第3章-対峙(Encounter)-
ー登場人物ー
翼♂:
渡♂:
健吾♂:
風間♂:
昴♂:
静♀︎:
壮♂:
N不問:
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N: 遺伝子実験で生まれた6人の能力者。一方は力を正義の為に使い、未来への希望を諦めない者達、そしてもう一方は力という呪いを利用し、未来の破壊を望む者達…運命のいたずらなのか、彼らは2組のグループに別れることになってしまった。そして今、相容れない存在である光と闇が出会おうとしていた
ビースト・クロニクル 第3章-対峙-
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ー風間の事務所ー
風間:明日生命新化学の討論会がある
渡:らしいですね
風間:生命の新たな可能性に関して話す。君達にも来て欲しい。損はさせない
翼:行きますよ。それに、“あいつら”が来てた時の為にも
風間:そうだな。心強い
健吾:用心しておけってことっすよね
風間:そうだ。そういう事もあろうかと、君たちの席を用意しておいた
渡:なんてこった…風間さん仕事が早い
健吾:どの道行くのは変わりねぇんだろ?…チーズバーガー美味い
渡:大事な日の前によく食べれるな
健吾:エネルギー補給だよ。ワタルちゃんポテト食べる?
渡:いやいらない
健吾:釣れないなぁ
翼:とにかく今は準備だ。まぁ、念の為にな
ー場面変わり、外ー
渡:ねぇ翼兄、デーモンズと会った時、どうする?
翼:仕事はまだ続いてる。当然捕まえるさ。最悪の場合…戦う
健吾:分かりきってることだろ?今悩んでても仕方ねぇぞ?
翼:お前の言う通りだ。健吾
渡:やる事は変わらないんだね
翼:あぁ。デーモンズクラブを生け捕りにする
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N:一方その頃、デーモンズは
昴:いいか?お前ら2人はホールに入り、観客席に座っとけ。自然な感じで討論会に参加しときゃいい。後半に質疑応答の時間があるはずだ。俺はその時、お前らの合図で入る
静:了解
壮:あいよ
昴:何かあったら無線で知らせろ
静:分かったわ。“彼ら”が来てた場合は?
昴:その時はその時だ。さぁ、いよいよだ…俺達の戦いの第一歩がここから始まる
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N:翌日、討論会の日
風間:これからも、我々の環境は変わっていきます。しかし、それと同時に我々人類も進化します!本日は、有意義な時間をどうもありがとうございました!
会場:(拍手喝采)
健吾:案外普通に進んでるな
渡:そのまま何も起きなきゃいいけど…ん?翼兄
翼:どうした?渡
渡:いや…何かあそこの2人…妙に風間さんを気にしてる気がして…
翼:確かに妙だな…
風間:それでは、質疑応答に入ります。質問のある方は手を挙げてくだされば、スタッフがマイクをお持ちします
静:質疑応答が始まる。やるなら今よ。私も壮もいつでも動ける。あと…感づかれたっぽい
昴:何…?まぁいい時間稼いどけ。始めるぞ
静:了解♪
N:すると突然、窓ガラスを突き破り、ダークネイビーのシャツに黒のスーツ姿の男が飛び込んできた。驚くことにその男の背中には黒い翼があった
健吾:何なんだよ急に…!?
昴:久しぶりだな…風間…修
風間:まさか君の方から仕掛けてくるとはな…昴
翼:昴…!?あいつが!?
N:そう…彼こそがデーモンズクラブのリーダー、昴であった
渡:てことは、やっぱりあそこの2人も能力者なのか!…兄!あいつら出てった!
翼:お前達、そっちは頼んだ!俺は昴を
昴:また会えて嬉しいぜ風間。安心しろ。何もしないさ…そちらが何もしなければだがな。ちょっとマイク借りるぜ
風間:何をする気だ…!?
昴:真実を語るんだよ。俺も元々はここにいる皆さんと同じ普通の人間だった!それがどうだ…『異種間遺伝子交配』というクソみてぇな人体実験のせいで、俺はバケモンになった!…だが、視点を変えればその実験のおかげで俺達は進化した。俺達はあんたが望んでいた人類の新たな進化に成功したんだよ。その点においては感謝してるぜぇ…オッサン
翼:風間さん!クッソ…なんとかしないと…飛翔!やめろ昴!
昴:邪魔をするな!
