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17話 いきなりお土産!

 「わ、私は【イチナミ帝国】の【ミスト】です……」


 【カベルネ】の次に話し始めたのは頭に赤色のリボンをつけており、可愛らしい見た目をしているが気弱で小動物を思わせるような挙動をしている【イチナミ帝国】の【お姫様】である【ミスト】だった。


 「あわわわわ……とりあえず何か喋りますぅぅ!?!?

 イ、【イチナミ帝国】では機械産業が発展しています。

 こ、細かな道具についても優れていますが……

 装甲を装備した者たちがモンスターたちと戦ったりしていますよぉ」


 自国の得意分野について語っているからなのか、【ミスト】は語りを続けていくにつれて少しだけ自信のある口調へと変化していった。


 ただ、それでもおどおどしているのは本来の気性から抜け出せていないということの証明でもある……と周りから見ている人は感じているであろう。

 


 「機械でして?

 ワタクシの国ではそこまで栄えておりませんから、是非とも献上してもらいたいですわ!」


 (車とかあったら移動が便利になりそうだね!

 馬車だとお尻が痛いし、欲しいよね~!)


 「わ、私も実は今装甲を装備しているんです……

 ふぇぇ、そんなに怖い顔で見ないでくださいぃ!?

 今見せますから今見せますからぁ!!

 き、【機装展開LVー45】ー【深光機装(ジュエルライト)黒曜大蛇(オブシディアン)!】」


 【ミスト】が唐突にスキルを起動させたことにより、【ミスト】の装着していた腕輪の宝玉から漆黒の光が放たれ全身を覆い始めた。


 そして、光が収まったころには【ミスト】の全身がラバースーツをベースに機械武器が装着されていた。

 一見すると黒色のドレスのように見えなくもないものだが、背後に浮いている八つの銃口が戦闘形態であるということを大々的にアピールしている。


 可愛らしい小柄な身体に厳つい外装が取り付けられたことで、ギャップがあることが魅力に映る人も人もいるであろう。

 

 「こ、これが【イチナミ帝国】の技術力ですよぉ……

 そ、空を飛べたり攻撃出来たりするんですよ……

 ど、どうでしょうか?」


 「その機装?には興味がありますわね。

 戦闘能力の無いワタクシでも扱えまして?」


 (戦えるようになるなら嬉しいけど、使えるのかな?)


 「そ、それならこれをどうぞ……」


 

 【個人アナウンス】

 

 【【ドロップ】がスキル【機装展開ーLV1】を獲得しました】



 「わ、私の【イチナミ帝国】で手に入るスキルをお伝えしました……

 ふぇぇ、レベル1のものでごめんなさぃぃぃ……」


 (そんなに泣かれるとカツアゲしている気分になっちゃうよ……

 でも、新しいスキルが手に入ったのはラッキーだね!)


 【ドロップ】は珍しくポーカーフェイスを崩し、心身ともに笑顔になっていた。

 ただ、内面では純粋に喜んでいるのに対して、アバターが悪役令嬢の顔の作りになっているので見るものに恐怖感を与えてしまっている。



 「こ、これをお渡ししますので許してください!」


 現に【ミスト】や【カベルネ】が気遅れしてしてしまっている。

 

 そうして【ミスト】が【ドロップ】に手渡したのはピンク色の宝玉がはめ込まれた腕輪であった。

 装飾などが一部異なっているが、【ミスト】が装備している腕輪と酷似しているものである。


 「そ、その【深光機装】は親好の証として持ってきたものですぅ……

 ふぇぇ、なのでこれからの国交をよろしくお願いしますぅ……」


 機械産業が盛んな【イチナミ帝国】ではあるが、外交面で苦労しており孤立している現状もあってか大陸の中央に位置する【ファートス王国】との関係は深めていきたいという考えが裏にはあったりするのであるが、外交素人である【ドロップ】にその考えが見抜けるわけもなく……


 「殊勝な考え方ですわね。

 ですが、ワタクシに献上品を用意したことは誉めて差し上げますわ!

 オホホホ!」


 (後でこっそり使ってみよっと!

 いいもの貰っちゃったよ!)


 単純な思考で贈呈品を受け取ってしまったのである。

 この結果が後に響くのだが、それはまだ先の話となる。





 そんなワクワク気分でその場を離れた【ドロップ】はここにいる最後の【お姫様】のところへと赴いた。


 「これは承認!これは没!

 これは予算を減らしなさい!

 まだまだ削れますよ!」


 書類の山に埋もれながらパーティー会場で仕事をしているのは……



 「私は【イーリン共和国】の【永桃】です!

 【ドロップ】さん、私は見ての通り忙しいので用件は手短に!」


 (うわぁ……まだ仕事を続けてたんだ!?

 終わる気配が全くないよね!?

 と、とりあえず【イーリン共和国】のことを聞き出そう!)


 「あなた様の国のことをお聞かせ願えるかしら?

 ワタクシ、【イーリン共和国】に興味がありましてよ!」


 【ドロップ】は【永桃】に対して引き気味な様子でコミュニケーションを取ろうとしていた。

 他国の【お姫様】が相手であるため、流石に【永桃】は書類に眼を通すのを止めているがそれでも何処か近寄りがたい雰囲気が出ているということでもある。


 「【イーリン共和国】は血気盛ん、武闘派な人民たちが住んでいる国と言ってもいいです!

 だからこそ、こうやって事務作業が溜まりに溜まって私のところに回ってきてしまうんですよ!

 体を動かすことが好きな人民たちなので、私が事務作業さえしてあげれば建築もモンスター退治も即解決しますから身を粉にして働かないと!!」


 (わ、わぁ社畜だねっ!?

 目が死んでるのか燃えているのか判断できないよ!?)


 「そして、戦闘面では流派スキルというものが私の国では主流となっています!

 こういうものです!!

 【花冠流壱之型ー紅牡丹LVー45】!!」


 【永桃】は急に立ち上がり、【ドロップ】に見せつけるようにしてその場で回し蹴りを放った。

 その軌道には紅の炎がちらついており、直接触れてしまえば火傷してしまうであろうことが分かる。

 

 「このような武術の流派が栄えているので、身体に自信があれば私の国で修行するのも悪くないでしょう!

 ついでに事務作業も手伝ってくれると助かります!

 山ほど残っているのでいい鍛練になりますよ!!」


 「い、いえ……

 ワタクシは遠慮させていただきますわ……

 そのようなものは大臣に任せておりますので」


 「そうですか、それは残念ですね!

 機会があればまた手伝って下さい!!」


 【永桃】は残念そうな表情を浮かべると、再び椅子に座り事務作業を開始し始めた。

 それには【ドロップ】だけではなく、他国の【お姫様】……【カベルネ】や【ミスト】も気の毒そうな表情を浮かべて顔を見合わせることしか出来なかった。






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