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いきなりお姫様!~VRMMOの世界で一人だけ悪役令嬢NPCに擬態して政略ゲーに勤しむことになりました!~  作者: 杞憂
アバター奪還編

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14話 いきなり従者!

 「【ドロップ】姫様、次は何処に行きますか。

 俺が思いつくようなところはあらかた案内させてもらいましたけど、これ以上は……」


 金髪の騎士の【ペンネドラゴ】は困惑した表情を浮かべながら【ドロップ】に対して、自分ではこれ以上案内することは難しいということを吐露した。

 

 港町セカドンに到着してから観光にかなりの時間を使ったが、クエスト【わがまま姫様の港町視察】の終了アナウンスが流れる気配もない。


 

 (つまり、観光以外にやることがあったってことだよね……?

 どうしよう、何をすればいいんだろう……!!)


 【ペンネドラゴ】が困惑しているのと同じように、クエストを出した本人である【ドロップ】もまたこの状況に頭を悩ましていた。

 いや、むしろクエストを出した本人だからこそ他のプレイヤーよりも焦りがあるのかもしれない。


 だが、このまま無言でいることに耐えられなかった【ドロップ】は【ペンネドラゴ】と【ドロップ】自身を鼓舞するためにも根拠のない憶測を口にした。



 「もうじき時が満ちますわ!

 ワタクシが言うことは絶対でしてよ!

 ですから、ワタクシの騎士であるのなら、その情けない顔を止めてくださいまし?

 さもなければ騎士の地位を剥奪しますわよ」


 【ドロップ】の言葉を聞いた【ペンネドラゴ】は俯いてしまい、肩を震わせながら無言になってしまった。

 この姿を見れば、誰もが【ペンネドラゴ】が怒っているか泣いているかのどちらかの感情を抱えていると判断するであろう。


 もちろん、言葉を発した本人である【ドロップ】もその例外ではなく自分の発言が行きすぎたものであったかもしれないと後から気づくこととなった。


 (ちょっと言い過ぎたかな……?

 うぅ……わがまま姫様ってポジションを演じるのって相当に難しいよっ!

 加減が上手く出来ないしっ!)


 カッコよく励まそうとしたつもりが逆に落ち込ませることになってしまったと思った【ドロップ】は外には出さないものの、内心はオロオロするばかりであった。

 ここまで感情がブレているのにも関わらず、表情にも態度にも出さないのは一種の才能と言えるのかもしれない。



 だが、ポーカーフェイスが一流だったとしても、大衆と同じレベルの洞察力では今回の【ペンネドラゴ】の真の感情を把握することは出来ないのだ。








ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 「【ドロップ】姫様、次は何処に行きますか。

 俺が思いつくようなところはあらかた案内させてもらいましたけど、これ以上は……」


 不味いよな……

 全くクエストが進まないぞ……

 俺が観光方向に【ドロップ】姫様の行動を誘導したからクエストが進まないのか?


 【ドロップ】姫様とあちこち回れたのは完全に役得でしか無かったが、他のプレイヤーたちも巻き込んでいる以上何かしらの進展を見せないとなぁ……


 俺がそんなことを考えていると、【ドロップ】姫様が俺のことを心配してくれたのか声をかけてきてくれた。

 NPCなのに思考ルーチンが本物の人間みたいで凄いよな、今の科学はここまで進化してるんだな……



 「もうじき時が満ちますわ!

 ワタクシが言うことは絶対でしてよ!

 ですから、ワタクシの騎士であるのなら、その情けない顔を止めてくださいまし?

 さもなければ騎士の地位を剥奪しますわよ」



 えっ、俺の姫様可愛すぎない!?

 俺、【ペンネドラゴ】は猛烈に感動している!

 【ドロップ】姫様は俺が不甲斐ないのにも関わらず慰めてくれたのだ!

 

 最後の騎士の地位剥奪の下りも、【ドロップ】姫様なりの愛情表現の類いなんだろう。

 わがまま姫様と呼ばれているから、自分の気持ちを素直に伝えることが難しい場面もあるはずだよな。

 

 俺は【ドロップ】姫様の励ましに感動してつい涙を流しそうになり、顔を俯きにして正面から見られないようにし、さらに感情を抑えきれないので肩が震えてしまった。

 

 俺好みの見た目で惚れてたけど、この不器用な優しさもいいよな。

 護衛だったり、観光だったりでそれなりに長い時間見てきて俺は【ドロップ】姫様そのものに惹かれ始めているのかもしれない。





 「ああっ、【ドロップ】姫様こちらにおられましたか!」


 そんな感傷に浸っていたが、慌てた様子で駆け寄ってくる人物を視界の端で確認したので警戒体制をとることにした。

 どんなやつでも【ドロップ】姫様に危害を加える可能性があるからな、完全に近づく前に牽制させてもらうか。


 俺は剣をいつでも抜けるようにして、走ってきたやつの姿を観察する。


 身なりはかなり綺麗なものだな?

 だが、貴族の普段着のようなゆったりとした服装ではなく、身を絞るようなフィットした服装だ。

 つまり、貴族の従者辺りが妥当か?

 とりあえず聞いておくか。

 

 「不用意に【ドロップ】姫様に近づくな。

 名前をまず名乗るんだ!」


 「これは失礼、私めはこの港町セカドンの領主であられる【ツヴァイ】伯爵様にお仕えする従者……【メドン】でございます。

 以後お見知りおきを」


 「それで【ツヴァイ】伯爵がワタクシに何か用がありまして?

 ワタクシ、これでも楽しんでいるので要件を手短に報告してくださいまし」


 【ドロップ】姫様自ら話されたな。

 素性も確実とは言えないが、怪しいやつではないみたいだし話くらいは聞かないと不味いだろうし少し警戒を緩めておくか……



 それにしても、【ドロップ】姫様がしれっと楽しんでいると言ってくれたことが嬉しいな!

 俺に直接言ってくれることは無かったからつい口を滑らした……とかだったらいいな!


 ……この【メドン】という従者を早く追い返すための方便って可能性もあるから深く考えるのは止めておこう。

 泥沼にハマりそうで怖いぞ。






 「実は【ツヴァイ】伯爵様が【ドロップ】姫様を屋敷にご招待したいと仰られております。

 港町セカドンを視察に来られたのであれば、是非とも歓待したいとのことで……」


 おおっ、これはもしや【わがまま姫様の港町視察】が進むってことか!?

 何がキーになったのかは分からないが、ようやく肩の荷が降りそうで少しホッとするな……

 【ドロップ】姫様に失望させずに済みそうなのもありがたい話だ!

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