翼:ぐはぁ!
風間:昴!君の狙いは私だろ。そうならば、一般人とパネリスト、海外ゲストの退室を許してもらいたい
昴:いいだろう。その方が俺としてもやりやすい
渡:風間さん下がって!
壮:あ?何だお前ら?
昴:…例の兄弟か
健吾:お前ら覚悟しやがれ!うおおおおおお!
昴:壮!
壮:(瞬間移動)おら!
健吾:ぐあっ!
渡:健吾!
翼:健吾!大丈夫か!?
壮:オイオイオイ…何してくれちゃってんの?昴には手出しさせねぇぜ
昴:フッ…壮、静、こいつらと遊んでやれ
渡:兄!昴をお願い!
翼:分かってる!
壮:ヘヘッ、なぁお前、俺らは俺らで楽しもうぜ
健吾:お前ムカつくな…相手になってやるよ!
壮:(瞬間移動)
健吾:何!?消えた!?
壮:こっちだ
健吾:!?
壮:おらっ!
健吾:ぐああ!クッソ…
壮:Come on!こっちこっちぃ!
健吾:おい待て!
渡:おい健吾!
壮:任せたぜ!静!
静:坊やの相手は私よ
渡:嘘でしょ…マジ無いわ
静:あら?お姉さんが相手じゃ嫌だった?
渡:いや…シンプルに性に合わないんだよ…女性と殴り合いで戦うのって
静:あら、優しいのね。可愛い上に紳士とは…お姉さん好きになっちゃいそう♡
渡:お姉さんと仲良くなるのは難しそうだな
静:固い事言わないの!私は容赦しないわよ!
渡:仕方ない…でもお姉さん、俺、強いよ?
静:いいわよ!かかって来な!
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N:場面変わり地下駐車場 健吾vs壮
壮:お前つえーの?
健吾:強いっていうか…硬いぜ?
壮:ヘヘッ。いいねぇ…遊ぼうぜ?
健吾:はぁ!
壮:うら!
健吾:ぐああ!ハァハァ…どんな訓練したらそうなるんだよ…
壮:訓練なんかしてねーよ。元々天才なんだわ…お前らと違ってな!
健吾:ムカつくなぁ…!
壮:遅せぇよ!オラ!
健吾:硬質化・全身!…!?ぐああ!
壮:いって!お前やるな。けど、そろそろやべぇんじゃねぇの?
健吾:確かにな…ハァハァ
N:喧嘩殺法に硬質化の能力を上乗せした健吾でも、スピードの壮に適うはずがなかった。というのも、能力を使わずとも力の面では壮の方が一枚上手だったのである
壮:と、いうことでな…俺の勝ちだ
健吾:クッソ…
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N:場面変わりエントランス 渡vs静
渡:フンッ!
静:ハァ!なかなかやるわね
渡:どうも!お姉さんもね!おりゃ!
静:ならこれはどうかしら?えい!
N:静はその柔軟な体とトリッキーな動きで完全に渡の動きを封じてしまった。まさに蛇である
渡:うぐぐ…クッ…ソ…おーりゃっ!
静:フフっ…やるじゃない
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N:一方その頃、ホールでは
翼:何が目的だ?
昴:質問が単純だなぁ…当ててみろよ
翼:復讐か…自分達を作った研究者達への
昴:そういう事だ。だがただ普通に殺しても面白くない。どうせだったら彼らが与えてくれた力を使ってやろうと思ってな
風間:そして手始めに私という訳か
昴:大正解。翼、君も俺と似たような存在だ。だが、どうやら俺と君では考え方が違うようだ。まるで“天使と悪魔”のようにね
翼:なら、俺は天使として君を止める!ハアアアアア!
昴:フンッ!
翼:ぐああああ!
昴:俺と同じ力を持ってても…そんなものなのか。威勢はいいが相手にならんな
翼:強い…なんて力だ…
壮(無線):昴ぅ、こっちは片付いたぜ
昴:了解。静はどうだ?
静(無線):ぶっちゃけもうちょっとこの子と遊んでいたかったけど、楽しませてもらったからいいわ。すぐに向かう
昴:分かった。こっちも用は済んだ。外で会おう
静:了解
壮:りょーかい
N:他のメンバーとの連絡を取った後、昴は風間を連れてホールから出て行った。そしてその後を追う翼
翼:待て!
