてよ!」


 (こ、こんな感じでいいよね?

 王様にこんな口の聞き方は心臓に悪すぎるけど、これくらいわがままじゃなくちゃ逆に違和感あるし……

 ううっ、口から心臓が出てきそうなくらいバクバクしてるよ~!!!)


 

 【ドロップ】は他の者が行えば無礼……国によってはその場で斬首されてしまうほどの物言いで【カラメッラ三世】へと声をかけ返した。

 王様に買い物をねだるなどあってはならないことであるが……



 「……なるほど。

 今の言葉でこれまでの行動の大体の経緯は理解できた。

 ……ちなみにだが、買い物をするのなら大臣の【サンマー=ジュージカン】に伝えておくとよい。

 あやつはその辺りの判断を違えない故にな」


 (【サンマー=ジュージカン】って、メイドの【カノン】が言っていた顔面蒼白になってたっていう大臣だよね?

 ……もしかして私のお目付け役なのかな?

 【わがままお姫様】のお目付け役なんて苦労人ポジションに就くなんて変わり者だね~)



 【ドロップ】はそんな他人事のようなことを思っているが、現状その苦労人の【サンマー=ジュージカン】を振り回しているのは今の【ドロップ】そのものであるのだ。

 その自覚が【ドロップ】には薄く、あくまでもNPCとしての【ドロップ】のせいにしている。

 ……御愁傷様である。



 「では【ドロップ】よ、お前が港町【セカドン】で挙げてきた功績を報告するのだ」


 【カラメッラ三世】はさっそく本題である内容に切り込んできた。

 【ドロップ】としてはいきなり本題に入られて驚いているところではあるが、実際は他の話題に入らなかったことでボロが出るのが免れたので幸運なのである。

 


 (えーっと、まずはこれからかな?)


 「ワタクシは港町【セカドン】での視察、および領主である【ツヴァイ】伯爵の催した国家間パーティーへと参加いたしましたわ!

 港町での特産品を時間に目にし、味わえたのは貴重な経験となりましたわよ!

 これは父上へのお土産でしてよ!

 このワタクシが選んだものですから、父上も泣いて喜ぶと思いますわ!」


 【ドロップ】はそう言うと港町【セカドン】で購入していた海産物や工芸品、そして武器などを王である【カラメッラ三世】の前で並べ始めた。

 本来は【ドロップ】が自分用に購入していたものであるが、背に腹は変えられないということで持っていたものを全て【カラメッラ三世】へと献上したのだ。

 

 

 「何度か視察に行ったことはあったが、やはり見る者によって注目するモノも違ってくるものであるな。

 【ドロップ】が買ってきたものの中でも見たことがないものが幾つも混ざっている。

 特にこれなど良く見てみれば質が高いようだ、王国全土に広めるために支援政策を行うのも悪くないかもしれぬ」


 【カラメッラ三世】が目を付けたのは女性モノのアクセサリーだった。

 港町【セカドン】の伝統工芸品……という設定のデザインが為されたそのアクセサリーは地元の名工が作り上げた上質なものであったためか、王様の目を惹くこととなったのだ。

 女性モノであったため、これまで【カラメッラ三世】がじっくりと見ることがなかったモノというのも注目される一因となったのかもしれない。


 (あっ、やったね!

 でも、まさかそれに興味を持ってもらえるなんて思ってなかったよ!?

 男の人だから、てっきり武器とかが好きなのかな?とか思ってたけど……

 せっかく名産品の水属性の武器をいっぱい集めたんだけど……

 本当は後で【ペンネドラゴン】さんにあげるつもりだった武器だけど、そんなに興味持たれてないかな?)


 【カラメッラ三世】は武器についてより上質なものをこれまで見てきていた影響もあって、【ドロップ】が観光しながら街で買えるようなものには目を惹かれなかったようである。

 【カラメッラ三世】の護衛をする騎士たちも高機能なものを着けているからか、少し見劣りしてしまうというのが実状である。


 

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