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10話 いきなり窮地!

 「臣民の皆さま方、結構なお手前でしたわ!

 ワタクシから見ても、獅子奮迅の戦いを披露してくださっておりましたわ」


 (……でも、まだあるよね……

 だってどう見てもあそこにボスモンスターっぽいのが待ち構えてるし……

 うぅっ、緊張してきたよ……)


 【ドロップ】が見つめている先にある港町セカドンへの一本道の終着地点には、5メートルほどの巨体を持つ鬼のようなモンスターが棍棒を手に持ってうろうろしていた。


 しかし、うろうろしているだけであってそこから立ち去る気配もない。


 「攻略組の【アルタルソース】さんよぉ、あのヤバそうなやつ勝てるか?

 いかにも強そうなオーラ纏ってんの俺でもわかんだけどよぉ」


 「うーん、なんとも言えないけど私でも厳しそうだね~!

 攻略組なんて言われてるけど、そもそも私は観光勢なんだけどな~

 でも、ここにいるメンバー全員で戦ったから勝てるかもよ~?」


 長身の槍使い女性プレイヤーである【アルタルソース】は単身では無理だが、現在生き残っているプレイヤーたちの総力戦であれば打倒は可能であると予測をつけた。

 

 実力のあるプレイヤーによる太鼓判を得た周囲のプレイヤーたちは、しぼみかけていたやる気を一気に取り戻していく。


 「よしっ、【アルタルソース】さんのお墨付きが出たぞ!」


 「行ける!こいつを倒して港町に直行だ!」


 「今のうちにバフかけとけよ~」


 「まるでテーマパークに来たみたいな賑わいだな……

 テンション上がってきたぜ!」


 (ふおおっ!?

 【アルタルソース】さんの人気って凄いんだね!?

 場の雰囲気が変わっちゃったよ!

 こうなったらあのボスモンスターを絶対倒したいよね)


 【ドロップ】も【アルタルソース】に続くべく、集まったプレイヤーたちに声をかけていく。

 【ドロップ】が憧れる強い大人の女性に近づくための精一杯の背伸びといったところだろう。



 「怯えることはありませんわ!

 ワタクシの前に集まった皆さま方は誰もが一騎当千の精鋭でしてよ!

 あのおぞましい鬼であっても、必ず勝ってくださることを信じておりますわ!」


 「うおおおお!ロリ姫様万歳!ロリ姫様万歳!」


 「突入!突入!突入!」


 「俺、この戦闘に勝ったらわがまま姫様に結婚申し込むんだ……」


 「死亡フラグ乙w」


 (うーん、なんだか【アルタルソース】さんの時と反応違うよねっ!?

 これじゃあ想像と違うよぉ……)


 そもそも、【ドロップ】と【アルタルソース】では客層……というより付き従うプレイヤーの層が噛み合っていない。

 【アルタルソース】は攻略組で、見た目も格好いいため尊敬するプレイヤーたちが多い。

 

 それに対して【ドロップ】は王族という重要NPCという美味しいポジションと、ロリ巨乳というマニア向けの見た目をしているため戦闘に自信の無いプレイヤーでも姿見たさに集まっているのもあるだろう。




 そんな釈然としない想いを抱えながら【ドロップ】はボス戦へと突入していくのだった。





 「……出たぞ!【看破ーLV3】っ!

 お、種族名オーガキングっ!

 レベルは10みたいだぞっ!」


 「くっ、いかにもな名前の種族だな……」


 「レベル10って強くない?

 俺まだレベル3だぞ……」


 「俺はレベル5だな……」


 「わいは2!」


 「私は8レベルだよ~!

 でも、モンスターのレベルはこういうゲームだとそんなにあてにならないよね~?

 ボス専用のステータスにされてるだろうしね~

 というわけで、わがままお姫様に良いところを見せたいからね~

 まず私から攻めてみるよ~【スウィングーLV6】!」


 一番槍と言わんばかりに意気揚々と鉄槍を両手で持ちながらオーガキングへと向かっていき、オーガキングによる棍棒の攻撃を凪払いながら槍の側面で打撃を加えていく。


 ちなみにだが、この時点でのプレイヤーの平均レベルは4である。

 ボリューム層としてはレベル3から4であるため、集まっているプレイヤーのレベルが


 「俺たちも【アルタルソース】に続くぞ!

 【スラッシューLV3】!」


 「へっ、負けてられないな!

 【スポットアローーLV2】!」


 「【ドロップ】姫様に俺の戦いを見せつけちゃうかぁ~?

 【ヘビィスタンプーLV4】っ!」


 先行した【アルタルソース】に負けじと他のプレイヤーたちも次々とスキルを使い攻撃を加えていく。

 戦闘開始直後として見るなら上々の立ち上がりと言えるであろう。

 敵が動き始める前に纏まったダメージを与えられるのは後々有利に働くことが多い。


 だが、今回の敵は自然にポップするようなモンスターではなく、イベント用に現れた特製のボスモンスター……オーガキングである。

 

 「なっ、こいつ攻撃に怯まず突っ込んでくるぞ!?」


 「スーパーアーマーってやつじゃないか?

 他のゲームでもボスモンスターが標準装備してるぞ?」


 「悠長に話してる場合かよ!?

 この進行ルートだとわがままお姫様に直行だぞっ」


 「えっ、それって不味くないかっ!?

 【ドロップ】姫様が攻撃されたら一撃で死ぬでしょ……」


 「ってことはクエスト失敗ぢゃんっ!」


 「わっ、私を無視してわがまま姫様に攻撃しに行くとはいい度胸だね~?」


 そう言って【ドロップ】とオーガキングとの間に入り込み進路を妨害した【アルタルソース】だったが、間に入り込むことで精一杯だったようで攻撃に対する防御行為が一切取れていない状態でオーガキングの渾身の一撃を真っ正面から受けてしまった。


 (ああっ、【アルタルソース】さんが飛ばされていっちゃったよっ!?

 見えないところまで飛んでいっちゃったから生きてるかわからないし……私もまだピンチだから助けにも行けないよ!)


 そう、一度進行を止められたオーガキングにプレイヤーたちは一斉に纏わりつき、【ドロップ】から気を逸らせようと攻撃を繰り返してヘイトを奪おうとしている。


 だが、その度にプレイヤーは一人一人棍棒によって身体を消し飛ばされて死に戻りさせられてしまっている。

 オーガキングにダメージを与えてはいるため討伐の目処こそついているが、このままのペースで進むとオーガキングの体力が尽きる前に【ドロップ】の前にたどり着いてしまう。


 そう、このままでは……







 「申し訳ありません、遅れました【ドロップ】姫様っ!

 ギリギリでしたがなんとか間に合いましたよ。

 姫様の【騎士】……【ペンネドラゴ】が来たからには姫様にその下賎な手は伸ばさせない!」


 窮地に陥っていた【ドロップ】の前に現れたのは金属の鎧を着た金髪の青年、黄金の鞘【聖鞘ファートス】を携えた【ドロップ】の【騎士】……【ペンネドラゴ】であった。

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