2話 いきなり公式イベント開催!
【ワールドアナウンス】
【スキル【プリンセスドミネイト】が発動しました】
【イベント【わがまま姫様のスライム収穫祭】が開催されます】
「【カノン】、私イベントを発令したわ!すぐに冒険者たちに詳しいことが広まるように手配して!」
【ドロップ】は自ら公式イベントを開催出来たということに浮かれており、先ほどまで【ドロップ】が怯えていたメイドの【カノン】に対して急に命令を出している。
ステータスを確認して自分が【お姫様】であるということを自覚したからこそ、メイドに対して少し強気になれたのであろう。
それに、実際にスキルを発動してワールドアナウンスとしてプレイヤーたちに伝わったということが後押しとなったということもあるのかもしれない。
しかし、その強気に出た行動が新たなトリガーとなり……
【スキル【姫のわがまま】が発動しました】
「かしこまりました、【ドロップ】様のご意向であれば直ちに手配致しましょう。……まずは、冒険者ギルドにでも行きましょうか。
……はぁ」
スキル【姫のわがまま】による命令を受けたメイドの【カノン】は拒否することを許されず、【ドロップ】のいる部屋から去る際にため息を漏らしながら退出していった。突然のわがままにさらされる不憫な立場である。
(あっ、やっちゃった!もっととんでもないアイテムとかおねだりしようと考えてたのに勝手にスキルが発動しちゃったよ!スキルがオンオフ出来ないとこうなっちゃうっていうことだよね……失敗失敗……)
スキル発動ログを見て自らの失敗に気づいた【ドロップ】は、反省しつつも気落ちしている様子はなく思考は次のことへと移り変わっていっているようである。
その証拠に、メイドの【カノン】が出ていったドアの方向を凝視している。
(あのメイドさん出ていったよね?私のスキルの影響で無理やり行かせたみたいになったけど、見張りも居なくなったし自由行動の大チャンスじゃない!
今のうちに私はこのお城の探索でもしちゃおうかな!)
【ドロップ】は我慢するということを知らない少女のようで、思いつきをすぐに実行に移し、先ほどメイドの【カノン】が出ていった扉から廊下へと脱出したのだった。
(うわっ、すごっ!?ゲームでこんなにリアルみたいな内装とか再現できるんだ……いつの間にか技術は進歩してたんだね!私もこうやってゲームでその技術を堪能させてもらってるからありがたいことだよ~)
【ドロップ】は城の装飾や、飾られている芸術品などを一瞥しながら廊下の中央を闊歩して探索中である。
あまりにも堂々した歩きぶりに、まさに【お姫様】という表現がふさわしいと言えるであろう。
しばらく歩いていると、【ドロップ】は肥えた体型で派手な服装をしている中年の男とすれ違おうとしていた。
(あっ、初めて廊下ですれ違うNPC発見!折角だし話しかけてみようかな!)
「ご機嫌麗しゅう……お時間よろしくて?」
(ちょっと【お姫様】っぽい喋り方してみたけど……違和感とかないかな?やっぱり慣れてない喋り方は難しいよね!)
「おや、【ドロップ】姫様!
これはこれはご丁寧に……この【サンマー=ジュージカン】めに何か用事でも?(わがまま姫様から声をかけられるとは……いったい何をねだられるのやら……はぁ……)ボソッ」
肥えた中年の男性の小言が思わず漏れてしまっているのを【ドロップ】は聞いてしまい、怪訝そうな表情を浮かべそうになったが無理やり押し込んだ。
(私、このゲーム始めたばかりなのにNPCたちがみんな私のことを知ってるみたいに話すよね…どういうことなんだろう……いや、それよりもさっき私が開催したイベントについて聞いてみようかな!
プレイヤーが開催したイベントだし、このいかにも偉そうな人からの意見とか参考になるかもしれないし!)
「先ほど発令した催しについてご存じかしら?よろしければどのように思われているのかお聞きしてもよろしくて?」
中年の男性は【ドロップ】の発言にギョッとした表情をして、冷や汗をかきながら一瞬考え込む仕草を見せた。いくら歳を経ても自分よりも立場が上の存在から意見を求められるという行為には慣れることがないということであろう。
「うぅむ……そうですな……恐れながら、歯に衣着せぬ言い方をさせていただきますと、私の大臣としての立場から言わせてもらえば中の中の策でしょう。スタンピードで大量発生したスライムを異郷の冒険者たちに処理させること自体は悪くないと思いますが……」
「あら、悪くないということは何か問題でもありまして?」
(うーん、何が問題なんだろう?モンスターをプレイヤーに倒させたらNPCからすると損なんてないと思ったんだけどね……?というかこのおじさん大臣だったんだ!やっぱり偉い人は雰囲気で分かっちゃうよね!大臣とは分からなかったけど、立場のある人っていうのは私が見ただけでと分かったし)
【ドロップ】は頭を悩ませて考えてみるが、基本楽観的な少女では物事の裏に潜む問題には気づくことが出来ていないのかもしれない。
「いえ、杞憂ということもあります。きっと、私の思い過ごしでしょう。【ドロップ】姫様の政策であれば上手く行くことでしょう。
では、私は会議がありますのでこの辺りで失礼させていただきます」
そう言って中年の大臣【サンマー=ジュージカン】はそそくさとその場から立ち去っていった。
まるで、わがまま姫と称される【ドロップ】のわがままに巻き込まれる前に逃げていったかのようであった。
しばらく歩いていると、お城の【ドロップ】が居た階を一週し終えたようで元の部屋の前に戻ってきてしまっていた。
【ドロップ】はあと腐れなく自分に割り当てられていた部屋に戻っていったのだった。
そうして部屋に入った瞬間に気まぐれで開いていたゲームログに目が止まったようだ。
「あれ?なんだか凄い勢いでログが流れてるよっ!?なになになに!?怖いんだけど!?」
【ログ】
【わがまま姫様のスライム収穫祭関係】
【現在の討伐数ー14259匹】
……
【タロスケ】がスライムを討伐しました。
……
【麻川和佐】がヒートスライムを討伐しました。
……
【ジュモン】がスライムを討伐しました。
……
【武器子@配信者】がアイアンスライムを討伐しました。
……
【ペンネドラゴ】がスライムを討伐しました。
……
【∽漆黒堕天使∽】がスライムを討伐しました。
……
【アイリス】がヒュージスライムを討伐しました。
……
【ゆうた】がスライムを討伐しました。
……
【アルタルソース】がスライムを討伐しました。
……
「へー、スライムが討伐される度に誰がどんなスライムを倒したのかメッセージが送られてくるのね。ログが多すぎて見切れないけど、別に全部見なくてもいいよね?見るペースよりもメッセージが増えるペースの方が早いから「全部見ろ」って言われたら泣いちゃう自信があるよ!えっへん!」
誰も居ない部屋で、意味の無い虚勢を張る【ドロップ】の姿は端から見ても痛々しい姿である。
ここにメイドである【カノン】が居れば間違いなく窘めていたことであろうことが容易に想像される。
「これからどうしようかな。このお城から出ようとしたけど、別の階に行こうとしたら階段の前で見えない壁に邪魔されて進めなかったんだよね……【お姫様】だからなんだろうけど……
公式イベントが終わるのは次の日みたいだし、今日はこの辺でログアウトして、明日公式イベントの結果を見てから考えようかな……
今日は驚きばっかりで、はしゃぎ疲れちゃったからね!一回寝たら良い考えがおもいつくかも!」
そんな独り言をぶつぶつと言いながら【ドロップ】はウインドウ画面を呼び出し、ログアウトボタンを押してこの世界から意識を切り離したのだった。