昴:風間は頂いていく。また会おう。そして、今度会う時はもっと強くなってから来い
翼:昴!
渡:ハアハア…兄…
翼:渡! おい渡!大丈夫か!?
渡:大丈夫…大したことないよ
翼:健吾は?あいつはどこだ?
渡:分からない。デーモンズと鉢合わせた時に、あいつは足の速い男を追いかけて行ったから…
翼:そうか…とりあえず一緒に探そう。大丈夫か?歩けるか?
渡:平気…風間さんは?
翼:連れて行かれてしまった…
渡:そんな…
翼:とにかく、今は健吾を探すぞ
渡:あぁ
N:渡は翼と合流し、健吾を探すために移動を始めた。そして、2人がたどり着いたのは、地下駐車場
健吾:動きが全く読めなかった…何なんだあいつは…クッソ…クッソぉ!
渡:いた!兄!見つけた!
翼:健吾!大丈夫か!
健吾:翼…渡…遅せぇよ
渡:負傷してて早く来れるかよバカ
翼:そういうお前はボロボロじゃねえか
健吾:へへっ…ご最もだな
渡:あいつら、ただ者じゃない。俺達より明らかに強かった
翼:あれが…デーモンズクラブ…
健吾:適わねぇなら鍛えるだけ!正直、俺もこの力を使い慣れてる訳じゃねぇ。あいつのスピードに対応できるか分かんねぇけど、鍛えて強くなる他ねえよ
翼:そうだな…俺達は奴らを知らなすぎる。まずは鍛えて、あいつらと対等に戦えるようにしないと
渡:そうと決まれば、特訓スタートだな。風間さんは連れて行かれてしまったけど、俺達だけで何とかしないと、それこそ風間さんを助けられない
翼:あぁ。今日は回復のために1度帰ろう。特に健吾、お前はボロボロだからな。明日から特訓開始だ
健吾:へへっ、燃えてきたぜ!
N:その頃、デーモンズクラブは風間を連れ込み、オフィス街中心部に位置するイクリプス・タワービルの屋上展望室に立て込んでいた
壮:巻いたか
静:巻くも何も、あんたあのヤンチャくんボロボロにしたんでしょ?それじゃあまず立てないって
壮:何だよ?手加減しろって言いてえのかよ?
静:そうよ。何?てかキレるところ違わないかしら?
昴:やめないか、2人とも
壮:うわっ!
静:きゃあ!
壮:イテテテ…何すんだよ!
昴:お前達がつまらん喧嘩しなければいいだけの話だ
風間:2人は普段からぶつかるのか?
昴:意見の食い違いでぶつかるのはよくある…さて、本題だが、俺達の力はまだ進化可能か?
風間:知っての通り、君達は遺伝子交配で力を手に入れた。それぞれの動物が持つ特性を能力化したものだ。だが、君達はまだ力の全てを出し切っていない
昴:どういうことだ?
風間:超進化、能力の強化に加え、体にその動物の特徴を生み出す力も芽生える…幸か不幸か、翼達はまだ知らない
静:私達、さらに強くなれるってことよね?
風間:そうだが…リスクもある
昴:リスクだと…?どういう事だ!?
風間:能力の強化と引き換えに、細胞分裂が速くなる。つまり…ものすごいスピードで老化してしまう…そのため使えば使うほど力も弱くなり、下手をすれば死ぬ。超進化を迎えて間もなくそれは起きる。そうなってしまったら止めることは出来ない
壮:よくもそんな軍団に作り上げてくれたな…
昴:…もういい…俺達を生け捕りにするのが、あんたが翼達に与えた任務だろ?ある意味仕事完了しているぜ? ……あんたが生きていればだがな。あんたを殺せば、俺達の目的の1つは達成する
風間:ふっ…私を殺したところで何も変わりはせんぞ。融合した遺伝子と能力は君達の中で生き続ける
昴:ふっ…気が変わった
壮:昴!?
静:気が変わったってどういう事よ!?
昴:風間には俺達と翼達の戦いを見てもらう。殺すのは後だ。本当に力を使いこなせているのは誰なのか、白黒つけようじゃねえか
風間:翼、渡、健吾、しっかり準備しておけ。『戦争』が始まるぞ
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N:翌日、翼達は特訓を開始した。翼はカウンター攻撃、渡は護身術を応用した格闘術、健吾は硬質化の強化と反撃の訓練を自己流と、それぞれ開始していた。
渡:なるほど…固め技を受けてる時はこうして脱出すればいいのか…(動画を見ながら)
翼:渡!特訓手伝おうか?
