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18話 いきなり国交活性化!

 「んんっ!」


 【ドロップ】が集まった【お姫様】全員に声をかけ終わったところで、【ツヴァイ】伯爵が大きな声で咳払いをしてこれから自分が喋るということをアピールした。


 もちろん、ただの咳払いではなくスキル【拡声】を用いて確実に全員に伝わるようにしているのだが、これは【ツヴァイ】伯爵の常套手段である。

 隙間に拍を置くような間を取るために、あえて短く響き渡る音を発生させて自分に注目を集めるためである。

 自分の発言力を高めるための小細工は【ツヴァイ】伯爵の得意分野であるのだ。


 「楽しいひとときをお過ごしになられたと思われますが、これにて閉会とさせていただきます。

 では最後に……【ファートス王国】の【お姫様】である【ドロップ】様からお一言いただければと……」


 【ツヴァイ】伯爵は【ドロップ】へと近寄り、注目先を自分から【ドロップ】へと差し替えた。

 戦闘であればヘイト管理とも呼ばれる技術を、ヘイトではなくただの注目度で再現し効果的に【ドロップ】を全注目を集中させたのだ。


 (ええっ!?

 ここで私に話を振るの!?

 待って、全く何も考えてないんだけど!?)


 【ドロップ】はお得意のポーカーフェイスで表面上は笑みを浮かべながら周囲に手を振りながら対応しているが、内心は冷や汗を流しているかのような焦りに覆われていた。

 【ドロップ】にとっては想定外の出来事だが、実は【ツヴァイ】伯爵にとっては既定路線である。



 この集まりの前の【ドロップ】との会話で一杯食わされた(と一方的に【ツヴァイ】伯爵が思っている)ので、その意趣返しをしようとこの展開を用意していたのだ。


 そんなことは露も知らない【ドロップ】はこの場で何を言うべきなのか必死に考えていたが、決心がついたようで振っていた手を止めて口を開いた。


 「皆さま、今宵はワタクシの【ファートス王国】へとようこそいらっしゃいましたわ!

 この港町【セカドン】の海鮮料理に舌鼓を打ったことでしょう。

 ワタクシの王国にはまだまだ豊富な資源が眠っておりましてよ!

 そんな富国と交易出来ることを光栄に思うことですわ!」


 【ファートス王国】のPRをしつつも、自分に与えられた【わがままお姫様】というロールを果たすという判断をした【ドロップ】はこのような言葉を選びとった。


 この物言いに顔をしかめる人が何人も居たが、それに気づいてか気づかなかったのか【ドロップ】は何食わぬ顔でさらに言葉を紡いでいく。



 「そんな富国である【ファートス王国】ですが、不足している面もまだまだありましてよ!

 【カベルネ】様の【アルフ聖教国】のような皆の心を一つに束ねる手法そして信仰心、【ミスト】様の【イチナミ帝国】のような戦闘にも生活にも活かせる機械技術、【永桃】様の【イーリン共和国】のような戦闘流派や仕事への勤勉さ。

 これらはワタクシの【ファートス王国】が見習うべき点ですわ!」


 「あら!」


 「あわわわわ!?」


 「没!却下!承認!再考!」


 さきほどまでの自国を称賛するものから一転して、【ドロップ】は他国の長所について触れていた。

 しかも、それを見習うべきものとして……つまり【ドロップ】が称賛している【ファートス王国】よりも優れているものであるとしているのだ。


 それぞれの国【お姫様】は、そんな【ドロップ】の変わり身に驚いている。

 ……一部その演説を話半分で聞き流しながら事務仕事をしている者もいるが。



 (と、とりあえず私が国交を悪化させたら不味いよね。

 せめてフォローはさせてもらおうかな!

 これが出来るオトナの仕事!……みたいな?

 私はオトナじゃないけど……)


 【ドロップ】は、この港町【セカドン】に来るまでに助けてくれた【アルタルソース】や【ペンネドラゴ】のことを脳裏に浮かべながら、自身に出来る精一杯の背伸びをしたようである。

 そして、これからの発言にもその志は反映されて……



 「その技術交流も兼ねて、これからは国交をより親密なものにしていきますわよ!

 それに伴い、ワタクシの国に最近現れた異郷の冒険者たちが国家間を行き来出来るようにしたいと思っておりますわ!

 あの者たちはまだまだレベルや熟練度が低いですが、これからの働きが期待できるでしょう。

 ワタクシの【ファートス王国】で労働力として独占しても良いですが、それよりも他国に触れて新たな風となることの方がワタクシとしても扱いやすくってよ!

 皆さま、いかがでして?」


 【ドロップ】がここで提案したのは異郷の冒険者たち……つまりプレイヤーの他国への移動許可である。

 この集まりが開催される前に【ドロップ】が簡単に調べた際に、プレイヤーにはまだ他の国へ正攻法で移動する手段がないということを理解していた。

 そのままだと【ドロップ】が他国へ誘われたときに行けないという問題が発生してしまう。

 

 なので、その問題を未然に解決すべくこのような提案をしたというわけである。

 完全に私利私欲の提案だが、表面上は他国への信頼と労働力の貸与という偽善者に近いものとなっている。


 そんな【ドロップ】への対応は……


 「あら、真意は分かりませんが承知しましたよぉ~」


 「わわわわ、私もさささ、賛成です!」


 「承認!」



 満場一致、つまりプレイヤーの行動範囲が広かった瞬間であった!


 


 【ワールドアナウンス】



 【イベント【わがまま姫様の港町視察】が終了しました】


 【スキル【プリンセスドミネイト】の効果が終了しました】



 【ランキング照会】



 【一位 ペンネドラゴ 貢献ポイント125】


 【二位 アルタルソース 貢献ポイント118】


 【三位 掲示板ガチ勢兄貴 貢献ポイント101】


 【四位 ジュモン 貢献ポイント85】


 【五位 武器子@配信者 貢献ポイント79】


 【以下順位のプレイヤーは公式ホームページにて公開しておりますのでご確認ください】



 【報酬はプレゼントボックスに送られます、ご確認ください】


 【【ドロップ】により国家間移動制限が解除されました】


 【港町【セカドン】から他国への定期便に乗船可能になりました】

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