渡:あぁ、頼む
翼:ハァアアア!
渡:よっ!せい!
翼:やるな!
渡:まだまだ!ハァ!
翼:んぇい! 十分じゃないか?お前は吸収は早い。応用を効かせていけばいい
渡:だね。頑張ってみるよ
N:その頃、健吾は
健吾:部分硬化〈拳〉…レベル2! おらぁ!
メキメキ…ドサ
N:健吾の一撃で、木が幹から折れたのだ
渡:え!?…ちょ!何やってんの!?
健吾:へへっ…これだよこれ!最強!フォウ!
渡:(このかんじだと心配いらない…のかな?)
N:そのはずです!自己流とは言えど、健吾も特訓で強くなっているのは間違いのない事だ
渡:なぁ健吾!攻撃の訓練以外にも、防御も鍛えた方がいいだろ。俺のパワーとお前の鎧、特訓にはもってこいの組み合わせじゃないか
健吾:いいぜ。それがまた実践に使えるかもしれねえからな。あの壮って奴に勝つためだからな!
渡:全力で手伝うよ!ハァアアア!せいっ!
健吾:部分硬化〈両腕〉!
ガコン!
渡:いっ━━━てえ!
健吾:ハッハッハ!
渡:マジかよ…ここまで硬くなれるのかよ…
健吾:これがアルマジロの鎧さ
渡:その鎧を全身に纏えるとすりゃ、防御は完璧だな。うん
N:感心している2人の耳に、慌てた翼の声が届いた
翼:2人とも!ちょっと来てくれ!
健吾:どうした!?
翼:これを見ろ
渡:何?んぁ!これは…
N:翼が持っていたタブレットを見ると、画面に映っていたのはなんと昴であった
昴:どうも皆さんこんにちは。デーモンズクラブのリーダーの昴です。人類よ、見ているか? 我々は現代科学の力によって進化した存在だ。進化した存在を代表して、皆に呼びかける。進化とは、新たに力を得ることでもある。力ある者は強く、無い者は弱い。時に進化とは、適者生存の末に起こる偶然の産物に過ぎない。クックック…おい翼ぁ!見ているか?今この映像を見ているなら、分かっているだろうな?これは宣戦布告だ。俺達とお前達、どちらが力を持つに相応しいか白黒はっきりつけようではないか!
N:その映像は、昴による端的なスピーチと、翼達に対する宣戦布告であった
渡:ライブで宣戦布告…?最悪だ…
健吾:完全に喧嘩売ってるじゃねえか。上等だ!その喧嘩買ってやるよ
翼:バカか?俺達の仕事は、奴らの生け捕りだ。確かに戦いにはなるが、最終的には必ず捕まえる。長期戦になりそうだがな…
渡:やるっきゃないよね
N:一方その頃、イクリプス・タワーでは
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壮:上手くいったか?
昴:どうだろうな。だが、翼達も映像は見ただろう
静:それで?また戦うのかしら?
昴:あぁ…むしろ俺達は戦うために作られたようなもんだろ
壮:なるほどね…てことはまたアイツとやり合えるって訳か…暴れ甲斐があるってもんだぜ
昴:いやまだだ。まだ始めない。まずはアイツらがどう動くかを見てみる。奴らが動いたら仕掛けるぞ
静:戦うにしても、楽しませて貰わないとね。渡ちゃんって言ったかしら?私としてはまたあの坊やと遊びたいわ♪
昴:直にそうなる。さぁ準備をしておけ…大いなる戦いが始まるぞ!
N:天使と悪魔の接触が、大いなる戦いの始まりを告げてしまった。黒悪魔・昴による宣戦布告。力を持った者達の戦いは、まだまだ始まったばかりだ。この物語のフィナーレを飾るのは果たして誰かな?
ビースト・クロニクル 第3章『対峙』閉幕 To be continued
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渡:予告!ぶつかり合う魂と魂!交わり始める光と闇!最後に勝利の雄叫びを上げるのは、天使か!それとも悪魔か! 次回『聖戦(Great War)』生き残るか!それとも散るか…?